漫画レビュー

方針

私、ヒャッホイ太郎はよく漫画を読む。TMR(TodaiMangaResearcher)に所属しているぐらいである。しかも買うのは専ら発売日に新品で買う。それは中古を買うのは作者に申し訳ないという意図もあるが、ネタバレが全くない状態で漫画を読みたいというのが大きい。

もしくは知名度が全然ない作品を唐突に漫画喫茶で拾って読んだりもする。

つまりは当たり外れが大きいのである。

しかし。それはつまり一貫した好みを持つ私が幅広いジャンルを読むきっかけになっている。ならばこの情報は新しい漫画を開拓したい人にとって非常に有益なのではないか?

そういうわけでこのページは書かれている。私自身クセは強いほうだが以下の条件は満たしているので安心して読んでいただきたい。

凡例(5点満点での点数 どこまで読んだか)

これいる?

攻殻機動隊(2/5全部読んだ)

昔の作品にしてはちゃんとした未来観だが(コブラじみてないということ)情報量過多で難解。

1989年に書き始められたにしてはやけにリアルで現代のネット社会の一部を予知しており凄まじい作品だ、と予め聞いていた。読んでみるとたしかにスターウォーズのような誇張した未来表現がないことには好感が持てる。透明パイプに浮く車とか空中に浮くタッチパネルとかは登場してこない。作品の根幹として受け入れられているのはインターネットと、サイボーグ、それと情報生命体。登場人物は悉くサイボーグとなっており、うなじにある接続端子や無線装置によって情報を直接送受信したり、または人間と同じく、しかしデジタル信号によって音で情報をやり取りしたりする。どうやら化学技術と情報技術、それと軍事的な知識に精通しているらしくそれらに基づいた注釈が付き、また突飛なことが起こらないようになっている。

どうやらこの科学的な見方のおかげで昔にしてはファンタジーじゃない未来の様子を描写できているようだ。義体の作り方についてその素材の製法についてちょこちょこ解説を挟んだり、ここでの〇〇は漫画の表現上の理由により簡略化する、などと注釈を挟んでいるあたりからそれが伺える。

そういう世界観のもとで、脳を機械とした人間はウイルスによってやられるようになったり記憶を捏造されて操られるようになったり……という事件が起きるので主人公の属する攻殻機動隊が解決するのである。

それぞれの事件は刑事ドラマめいて多大な情報を与えられ、時にアクションを入れ時に人々の意思エゴが交錯する……

と、ここまではいいとしよう。では、まず問題点から。情報量が多すぎる。読者はその全てを理解できるわけでないから解説を挟むというのはわかるがあまりにも科学的になるが余り考察に任せるようなところまで作者自ら言ってしまったりしている。図を出してちょっとしたことについて尺を取りすぎている。そしてそれが後々生きるかというと微妙で、ちょびっとしたセリフで裏付けされたり、世界観の補強にしか使われていない。1+1=2を証明すべくペアノの公理をサクセッサーを使って示す数学者のようだ。

一応一巻の最初のところにも、注釈多すぎるので逐一読むのはやめときな、と書いてあるが本編でも余談じみたことが説明されているのでなんとも言えない。ファンのサイトを覗いてみたがどうやらこれはアニメで攻殻機動隊にハマった人が読むようなファンブックじみた代物なようだ。

さらにスピリチュアルな話が多い。もちろん科学的な視点は現実世界の描写で重視されていると先に書いた通りなのだが精神世界または電脳世界はかなりスピリチュアルに具体化されている。絵を派手にするために仕方のないことなのだろうがそこでの話も宇宙の対称性がどうかとか今一的を得ない。もしかしたらわざとぼかして言っているのかもしれないが。

ではいいところを。まず世界観がしっかりしているおかげで没入して楽しめる。世界観がブレブレな最近の転生ものとは真逆である。それゆえ融通がきかず展開を作るのは難しそうではあるが物語はしっかり成立している。

それと絵柄は古いが画力があるので迫力ある画が見れるし、ボディラインがエロい。二巻は回を追うごとに露骨になっている気がする。

以上だ。

下剋上ものがたり(1/5一巻まで読んだ)

地獄が舞台のありがちなバトルものだった。がっかり。

帯にドMが地獄で恋をしたとか書かれているので、地獄つまり和風の独特な世界観の中変態チックな主人公がトチ狂った恋をするラブコメかと思って買った。違った。

主人公もドMとかいうわりに物理的な攻撃を好むだけの戦闘狂で、ドMとは違った。

まあ王道戦闘ものとしてレビューをするなら一巻だけで言うのもアレだが、制約の代わりに何かしらの能力を持っている感じっぽい。しかし地獄の役職の上下関係とかがかなり曖昧だし制約も結構曖昧なので気合とか気持ちで解決する作品になっちゃう気がする。某海賊漫画が私はあまり好きではないのでパス。

あやめとあまね(3/5一巻完結)

かなり雑に展開するので好感が持てる。百合はさておき。

私はこれの作者がとても好きなのだが、あのノリかな~と思ったらやはりそのノリだった。この世界の女子はかなりマニアックな界隈の話題をどんどんするし、下ネタも基本的に全く恥じらいなく発し、そしてそれに引く人もいない。

そんで、その世界観をもとにかなり狂信的なレズが意中の相手にアタックをしかけるという内容なのだが、一話完結でちゃんと落ちがつくので昨今のもやもやする4コマとは違う。それだけは伝えておく。

スペシャル(5/5一巻まで読んだ)

ちょっと漫画チックなところのある日常系。シュール系。

転校した先のクラスが変人ばかり、というまあそれなりにありがちなやつ。全部現実にはいないだろうな、というキャラばかりではあるが、一人を除いて実現可能でもある。そしてその心情描写がとても詳細であるのでわりかし違和感もなく読み進められる。個人的に日常系には衝撃的な出来事を排したものとだれかの人生を脚色せずにそのまま描くものがあると思っているが、これは後者だろう。人とは違うところを常人も一、二持っていると思うが、それから生じる出来事というのは興味が惹かれるものだ。

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? 2 自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?(2/5一巻まで読んだ)

カケグルイの俺TUEEE版。タイトルはやはり長い。

主人公の境遇がまるで同じで、過去になんかあったんだろうなと言う感じなのだが、主人公の地位がもともと高かったことや特殊能力じみていること、ヒロインが大量に寄ってくること、匂わせ方がわざとらしいこと。それを除けばほぼカケグルイとほぼ同じ。いいのかこれとは思うのだが読む層が明らかに違うので一応需要はあるかも。

ジャヒー様はくじけない!(3/5二巻まで読んだ)

プライドが高いゆえに貧相な暮らしから抜け出せない元貴族的存在。作画きれい。

主人公は魔界のNo2であるのだが魔法少女により魔王が倒され魔界がなくなり魔石を殆ど失いその一方部下は人間界に順応して金持ちになっている。プライドが高い立場上主人公ジャヒーがその恩恵を受けることはないのだが、そのプライドとの葛藤や苦難にとても生活感を感じて見てて和む。

ただギャグ時空なのでそれに関するネタがあるというだけで主には導入とかでしか触れられないことに注意。

トニカクカワイイ(5/5二巻まで読んだ)

理想的純愛。

主人公は高学歴ではないものの、勤勉で超頭いい、貯金もある。という状態で一目惚れしたミステリアスな彼女といきなり結婚する。ノロケを見せられる周りの反応やら本人たちの意識の仕方などを描いていて、あま~い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

親の干渉やら金の問題やらが関わってこないあたりがとても現実を忘れさせてくれる良い作品。

父さんな、デスゲーム運営で食っているんだ(2/5一巻まで読んだ)

出落ちかと思いきやつらい中間管理職的な話。ごめん自分の好みじゃない。

デスゲームが法的に許された日本でそれを運営する会社員の主人公は息子の知り合いがデスゲームに参加していることを知りなんとか部下の目を誤魔化しながら、家族にばれないようにしながら、しかし上司の機嫌を取りながら生きていかねばならない。

世知辛くて読む気になれねえ。

魔界ガチャは今日も渋い(1/5二巻まで読んだ)

市場の傾向を読んで出版したけどクオリティが低いからダメだったパターン。表紙詐欺。

異世界から仲間を呼び出せるランダム性のある機械を扱える魔王が地球侵略のためやってきた……みたいな設定を付けてそれっぽくしようとしているが要するにガチャのあるあるネタとヒーローを倒す悪役の気持ちというよくあるネタを組み合わせたものになっており、さらに途中からそれっぽく伏線を引いてみたりするが、必要な要素を取り入れただけで作品としてまとめ上がっていない。途中作画が雑になる上にキャラデザが某ソシャゲを彷彿とさせるようなものもいる。権利関係でややこしくなって水瀬陽夢と本当はこわいクトゥルフ神話みたいになったらおもしろい。タイトルもひねりがなくて全く興味を惹かない。出落ちにすらなれない感じ。

加点がないし減点が多い。流行りに遅れて乗った作品は大体渋い

シメジシミュレーション(5/5一巻まで読んだ)

シュールレアリスムと日常系の合体。

中学時代引きこもりだった主人公しじまとその友人まじめの日常を描いたもの。会話に異常性はないものの、一部の人がとても好き勝手に振る舞うためにシュールレアリスムに基づいたものになっている。モノが不自然な形で共存する、原義シュールレアリスムに生きる高校生は今までの漫画にない現実のおもしろさの中で生きているように感じる。

すべてを知ることができない世界観、あたかも人為的でないかのような作品は先が読めなくておもしろい。