1.調査テーマ
農業関連技術の出願動向
2.調査目的
農業分野では後継者不足が深刻な問題になっている。
これは、重労働の割に農家の収入は必ずしも高くない、将来に期待が持てないなどの理由があるようである。
しかし、日本の農産物は高品質であるので高価格でも海外に輸出可能であり、栽培、流通、販売などの方法を見直すことにより価格も下げられるかもしれない。
最近、農業以外の分野から農業分野へ進出するようになってきているのは、このような期待があるためと思われる。
そこで、今回は農業関連技術の出願動向を分析することにより、農業関連の全体的な技術開発状況、主要メーカーの注力技術、今後重要となりそうな新規技術などを調べることとした。
3.調査対象
使用DB :SRPARTNER
対象公報:公開特許公報
対象期間:2011月1月1日〜2016月12月31日の発行
対象技術 : 農業関連技術
4.概要
農業関連の全体的な技術開発状況、主要メーカーの注力技術、今後重要となりそうな新規技術などを調べたが、発行件数は、多少の変動はあるものの、全体としてはほぼ横這い傾向を示している。
しかし、個別に見ると、次のIPCサブクラスは増加傾向が顕著であった。
B60K:車両の推進装置または動力伝達装置の配置または取付け;複数の異なった原動力の配置または取付け;補助駆動装置;車両用計装または計器板;車両の推進装置の冷却,吸気,排気または燃料供給に関する配置
B32B:積層体,すなわち平らなまたは平らでない形状,例.細胞状またはハニカム状,の層から組立てられた製品
C08L:高分子化合物の組成物
B60R:他に分類されない車両,車両付属具,または車両部品 ]および[B62D 自動車;付随車
G01S:無線による方位測定;無線による航行;電波の使用による距離または速度の決定;電波の反射または再輻射を用いる位置測定または存在探知;その他の波を用いる類似の装置
G05D:非電気的変量の制御または調整系
この結果を見ると、農業用の作業車に関するものと、農作物包装用のフイルムに注力しているようである。
出願人数を集計した結果では、多少の変動はあるものの、出願人数は2012年以降ほぼ横這い傾向であった。
発明者数を集計した結果によれば、農業分野の発明者数はほぼ横這い傾向であったが、2014年以降はやや増加傾向を示している。
この状況を見ると、農業関連の出願件数は今後も横這い傾向が続くと思われるが、技術内容としては作業車の改良や、収穫した作物の包装や保存方法の改良に移行しているようである。
出願人としては井関農機が目立っていたが、クボタ、ヤンマーの発行件数も多かった。
また「水耕栽培;土なし栽培」の増加傾向も目立っていた。
この「水耕栽培;土なし栽培」の出願人としては、以前はパナソニックIPマネジメントが目立っていたが最終年の2016年には急減している。これに対して住友電気工業は2016年に急増している。
増加傾向を示した技術としては以下のものが抽出された。
・養液調整に特徴を有するもの
・栽培室及び室内の光、温度、湿度、CO2等の制御
・棚上または積み重ねた容器を使用する水耕栽培
省力化と生産性向上に関する技術・課題としては、ロボットや作業車の自動運転が抽出されており、GPSによるものも含まれていたが、全体としては横這い傾向であり、現時点では人手不足を技術によりカバーするところまでは進んでいないようである。
総括すると、農業分野は技術転換が始まったようであり、まだ作業車や包装フイルムの改良が中心であるが、今後はICTを利用した省力化技術の開発がさらに進むことが期待できそうである。
作成した図表は66図と13表