格闘ゲームで

気づいたこと

はじめに

ストIIを皮切りに流行した格闘ゲームだったが本当に多種多様な作品が生まれた。

最初はストIIと同じキックとパンチにボタンを充てたようなものばかりだったが鉄拳のように四肢にボタンを充てたもの、ジョイメカファイトのようにボタンを2つだけにしたもの、サムライスピリッツのように剣術をメインにしたものなどが生まれた。

そしてしばらくしたのちに"2D格闘ゲームに対するアンチテーゼ"としてスマブラシリーズが出てきたのだ。

特にスマブラは他の格闘ゲームにないシステムを多数採用しており、同じジャンルだと認めない流派もあるくらいだ。

しかしそれらすべてのゲームに共通する特徴もまた多く存在する。今回はそれらについて語っていこうと思う。

備考

偉そうに言っといてなんですが、ちゃんとやったことがあるのはスマブラSPとストII、ストVだけでほかはちょびっと友達とやったことがあるくらいです。

真剣勝負の功罪

格闘ゲームでの最終目的は当然対戦相手に勝つことである。

大昔の格闘ゲームではアーケードモードに対応するべくスコア表示があって、たとえば最初に攻撃を通したほうにボーナス点が入ったりもしたが、しかし結局のところそれは関係ない。勝つか負けるかだ。

真剣勝負だからこそ深い読み合いが生まれる。

相手は人間なのだから、虚を突いた攻撃であれば反応が遅れる。相手の傾向を知ることで対策できる行動がある。

キャラ対策として対戦相手のキャラへの対応を体に染み付かせることで反射速度を上げることができる。

しばしばじゃんけんに例えられるそれは選択肢の多さと仕様の多さ、そして人間の反射神経によって人間そのものの核心に迫る遊びとなるのだ。


他方、勝つためにはあらゆる行動が正当化される。

例えばバッタ戦法などのワンパターン行動。

極端なものでは煽り行為。人にもよるが挑発されて普段どおりのパフォーマンスができる人はそうそういるまい。

しかしこれらは時折気分が悪いとかマナー違反だとか言われるだけで運営への通報には値しない。

ゲームシステム外の仕様、つまりはチートや切断行為などを行わない限りは勝てばレートが上がる。

逆に言えばゲームシステムそのもののつくりが許す限りゲームの楽しみを損なう行為がはびこる。

記憶に新しいのはスマブラforのベヨネッタ。スマブラXのメタナイト。

カードゲームにおける環境でも似たようなことが言える。

努力と達成感

スマブラは相変わらず人気だが、格闘ゲーム全体がゆったりと衰退しているのはなぜか。

単純にいえば新規参入がしずらいから、そしてその理由は古臭いからというよりも努力を必要とするシステムだからだろう。

格闘ゲームには直感に反する操作が多々ある。ガードの仕様もそうだが一番大きいのがコマンド入力。そして質のわるいことにこれができないと対戦では話にならない。直感的な操作ができないものを操作できるようになるにはシンプル、努力を必要とする。コンボを決めようと思っているならその直感で操作できないものを組み合わせてさらに複雑なものをきっかり入力できるようにしないといけない。

そうして基本操作と基本的なコンボができるようになって初めて、初心者として上級者にボコボコにされる準備が整う。

昔は初心者の割合が高いため気軽に入れたものを、どんどんと煩雑にしていくために上級者だけが残る始末となった。


しかし、逆に言えばそのぶんの達成感はある。どんなジャンルのゲームであれ、最初はできないことがどんどんとできるようになっていくというのは理性的な快感の一つだろう。その点スマブラはVIPというものを設定して明確なゴールを定めた。これは強者を表彰する役割もあるだろうが、結構な人数がそれなりの努力で入れるボーダーを定めたということでもある。参入障壁を低くした上で上達の余地を大きくとり、それが達成されたときに大いに祝福する。理想的な上達欲を満たすデザインではないだろうか。

快感のバランス

格闘ゲームでは負け確という状況が存在する。ヨーヨーをぶら下げたネス、明らかに帰ってこれないふっとばし、コンボ始動技に当たる、バスケ、反確。格闘ゲーム以外でもモルディカイが二体出てくるとか、蘇り持ちを蘇生し続けるムエルテとか、王将以外全部取られてしまったとか。正直足掻いて相手のミスを祈るしかない時間は苦痛だ。反面、相手からすると非常に楽しい。このバランスが非常に難しいところだ。

自分はゲームで操作できない時間が非常に苦痛なのでネスのPKファイアーもベヨのよくわからないコンボも嫌いだ。加えてコンボを練習するのも、決まった形に従って動くのも嫌いだ。

しかし圧倒的な有利を自分のものにできるというのは強い快感でもある。その実力が地道な努力からくるのがコンボというわけだ。

詰み状況を作り上げて完成したときは楽しい。だが完成されたほうは苦痛。対人戦だからこそ両立するこの感情は他方を優先しすぎてはいけない。