土質力学9
土の破壊基準
土の破壊基準
土が荷重を受けると,圧密現象が見られるだけでなく,破壊される場合があります.その破壊基準について法則を見出したのが,モールとクーロンです.モールは,モールの応力円を編み出した人物で,クーロンは電荷の研究で有名な人物です.電荷の単位にもなっています.当時の研究者は,電気だろうが物理だろうが土木だろうが,彼らにとっては同じサイエンスだったのでしょう.スネルにしても屈折率の研究で有名ですが,三角測量を実用化させた人物でもあります.
コンクリート実験などで,一軸圧縮試験は見たことがあると思います.上からのみの荷重で,それを大きくしていくと,破壊されます.
コンクリートは硬いので,破壊されるときは突然ひび割れが発生しますが,土の場合は水分状態や締め固まり具合で,自立すらしない土もあります.粘質土で水分が含まれていれば,自立しますが,荷重をかけると変形するだけでひびが入りません.粒度分布よく,水分もある程度含まれ,締まった土の場合は,ひびが入り破壊面が観察できる場合があります.
このように,一軸圧縮試験は土を対象に行うのは無理が多いので,直接(一面)剪断試験や三軸圧縮試験を行うのが普通です.
この図は,直接剪断試験を模式化したものです.上からの応力σを与え,横から剪断力τを与えます.τを徐々に大きくしていくと,横にズレ始めますから,その時の最大剪断力を記録します.土試料を入れ替え,σの値を大きくして,再度実験を行うと,その時の最大剪断力も大きくなります.その実験をいくつか繰り返して,σ-τグラフを描くと,直線上にプロットされます.この直線が破壊基準となります.つまりこの直線より上のσ-τ状態では破壊され,下のσ-τ状態では破壊されません.
この直線において,傾きを内部摩擦角φ,切片を粘着力cと呼んでいます.
続いて,三軸圧縮試験について説明します.三軸圧縮試験は,土試料に対して,側圧に相当するσ3を与えます.土資料をゴムスリーブの中に入れ,水中で水圧を与えることで,側圧を制御します.水圧がありますから,一軸圧縮試験の時のように,すぐ変形してしまうということはありません.側圧をかければかけるほど,上からの荷重に耐えられるのは,容易に想像できます.
ある側圧状態で,上から応力σ1を与え,土が変形していきますが,最大の応力となった状態を記録します.そのσ3とσ1でのモールの応力円を描き,土試料を変えて,異なる側圧での試験も行なって,複数のモールの応力円を描くと,各モールの応力円に対する共通接線が描けます.これが,破壊基準に相当します.直接剪断試験と同様に内部摩擦角φと粘着力cを得ることができます.
さて,一軸圧縮試験でのモールの応力円は,この図のようになります.側圧はゼロで固定されるので,複数のモールの応力円を描くことができません.
しかし,ひび割れなどの破壊面が観察できれば,その角度から内部摩擦角φと粘着力cを導くことができます.
この図で,∠POSが破壊面の角度αに相当します.Pでの接線を破壊基準とみなして内部摩擦角φと粘着力cを求めることも可能です.ただ,このような方法で求めた場合は,あくまで参考値として扱う程度です.
ここで,破壊面の角度αと内部摩擦角φの関係を見てみましょう.三角形OPSは二等辺三角形なので,角PSOは180°-2αとなります.そして三角形PQSは直角三角形ですから,
φ= 90° - (180° - 2α)となり
α= 45° + φ/2 が導けます.
土の剪断強さは,粘着力が大きく,内部摩擦角も大きければ,強い土と言えそうです.しかし,両方兼ね備えた土というのは存在しません.砂質土の場合,粘着力はなく,内部摩擦角が大きいことが特徴です.土粒子同士の噛み合わせ,つまり骨格で支えています.側圧をかければ,より強い土になります.これに対して粘質土の場合,粘着力は大きいものの内部摩擦角が小さくなります.内部摩擦角ゼロという土も少なくありません.このような土は,いくら側圧をかけても強くはならないので,支持力は期待できないということになります.