テーマ:学習指導要領改訂期における教育目標・評価研究の課題
2025年6月1日(日)10:00-12:00
於:Zoom
話題提供:
石井英真(京都大学)
コメント:
土成永侑(福井市教育委員会)
川口広美(広島大学)
本田伊克(宮城教育大学)
コーディネーター:
遠藤貴広(福井大学)
2025年6月1日(日)の10:00から12:00、「学習指導要領改訂期における教育目標・評価研究の課題」と題した中間研究集会をオンラインにて開催した。参加者は200名以上であった。
2024年12月25日に中央教育審議会に対して「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」諮問がなされ、学習指導要領改訂に向けた議論が本格化している。論点は多岐にわたるが、教育目標・内容の構造化の方策や学習評価の在り方など、教育目標・評価論に関わる問題も重要な検討事項となっている。
今回は、中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会 教育課程企画特別部会の委員として議論をリードしている石井英真理事(京都大学)から話題提供いただき、学習指導要領改訂をめぐる最新の論点を確認した上で、教育目標・評価研究あるいは本学会としては今後どのような課題に取り組む必要があるのか、土成永侑氏(福井市教育委員会)、川口広美理事(広島大学)、本田伊克理事(宮城教育大学)によるコメントを叩き台に、参加者と議論した。
まず、土成氏から、学校現場では学習指導要領との間に距離感があること、書かれていることが理解できないから使いこなせていないこと、教科書会社の指導書等に頼ったインスタントな授業が多く、本物の授業を追求することが難しくなっている状況が確認された。
話題提供者の石井氏からは、まず中教審 教育課程企画特別部会の配布資料に基づいて、論点の全体像が示された上で、主に学習指導要領の構造化に関わる論点が紹介された。このとき、情報活用能力等、「学習の基盤となる資質・能力」のイメージにも注目した論点確認が行われた。次に、この議論の背景にある問題の構図が示された上で、さらに学習指導要領の構造化に関わる石井氏独自の試案も示された。
この話題提供を受けて、まず土成氏から、授業づくりのオーナーシップ性が高まることが現場の教員にどのようなインパクトを持ちうるものになるのか、という点からコメントが寄せられた。
次に川口氏から、教科の本質を誰が決めるのか、本質や教科の目的は誰とどこで話すのか、現場の裁量と批判性の両立をどう考えるか、そして、教科内容の再構成・批判的まなざし・現場の専門性とオーナーシップといったものの「公共性に向けた再編集の場」はどこにあるのか、といった視点からコメントが寄せられた。
本田氏からは、教育内容の精選をする場合の構想と観点はいかなるものになるか、内容知と方法知の区分をめぐる問題などに焦点を当てたコメントが寄せられた。
コメンテーター以外では、まず八田幸恵氏(大阪教育大学)から、指導要録の観点に関する質問が寄せられた。また、亘理陽一氏(中京大学)から、教科による特性の違いや実行可能性に関するコメントが寄せられた。さらに、大西洋氏(ノートルダム清心女子大学)から、情報活用能力の矮小化・形骸化を懸念するコメントが寄せられたのに加えて、早川晃央氏(富山大学教育学部附属中学校)から、学習者像や主体性に関するコメントが寄せられた。
本集会では、学習指導要領の改訂に対して学会として新たな提案を行う前に、改訂をめぐる議論を正しく理解することに力点が置かれたが、当日は改訂議論の背後にある問題の構図についても議論が及んだため、議論理解の解像度が確実に高まった。また、今回は公開研究集会とすることで、これまでの会員になかった視点からの議論もなされた。今後の議論の発展を祈りたい。
文責:遠藤貴広(福井大学)