1.調査テーマ
小規模発電技術の出願動向
2.調査目的
再生可能エネルギーによる発電については既に調査済みだが、大規模発電を想定したものであり、地産地消の小規模発電技術については未だ分析していなかった。
小規模発電技術については小川の水流により自宅の電気をまかなうケースや、村内に建設した太陽光発電パネルにより村内の電気を賄うケースが紹介されていた。
このように各家庭で発電するとか、地域で発電し地域で消費するというような、小規模の発電は大規模な変電所や送電線網が不要になり送電ロスも少なくなるだけでなく、災害時の補助電力としても有用と思われる。
そこで、今回は小規模発電に関する過去の出願を調べ、現在どのような状況にあるのか、近い将来の技術動向はどのようになりそうかなどを調べることとした。
3.調査対象
使用DB :SRPARTNER
対象公報:公開特許公報
対象期間:2011月1月1日〜2016年12月31日の発行
対象技術 : 小規模発電技術
4.概要
小規模発電に関する過去の出願を調べ、現在どのような種類が出願されているか、今後の動向はどうりそうかなどを調べたが、分析結果の注目部分をまとめると次のようになる。
1993月1月1日〜2017年8月17日に発行された公開特許公報から小規模発電に関する公報を検索し、ノイズ公報を除去し、未発行の予想分を追加した公報2,604件を分析対象公報とした。
小規模発電に関する過去の出願を調べ、現在どのような状況にあるのか、近い将来の技術動向はどのようになりそうかなどを調べたが、分析結果の注目部分をまとめると次のようになる。
この小規模発電に関する分析対象公報の発行件数は増減しているが、2015年発行分で急減した後は概ね横這い傾向を示している。
出願人数や発明者数も増減しているが、最終年の2017年発行分では横這い傾向にあると思われる。
出願人別で見ると、第1位は本田技研工業であり、以下、トヨタ自動車、ヤンマー、東芝、三菱重工業、日本車輌製造、クボタ、SUBARU、日立製作所、パナソニックと続いている
特筆すべき点は、出願人が自動車メーカー、農業機械メーカー、家電メーカーに偏っていることである。
また上位10社で26.0%を占めているに過ぎず、小電力発電技術は多数の出願人に分散しているようである。
その中では、特に日本車輌製造、日立製作所が重要と思われる。
新規参入企業としては次の出願人の評価が高かった。
JFEスチール株式会社
所定条件を満たす重要メイングループは以下のとおり。
F03B13/00:特殊用途のための機械または機関の適用;駆動するかまたは駆動される装置と機械または機関の組み合わせ ;原動所または動力集合体
H02P9/00:所望出力を得るための発電機制御装置
特に重要と思われる発電方式が無かったので、発電方式毎にサンプル公報を抽出し内容を確認したが、その結果は以下のとおり。
[A:光発電]
太陽光発電から抽出したサンプル公報には、電力融通、接続箱、配電盤、モニター装置など太陽光パネル以外の出願と、エンジン発電機、燃料使用型発電装置との併用が含まれていた。
[B:水力・浮力・波力発電]
水力発電から抽出したサンプル公報には、低落差対策、ゴミや異物に対する保守、揚水発電(サイフォン式)が含まれていた。
[C:風力発電]
抽出したサンプル公報には、翼構造の改良、回転電機や力変換装置の小型化、複数の小型風力発電機の組合せ使用、強風時や微風時の対策、電力の融通などが含まれていた。
[D01:熱電発電]
抽出したサンプル公報では、特に動車用と製鉄所用が多かった。また、1社を除けばデンソーとJFEスチールからの出願であった。
[D02:地熱発電]
抽出したサンプル公報には、地熱取り出しの効率化、腐食対策などが含まれていた
[D03:排熱発電]
抽出したサンプル公報には、有害物質の除去、腐食対策、流量の安定化、瞬停対策などが含まれていた。また、IHIからの出願が多かった。
[E:バイオ発電]
抽出したサンプル公報には、燃焼効率の改善、木質系燃料の利用、バイオマス燃料の多様化、余分な発生ガスの対策などが含まれていた。
[F:燃料電池]
抽出したサンプル公報には、燃料電池の小型化・カートリッジ化、コージェネレーションシステムでの利用、燃料、空気又は水などの流路の改良、冷却方法の改良などが含まれていた。
[H:エンジン発電]
抽出したサンプル公報には、排気系の冷却、未燃焼燃料やカーボンの貯留防止、燃焼の安定化、過熱を防止、凍結防止などが含まれていた。
[I:圧電発電]
抽出したサンプル公報には、発電効率の向上、歩行や走行による発電、破損や形状変化の防止、設置自由度の向上などが含まれていた。
[K:磁力発電]
抽出したサンプル公報には、振動による発電、耐久性の向上、変換効率の向上、衝突音の抑制などが含まれていた。また、住友理工と富士電機からの出願が多かった。
これらの分析結果を総合すると、小規模発電に関する技術は全体としては横這い傾向であり、当面は不活発なようである。
ただし、熱電発電、排熱発電、磁力発電については特定の企業からの出願が集中しているので、多少は増加するかも知れない。
また、水力発電、風力発電、地熱発電、バイオ発電、エンジン発電などは自家用発電を意図し、熱電発電、排熱発電は省エネを意図し、圧電発電、磁力発電は携帯用機器や非常用機器の電池の代用を意図しているようである
なお、この調査はほとんどがプログラム処理による簡易的なものであるので、さらに精度の高い分析が必要であれば、特許調査会社の専門家による検索式作成と全件目視チェックによる分析を依頼されたい(ただし数百万円と数ヶ月の期間が必要となることがあるが)。
※ 作成した図表は14図と15表