1.調査テーマ
3Dプリンタの出願動向
2.調査目的
3Dプリンタは試作品や少量生産に有用な技術であり、産業界に与えるインパクトは大きいといわれている。また個人も3Dプリンタを購入できるようになってきており、家庭用として普及する可能性もある。
アメリカでは自動車を製造するというニュースがあったが、日本では人形を作成するという話がテレビで紹介されていた。
そこで、今回は、3Dプリンタ全般についてどのような技術が注目されているか調べることとし、さらにどのような製品が対象とされているのかを調べることとした。
3.調査対象
使用DB :SRPARTNER
対象公報:公開特許公報
対象期間:2011月1月1日〜2016月12月31日の発行
対象技術 : 3Dプリンタ全般
4.概要
3Dプリンタ全般に関する公報件数は2015年に急増している。
分類コード別に見ると、全体的に増加傾向であるが、特に次のコードの増加が顕著である。
C:インクジェット方式
A02:その他の硬化方式(例.熱硬化)
B03:樹脂
A01:光硬化によるもの(エネルギー線含む)
B02:エマルジョン、溶液
これらの傾向から今後の動向を推測すると、当面はインクジェット方式により樹脂を塗布するタイプ、光や熱で硬化させるタイプが主流になると見られる。
出願人別で見ると、出願人数も2015年に急増している。
特にセイコーエプソン、リコーの動向が重要と思われるが、ゼロックス、キヤノン、東芝も発明者人口が急増しており、これらの出願人からの出願も今後増加すると思われる。
セイコーエプソンとリコー名義の公報から抽出した新規技術のサンプルは以下のとおり。
[セイコーエプソン]
・ 金属粉末にレーザー光を照射して形成する構造物の製造において表面に光沢を有する構造物を製造可能なレーザー焼結用粉末。
・ 発色性に優れた三次元造形物。
・ 立体物を三次元造形により造形する際にサポート部をより簡便に除去できる造形方法。
・ セルロース系材料を含み、寸法精度、強度に優れた造形物の製造。
・寸法精度に優れた三次元造形物を、優れた生産性、優れた安定性で製造することができる三次元造形物製造用部材。
・ 層の積層方向の上流側に面した外表面の質感(グロス調やマット調)を容易に調整することが可能な三次元造形物の製造方法。
・ 三次元造形物を効率よく製造することができる三次元造形物の製造方法。
・ 高い寸法精度で三次元造形物を製造することができる三次元造形用組成物。
・ 表面精度に優れた三次元造形物を、優れた生産性で製造することができる三次元造形物の製造方法。
総合すると、現在はセイコーエプソンは寸法精度を向上する製造方法を重視しているようである。
また、金属粉末やセルロース系材料により造形するなど、用途の拡張にも取り組んでいるようである。
[リコー]
・ 折り曲げ性を維持しながら高い硬度と延伸性を両立した硬化物を得ることができる活性エネルギー線硬化型インク組成物。
・ 従来よりも低粘度で臭気が少ない光重合性化合物を用いた光重合性及び光硬化性に優れたインク。
・ 高硬度と高延伸性と高付着性が得られ、インクジェット手法を用いて画像形成が可能な活性エネルギー線硬化型組成物。
・ 臭気が少なく、活性エネルギー線重合性及び活性エネルギー線硬化性に優れた活性エネルギー線硬化型組成物。
・ 印字濃度が高く、活性エネルギー線に対する硬化性、及び記録媒体に対する密着性が良好な活性エネルギー線硬化型組成物。
・ 高融点かつ高硬度材料を用いた複雑な立体形状の立体造形物を簡便かつ効率良く、高強度で素早く製造し得る立体造形材料セット。
・ 複雑な形状を有する様々な材質の立体造形物を高強度かつ高精度に製造するための立体造形用粉末材料。
・ 立体造形物の強度ばらつきを低減でき、均一な強度の立体造形物を得ることができる立体造形用粉末材料。
・ 面等に存在するボイドが少なく、外観上、極めて美麗な立体焼結物を得ることができる立体造形用粉末材料。
・ 活性エネルギー線硬化型組成物を用いてなる硬化物(塗膜やその積層体)における硬度と、延伸性及び折り曲げ性とを両立できる活性エネルギー線硬化型組成物。
総合すると、リコーは光硬化性組成物の開発に注力しているようである。
3Dプリンタの用途としては、プロトタイプの構造物、複雑な形状・構造の物品、異なる材料を積層した機能性材料などが適しているが、今のところ次の用途が主流てある。
・歯科用
・医療用の骨
・鋳型
・機械部品
・光学部品
・電気部品
※ 作成した図表は21図と16表