測量で扱う角度ですが,度分秒の単位で表すのが一般的です.1度が60分,1分が60秒です.時刻の度分秒と区別するため,度は°,分は’,秒は"の記号を使います.緯度経度も度分秒で表すことが多く,高知県にある地球33番地の経度は,東経133°33'33"と表します.1°より小さい数値を2桁ずつ区切って伝えることができるので,間違いも少なくなります.
測量器械は,1"の単位まで読み取れる機器が増えてきました.その1"は,どの程度の大きさなのか,天体の見かけの大きさを対象に,撮影した写真で具体例を示して行きます.
上の写真は,焦点距離28mmの広角レンズを取り付けたカメラで,北の空を撮影したものです.北斗七星を見つけることができますか?
北斗七星は,柄杓の形をしていて,杓に当たる部分の長径が約10°です.手を伸ばして,握りこぶしを作ると,その長手方向の大きさが,角度にして約10°に相当します.握りこぶしを柄杓に向けて伸ばし,確認してみてください.
柄杓の柄の端から2番目の星(ミザール)は,視力検査に使われていた星です.上の写真で,ミザールの少しだけ右側にアルコルという星があります.ミザールの明るさが2等級なのに対して,アルコルは4等級です.そしてミザールとアルコルの間隔が12'角,つまり1/5 °です.ミザールの傍にあるアルコルが肉眼で見つけることができれば,視力が良いと言えますが,皆さんはいかがでしょうか.
上の写真は,ミザールとアルコル部分を焦点距離135mmの望遠レンズで撮影したものです.標準レンズに対する倍率で言えば,2.5倍の双眼鏡で覗いたイメージに近いです.
この写真の左上に,同じ望遠レンズで撮影した三日月を貼り付けています.これを見ると,月は意外と小さいことがわかります.角度にすると約30' 角ですから,ミザールとアルコルの間隔の2.5倍程度の大きさしかないのです.
ミザールの右の方には,M101という銀河があります.この写真ではシミのようにしか写っていませんが,意外と大きいことがわかります.天文年鑑を見ると,見かけの大きさは約27' 角ということで,月と同程度の大きさということになります.この写真からは,到底27' 角もあると思えませんが,星雲は淡くて暗いので,この望遠レンズでは本来の大きさがわかりません...
上の写真が,天体望遠鏡で撮影したM101です.天体望遠鏡の焦点距離は1240mmで,倍率にすると25倍くらいに相当します.天体望遠鏡を使うと,渦巻き状になった銀河の淡い広がりが確認できます.これであれば,27' 角くらいの大きさがあると言えそうです.
これまでに紹介した天体の大きさは,個人の持つイメージはそれぞれでしょうが,意外と大きなものを相手にしていることがわかりました.次に,地球から見た惑星は,どれくらいの大きさに見えるでしょうか?
下の写真は,左から火星・土星・木星で,同日夜に同倍率で撮影して並べたものです.惑星は,太陽の周りを公転しているので,地球との距離も時事刻々と変わりますから,見かけの大きさは変化します.撮影した時の大きさは,火星の直径が約25",木星の直径が約40"くらいの時でした.
やっと”(秒)単位の天体が登場したわけですが,いずれも20"を超えるものです.測量器械でどうにか測れる程度の大きさといって良いでしょう.実際に測ったことはないですが,機会を見つけてやってみようと思います.
そしてまだ写真は撮ってませんが,遠く離れた惑星の大きさは,天王星が約4",海王星が約2"です.ここまで小さくなると,測量器械ではその大きさを測れません.ここで天体望遠鏡の出番となるわけです.
さて本題の測量で扱う角度ですが,測量では10" 程度の精度が常に要求されます.10"の誤差は,10m先では約0.5mmの誤差となり,100m先では約5mmの誤差になるからです.したがって測量のプロは,天王星や海王星の見かけの大きさの精度をキープしていることになります.