シーケンサーとは、デバイスあるいはソフトウエアプログラムで、シンセサイザが音に変換する信号を生成するものです。他にも、MIDI信号を音楽にするためにもシーケンサーを使うことができます。ミュージシャンのガイドは、主にMIDIシーケンサーである2つのデジタルオーディオワークステーション(DAW)、QtractorとRosegardeをとりあげます。このガイドのすべての3つのDAWは、MIDI信号を、他のデバイスやエフェクトを制御するのに使います。
オーディオバスはオーディオ信号をあるところから他に送信します.多くの異なる信号が同時にバスに入力され、多くの異なるデバイスあるいはアプリケーションが同時にバスから読み出すことができます。バスに入力された信号は一緒に混ぜられ、バスに入った後は分離することができません。バスから読み出すすべてのデバイスあるいはアプリケーションは同じ信号を受信します.
3つの信号をまとめるオーディオバスの例。まとめられた出力は2つの別々のデバイスあるいはアプリケーションに送られます。
プログラムから出力されたすべてのオーディオは、マスターバスを経由します.マスターバスはすべてのオーディオトラックをまとめて、最終レベルの調整を可能とし、マスタリングを容易とします。マスターバスの主な目的はすべてのトラックを2つのチャネルにミックスすることです。
サブマスターバスはオーディオ信号がマスターバスに届く前に、それらをまとめます。サブマスターバスの使用はオプショナルです。それを使うと、すべてのトラックに影響を与えることなく、1つ以上のトラックを同じ方法で調整することができます。
2つのサブマスターバスの例。それぞれ、2つの異なる信号をまとめて、マスターバスに送っています。マスターバスは2つの信号を1つにし、それがすべての4つのオリジナルの信号を含みます。
オーディオバスはオーディオをエフェクトプロセッサに送るためにも使われます。
音の知覚されるボリュームあるいはラウドネスは複雑な現象で、専門家によっても完全に理解されているものではありません。ラウドネスを判定する1つの広く合意されている方法は、音圧レベル(sound pressure level, SPL)を測定する事です。それはデシベル(dB) あるいはベル(B, 10デシベルに等しい)で表されます。オーディオを作成する人々の間で、これはレベルと呼ばれます。オーディオ信号のレベルは、信号の知覚されるラウドネスを測定する1つの方法です。レベルはオーディオファイルに記録されている情報の一部です。
オーディオ信号のレベルを測定して調整するには多くの異なる方法があり、広く合意されている手段はありません。この状況の1つの理由は、オーディオ録音の技術的制限です。ほとんどのレベルメーターは目盛の上で -6 dBが平均で、0 dBが最大であるように設計されています。この慣習はアナログオーディオのために開発されました。私たちは外部のメーターと以下のリンクで記述される'K-system'を使うことをお勧めします.レベル測定のためのK-systemは、デジタルオーディオのために開発されました。
ミュージシャンのガイドでは、この用語は、他のレベルや、知覚されるボリュームやラウドネスとの混乱を避けるために'ボリュームレベル'と呼びます。
http://www.digido.com/level-practices-part-2-includes-the-k-system.htmlのLevel Practices。ここで記述されているタイプのメーターは、Planet CCRMA at Homeの'jkmeter'パッケージとして入手可能です。
http://en.wikipedia.org/wiki/K-systemのK-system (Wikipedia)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Headroom_%28audio_signal_processing%29のHeadroom (Wikipedai)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Equal-loudness_contourのEqual-Loudness Contour (Wikipedia)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Sound_level_meterのSound Level Meter (Wikipedia)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Listener_fatigueのListener Fatigue (Wikipedia)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Dynamic_range_compressionのDynamic Range Compression (Wikipedia)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Alignment_levelのAlignment Level (Wikipedia)。
パニングとは、別々の出力チャネルに送られるチャネルの信号の割合を調整することです。ステレオ設定(2チャネル)では、2つのチャネルは'左'と'右'のスピーカーをあらわします。DAWにおいて、録音されたオーディオの2つのチャネルがあり、デフォルト設定では'左'に録音されたチャネルはすべて'左'の出力チャネルに送られ、'右'に録音されたチャネルはすべて'右'の出力チャネルに送られます。パニングは、左に録音されたチャネルのレベルのいくらかを右の出力チャネルに送り、右に録音されたチャネルのレベルのいくらかを左の出力チャネルに送ります。それぞれの録音チャネルは合計で一定の出力レベルを持ち、それが2つの出力チャネルの間で分けられます。
左と右の録音チャネルが左の出力チャネルに送られているところ;左の録音チャネルが左の出力チャネルに送られ、右の録音チャネルが右の出力チャネルに送られるところ、そして、左と右の録音チャネルが右の出力チャネルに送られているところ
左の録音チャネルのデフォルト設定は、'全左'パニング、つまり出力レベルの100%が左の出力チャネルに行くというものです。オーディオ技術者はこれを調整して、録音チャネルのレベルの80%が左の出力チャネルに行き、レベルの20%が右の出力チャネルに行くようにするかもしれません。オーディオ技術者は、パンナを'センター'にすることで、左の録音チャネルがリスナのまん前にいるかのようにすることもできます。つまり、出力レベルの50%が左と右の出力チャネルの両方に行くわけです。
バランスはときによりパニングと混同され、それは市販のオーディオ機器においてもみかけられます。バランスを調整することは出力チャネルのボリュームレベルを変えますが、録音された信号を移動することはありません。バランスのデフォルト設定は'センター'で、ボリュームレベルの変化は0%ということです。ダイアルを'センター'から'全左'設定にするにつれ、右の出力チャネルのボリュームレベルは小さくなり、左の出力チャネルのボリュームレベルは変わりません。ダイアルを'センター'から'全右'設定にするにつれ、左の出力チャネルのボリュームレベルは小さくなり、右の出力チャネルのボリュームレベルは変わりません。ダイアルを'20% 左'にすると、オーディオ装置は右の出力チャネルのボリュームレベルを20%下げ、左の出力チャネルの知覚されるラウドネスを約20%上げるのです。
右の出力チャネルは消音されている(バランスは全左)、左と右のチャネルは同じボリューム(バランスはセンター)、左の出力チャネルは消音されている(バランスは全右)
2つのスピーカーが同じくらいの音の大きさになるように、バランスを調整するとよいです。バランスにより、2つのスピーカーが、リスナから等距離でないような、悪いリスニング環境を補正することできます。もし右より左のスピーカーの方が、あなたの近くにあるなら、バランスを右にして、左のスピーカーのボリュームレベルを下げればよいです。これは理想的な解決策ではありませんが、ときには、スピーカーを正しく置くのが不可能、あるいは現実的でないこともあるでしょう。バランスを調整するのは、最後の再生のときだけにしてください。
音楽の時間を測るにはいくつもの方法があります。デジタルオーディオのための時間の単位の最も一般的な四つは:
Bars and Beats、小節と拍子:普通、MIDI作品で使われ、'BBT,'つまり'Bars, Beats, and Ticks'と呼ばれます。チックは、部分的な拍子です。
分と秒:普通、オーディオ作品で使われます。
SMPTE タイムコード: オーディオとビデオの高精度の同期のために発明されましたが、オーディオだけの時にも使うことができます。
サンプル:使用されるオーディオファイルの形式に直接関連しており、サンプルは、オーディオファイルにおける最小の時間の長さです。詳しくは、sect-Musicians_Guide-Sample_Rate_and_Sample_Formatを参照下さい。
ほとんどのオーディオソフトウエア、特にデジタルオーディオワークステーション(DAW)は、ユーザが、どの時間単位を使うか、選ぶことができます。DAWはセッションにおける時間の進行をタイムラインを使って表し、あなたがタイムシフティング、つまり、リージョンがタイムラインの中で再生を開始する時間を調整することを可能とします。
時間は水平に表され、最も左の点が、セッションの開始(測定の単位にかかわらず、ゼロ)で、最も右の点がセッションの終わりから少しすぎたところです。
同期は、複数のツール、多くの場合トランスポートの移動、の動作を調整するものです。さらに、同期は、アプリケーションとデバイスの間のオートメーションを制御します。MIDI信号が、通常は同期のために使われます。
ルーティングは、オーディオ信号を1つのところから他に転送します。アプリケーションの間、アプリケーションの部分の間、そして、デバイスの間です。Linux システムでは、JACK Audio Connection Kitがオーディオルーティングのために使われます。JACK対応のアプリケーション(そして、設定により、PulseAudio対応のものも)は、自分の設定により、入力と出力をJACKサーバに提供します。QjackCtlアプリケーションはデフォルトの接続を調整することができます。あなたはQjackCtlを使って、FluidSynthのようなプログラムの出力を、例えば、Ardourで録音されるように、ルーティングすることができます。
QjackCtlインタフェースのConnectionsウインドウでのルーティングと多重化の図
マスターバスの入力は多くのソースからの多重化されたオーディオを受け付けます。
システム再生入力にルーティングされたマスターバスの出力
多重化により、複数のデバイスとアプリケーションを1つの入力あるいは出力に接続することができます。QjackCtlにより、簡単に多重化ができます。これは、重要とは思えないかもしれませんが、オーディオインタフェースのような物理デバイスには、ただ1つの接続しかできないことを覚えておいて下さい。コンピュータが音楽製作に使われる前は、多重化は信号を分離あるいは結合する物理デバイスを必要としました。
オーディオチャネルとは、オーディオデータの単一のパスです。マルチチャネルオーディオとは同時に1つ以上のチャネルを使い、シングルチャネルオーディオより多くのオーディオデータの転送が可能なオーディオのことです。
オーディオは昔はただ1つのチャネルで録音され、'モノフォニック'あるいは'モノ'録音を作成しました。1950年代に、2つの独立のチャネルを持つステレオ録音が始まり、モノフォニック録音に代わり始めました。人間は2つの独立した耳を持つので、2つの独立したチャネル、2つのスピーカーでオーディオを録音、再生するのは自然なことです。現在入手可能なサウンド録音はステレオであり、人々はこれにほぼ満足しています。
主に'サラウンディングサウンド'映画によってもたらされつつある、5あるいは7チャネルオーディオの潮流があります。これは音楽についてはあまり普及していません。2つの音楽用'サラウンディングサウンド'形式が存在します:DVDオーディオ(DVDA)と、スーパーオーディオCD(SACD)です。これらの形式とそれを使うデバイスの開発は、個人用のMP3プレイヤーのヘッドフォンの普及や、一般消費者はそれほどオーディオ品質の向上に興味がなかったこと、レコード会社によるコピープロテクションの仕組み、などにより成功しませんでした。その結果、DVDーAやSACD録音のためにより高いお金を払ってもよいとするいくらかのお客さんがいるものの、少数の録音しか入手可能ではありません。もしあなたがDVDーAやSACDが扱えるプレイヤーを買ったとしても、あなたはお持ちのオーディオ機器をすべて、プロプライエタリなコピープロテクションソフトウエアをサポートするモデルに買い替えないといけないのです。この装置がないと、プレイヤーは、通常のオーディオCD以上のサンプルレートやサンプルフォーマットでの音楽の出力ができなくされています。不幸なことに、これらのことが近い将来に変わるとは思えません。
これは、Fedora 14 Musicians' Guide http://docs.fedoraproject.org/en-US/Fedora/14/html/Musicians_Guide/index.html の部分を私が訳したものです。Creative Commons Attribution–Share Alike 3.0 Unported license ("CC-BY-SA")にしたがって https://sites.google.com/site/kandamotohiro で配布されます。kanda.motohiro@gmail.com