土質力学4
土のコンシステンシー
土のコンシステンシー
土のコンシステンシーとは,土の変形性や流動性を意味します.土は,水分状態によって性状が変化します.乾燥している土はサラサラですが,水を含むとベトベトになっていきます.含水比の低い状態から高い状態に向かうと,個体・半個体・塑性体,液体に変化し,個体と半個体の境界が収縮限界SL,半個体と塑性体の境界が塑性限界PL,塑性体と液体の境界が液性限界LLと呼ばれています.
教科書のコンシステンシー限界についての図を見ると,収縮限界の含水比までは,土の体積は変化せず,これを超えると体積が増えていきます.乾燥した土の間隙に少しの水が入るとき,間隙に水が入るだけなら体積は増えないことは想像できると思います.水が増えていくと土粒子と土粒子の間隙を押し広げて水が入っていくので,体積が増えます.
この図は,土の中の水を模式化したものです.まず乾燥した土に水を加えると,土粒子の表面に水がくっつきます.表面張力によるもので,吸着水と呼ばれています.さらに水を加えて行くと,土粒子と土粒子の隙間の小さいところに水が侵入していきます.毛管力によるもので,毛管水と呼ばれています.
毛管力は,生活の中でも見ることができます.乾燥したスポンジを水に浮かべると,水を吸って濡れた部分がどんどん上に上がっていきます.これが毛管力によるもので,毛管力は小さな隙間ほど大きな力で水を吸い上げます.コップにストローを入れた時,太いストローと細いストローとで水がどれだけ上がっているか,確認してみてください.細いストローの水位の方が高いはずです.
隙間が大きいと,毛管力の影響を受けないので,水は重力などで動くことが可能になります.このような水を自由水と呼んでいます.
教科書では,第4章の透水と排水で解説されていますが,ここで知っておくと,コンシステンシーについての理解が深まります.
粘質土と砂質土で,これら三つの土中水のうち,どれが多いかは簡単に想像がつきます.粘質土は非常に土粒子が小さいですから,吸着水と毛管水がほとんどを占め,自由水はほとんどありません.一方砂質土は,間隙の大きい部分が多くあるので,自由水が多くなります.砂質土が水はけが良いのは,自由水が多いため,蒸発しやすく,下に浸透しやすくもあるからです.
運動場の土を例にコンシステンシーをみていきます.乾燥した運動場では歩きやすく,靴が砂に埋もれることはありません.公園の砂場は乾燥していても埋もれますが,それは砂が詰まっていないからです.転圧して締め固めた土では,足の直下の土だけで支えているのではなく,周囲の土も一体となって支えています.したがって締め固めて乾燥した土は,個体として扱っても構いません.ところが水を含むと,どんどん柔らかくなってきます.個体と半固体の境界が収縮限界ですが,その意味について説明します.
ここでは,田んぼの土を思い出してください.田植えの時の田んぼは,水を張っていますから,水面下の土は水で満たされた飽和状態の土と言えます.稲刈りの前には水を抜き,稲穂を実らせます.稲刈り後の土は,結構乾燥していますが,その時の土はどのようになっているか,覚えていますか?土にたくさんのヒビが入っているのを目にしたことがあると思います.なぜヒビが入るかというと,水が蒸発して乾燥したことによる収縮なのです.つまり,大量の水が土粒子の間隙を押し広げていたということになります.少しの水であれば,吸着水・毛管水として存在し,間隙を押し広げることなく水を含むことができます.この体積が膨張し始める手前の含水状態が収縮限界ということです.
収縮限界を越えると,固体から半固体となります.固体は,ある程度の力を受け止めて跳ね返すことができますが,半個体となると,崩れないまでも変形してしまう状態です.運動場の水分状態でいうと,若干足跡がつくけれど歩ける状態でしょうか.さらに水分を含むとズブズブ足が沈んでしまい,歩くのが困難になります.この状態が塑性体です.
子供の時,泥団子を作った経験はありますか?土に適度な水分量が必要です.水分が少ないとまとまらず,水分が多いとネバネバになって団子状にはなりません.ネバネバになった状態は,力をかけると反発することなく変形しますから塑性体です.したがって固めることができなくなった水分状態が塑性限界ということになります.この塑性限界を求める試験方法は,規格化されていて,土の水分を蒸発させながら,土で直径3mmのひも状の塊が作れなくなった時の水分状態が塑性限界とされています.つまり泥団子は,塑性限界を少し超えた水分状態で作れば良さそうです.
粘質土と砂質土とでは,泥団子の作りやすさも違ってきます.水分を保持してもらわないと団子状にはなりませんから粘質土の方が作りやすいと言えます.
塑性限界を越えて,土に水分を加えて行くと,ネバネバになって行きます.運動場の土で言えば,靴の底に土がくっつきそうで歩くのをためらうような状態です.さらに水分を加えると,土がドロドロになり,液体のような性状になります.塑性状態では,ネバネバな土と言えども土を丸めることができて,その形を維持していますが,液体のようになるほど水分を含むと,形は維持できなくなります.自由水が多くなって,重力により水が下に移動してしまうからです.その塑性体と液体との境界が液性限界となります.
さて,砂質土は粘質土に比べて間隙が大きいため,自由水の割合が多いと述べました.したがって砂質土は,乾燥した状態から水分を加えて行った時,少ない含水比で液性限界に達してしまいます.小さな土粒子が含まれていないような場合は,塑性限界すらない場合もあります.そのような土では泥団子はできません.そこで,土の性質を知る上で,液性限界の含水比Wl から塑性限界の含水比Wpを減算して得られる値,塑性指数Ipを使ってその性質を評価します.粘質土ほどIpは,大きい値を示します.液性限界を横軸にとり,塑性指数を縦軸にとってプロットし,その位置で土を分類することができます.詳しくは,教科書で確認してください.
液性限界を求める試験方法も規格化されています.試験方法は,教科書にも記載されていますが,映像の方がわかりやすいので,下のリンクから辿ってみてください.粒度試験や塑性限界試験についても解説されています.