4.概要
量子コンピュータについてどのような技術が出願されているか、どこから出願されているかを調べたが、分析結果の注目部分をまとめると次のようになる。
量子コンピュータに関する分析対象公報の発行件数は373件であり、2005年発行分をピークとして減少傾向にあったが、2017年発行分では増加傾向を示している。
ただし、2017年発行分は、2017年1月1日〜2017年8月10日に発行された公報を元にその後の発行予想分を追加したものであり、予想件数である。
出願人数や発明者数もほぼ同様の傾向を示している。
出願人別で見ると、日本電信電話、東芝、ディー−ウェイブシステムズ,インコーポレイテッド、ノースロップグラマンシステムズコーポレイション、日立製作所、日本電気、富士通、国立研究開発法人科学技術振興機構、ヒューレット−パッカードデベロップメントカンパニーエル.ピー.、ヤフーの発行件数が多かった。
この上位10社で61.1 %を占めており、量子コンピュータは少数の出願人に集中しているようである。
特に、日本電信電話、東芝が重要と思われる。
新規参入企業としては次の出願人の評価が高かった。
ヤフー株式会社
ノースロップグラマンシステムズコーポレイション
所定条件を満たす重要メイングループは以下のとおり。
G02F1/00:独立の光源から到達する光の強度,色,位相,偏光または方向の制御のための装置または配置,例.スィッチング,ゲーテイングまたは変調;非線形光学
G02F3/00:光学的論理素子;光双安定素子
G06F7/00:取扱うデータの順序または内容を操作してデータを処理するための方法または装置
G06F17/00:特定の機能に特に適合したデジタル計算またはデータ処理の装置または方法
G06N99/00:このサブクラスの他のグループに分類されない主題事項
この重要メイングループが付与された公報のうち最新の10件のサンプル公報から抽出された出願人と、新規参入企業とを併せると、当面は次の出願人が重要と思われる。
日本電信電話株式会社
東芝
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
ヤフー株式会社
ノースロップグラマンシステムズコーポレイション
株式会社日立製作所
上記サンプル公報の技術内容を見ると、量子計算方法が中心であるが、量子ビットの形成技術、量子ゲート装置、量子ビット読み出し用の比較器なども出願されていた。
量子計算方法では光学技術によるものが多かった。
また、パラメトリック発振、キュービット回路、ユニタリ行列分解、量子フーリエ変換などが目立ていた。
これらの分析結果を総合すると、量子コンピュータに関する技術はまだ計算方法の改良が中心であり、量子ゲート装置、量子ビット読み出し装置など実用化に必要な具体的な回路装置は少なかったので、商用化はまだ先のようである。
なお、この調査はほとんどがプログラム処理による簡易的なものであるので、さらに精度の高い分析が必要であれば、特許調査会社の専門家による検索式作成と全件目視チェックによる分析を依頼されたい(ただし数百万円と数ヶ月の期間が必要となることがあるが)。
※ 作成した図表は24図と9表