1.調査テーマ
再生可能エネルギーによる発電技術の出願動向調査
2.調査目的
2011年3月11日の原発事故以来、再生可能エネルギーが注目されていたので、2013年に再生可能エネルギーによる発電技術(以下、再生エネ発電ともいう)のうち、どのような技術が増加しているか、注力している企業はどこかなどの出願動向を調べたが、その時点では太陽光発電が急増していた。
しかし、最近は再生可能エネルギーによる発電が話題にならないようである。
そこで、今回は再生可能エネルギーによる発電技術に関する公報発行がその後どのように変化したのかを確認することとした。
3.調査対象
使用DB :SRPARTNER
対象公報:公開特許公報
対象期間:2011年1月1日〜2016月12月31日に発行されたもの
対象技術 : 再生エネ発電のうち、予備調査で判明した下記8種類の発電方式
太陽光発電
太陽熱発電
風力発電
波力・海流発電
地熱発電
バイオ・廃棄物発電
廃熱発電
水力発電
4.概要
再生エネ発電に関する発行公報は2013年までは増加傾向であったが、2013年から急速に減少している。
太陽光発電が最も発行件数が多いが、急速に減少している。
次に多い風力発電も減少傾向にある。
その他は横這い傾向であった。
発明者も全体的に減少傾向であり、急増していたシャープの発明者人口も2013年から急減している。
ただし、東芝だけは最終年で増加傾向に転じている。
このように、再生可能エネルギーについては太陽光発電や風力発電が中心であるが、公報で見る限り、太陽光発電と風力発電を含めて全体としては減少傾向であり、今後、各社が技術開発に注力するようには見えない。
ただし、件数は少なかったものの、最終年では地熱発電、バイオ・廃棄物発電、廃熱発電は増加傾向を示していた。
そこで、地熱発電、バイオ・廃棄物発電、廃熱発電について主要課題と新規技術を調べたが、その結果は以下のとおり。
(1) 地熱発電の主要課題と新規技術
重要課題としては「有効利用」が抽出されたが、平均以上に増加しているものとして、「発電量増大」、「温度変化抑制」が抽出された。
抽出された新規技術の技術内容は以下のとおり。
・不凝結ガス中の硫化水素処理装置及びそれを備えた地熱発電システム、硫化水素処理方法
・再生可能エネルギー(地熱等々)を複合的に用いた水(蒸気)の循環式複合発電システム
・連続での蒸気監視を可能にするために、蒸気中硫黄化合物のS2-イオンを除去し、分析の妨害をなくし、さらに人手によらないモニタリングを実現するための地熱発電用蒸気性状監視装置
・酸化剤を供給して、酸性側とし、前記蒸気系統中のスケールの析出を防止することを特徴とする地熱発電システムのスケール防止方法
・風力、水力、波力、地熱、重力等例えば火山の噴出ガスから大気圧よりも高いエネルギーを取得し、圧縮によるエネルギー保存を活用し、貯蔵されたエネルギーを変換有効活用することによって、電力または機械的エネルギーに変換する空油圧変換発電装置
・地熱水を用いて発電を行う地熱発電に於けるカルシウムやシリカを含むスケールの抑制剤
・スケール,腐食,磨食等の発生が抑制され、第設備コストが低減されると共に発電効率が向上する地熱発電システム
・多量の地熱を長期安定的に抽出して利用できる地熱抽出の促進方法と、当該地熱抽出促進方法を応用した閉ループ循環型の地熱発電システム
・二酸化炭素ベースの強化地熱エネルギー発電システム
・廃熱と地熱の利用のための方法および熱機関
(2) バイオ・廃棄物発電の主要課題と新規技術
平均値以上に増加している課題としては「コスト削減」が抽出された。
抽出された新規技術の技術内容は以下のとおり。
・アンモニアを含む種々のバイオガスに適用できるとともに、処理システムにおける各装置の能力を最大限に発揮させることができる、ガス分解発電システム
・森林バイオマス、木材瓦礫や農業廃棄物の熱分解ガス化炉で生成するチャーなどの固形物とタール成分を低減してディーゼル発電機用のガス燃料やエタノール燃料の原料となる改質ガスの生成収率とガス化変換効率を向上するバイオマスの熱分解ガス化炉および触媒改質方法
・焼却炉においてゴミを焼却する際に発生する熱を利用して電力を効率的に取得する発電システム
・統合型エネルギー供給、貯蔵設備、広域制御システムを用いた5効用発電多サイクルハイブリッド再生可能エネルギーシステム
・燃焼効率の安定化や向上を図るためのバイオマス燃料の混焼方法
・バイオマス発電用木質チップ乾燥装置
・太陽光または風力を利用した発電により短周期変動をする発電電力を平滑化する平滑化システム
・パーム油を精製する過程で発生するパーム脂肪酸留出物(PFAD)をそのままバイオディーゼル燃料として用いることができる新規なバイオディーゼル発電装置
・水分の多い木質バイオマス等を燃料とする比較的小規模の発電においても熱効率の高い間接加熱ガスタービンエンジン
・太陽エネルギ・バイオマスエネルギ補完的熱パワーシステム
(3) 廃熱発電の主要課題と新規技術
重要課題としては「供給適切化」が抽出されたが、平均値以上に増加している課題として「制御適切化」、「エネルギ消費抑制」、「省エネ」、「簡単化」、「小型化」なども抽出された。
抽出された新規技術の技術内容は以下のとおり。
・排ガス発電浄化システム
・排ガス中に含まれる硫黄酸化物を好適に除去することができ、装置の耐久性を高くできる排ガス処理設備およびこれを用いるガスタービン発電システム
・下水処理施設からの汚泥や、食品廃棄物などの有機性廃棄物を焼却やガス化処理するプラント
・焼却炉においてゴミを焼却する際に発生する熱を利用して電力を効率的に取得する発電システム
・排熱回収装置および熱電発電装置を統合し、始動時から過負荷走行時まで活用可能な車両の排熱活用システム
・潜熱循環を特徴とする発電効率の飛躍的向上システム
・吸着剤を用いてコージェネレーション装置から排出される排ガスの二酸化炭素を回収して植物栽培施設に供給すると共に、吸着剤の吸着性能の低下を防止する二酸化炭素回収装置
・CO2回収プラントを伴う複合サイクル発電プラント
・中低温廃熱を活用した暖房熱源または電気生産システム
※ 作成した図表は17図と13表