1.調査テーマ
電気自動車関連技術の出願動向
2.調査目的
日本経済新聞の2017年6月9日付けのニュースでは、電気自動車(EV)などの世界累計販売台数が2016年に約200万台に達し、特に中国の伸びが大きく、米国を抜いてEVの世界シェアトップに躍り出たと報道されていた。
自動車は日本の稼ぎ頭の1つであるので、当然、日本特許の出願動向も上昇していると予想しているが、どこがどのような技術に注力しているか、今後どのような技術が伸びそうかなどが気になってきた。
そこで、今回は電気自動車関連技術に関する技術開発がどのように推移しているか、今後の動向はどうなりそうかなどを調べることとした。
3.調査対象
使用DB :SRPARTNER
対象公報:公開特許公報
対象期間:2011月1月1日〜2016月12月31日の発行
対象技術 : 電気自動車関連技術に関連する技術全般
4.概要
電気自動車に関する技術開発がどのように推移しているか、今後の動向はどうなりそうかなどを調べたが、分析結果の注目部分をまとめると次のようになる。
まず、電気自動車に関する分析対象公報の発行件数は、2013年をピークとして減少傾向を示している。
出願人数や発明者数も同様に減少傾向を示している。
ただし、発明者人口は最終年の2016年に増加している企業が有った。
出願人別で見るとトヨタ自動車が目立っていたが、減少傾向を示している点では他の出願人と変わらない。
技術としては、車両制御、車体構造、課金・取引、設備、二次電池、電力制御、保護・保守、その他の関連技術に分けて分析したが、いずれも減少傾向を示していた。
ただし、以下のように部分的には増加傾向に転じたものも見られた。
[車両制御]トヨタ自動車名義の公報は増減していたが、最終年の2016年では増加傾向を示している。
[課金・取引]課金と請求については最終年の2016年に増加傾向を示している。出願人数と発明者数はも最終年の2016年では増加傾向を示している。
[設備]デンソーと日産自動車は最終年の2016年に増加傾向を示している。
[保護・保守]日産自動車名義の発行公報は最終年の2016年に急増している。
上位5社の出願技術の特徴を分析した結果によれば、発行件数が多い技術分野はほとんど同じであるが、あえて各社特有の技術を抽出すると以下のようになった。
[トヨタ自動車株式会社]
概観すると、回収制動、車両外部との通信、充電用ケーブルなど、全方位的である。
[株式会社豊田自動織機]
総じて通信機能とバッテリ性能の改善である。
[日産自動車株式会社]
概観すると、走行安定性の改善、潤滑不良防止などが多いが、その他も有り、全方位的である。
[本田技研工業株式会社]
総じて快適性の向上である。
[三菱自動車工業株式会社]
総じてバッテリ搭載構造である。
総括すると、2016年発行までの公報で見る限り、予想に反し日本では電気自動車関連の発行公報は減少傾向を示していた。
この様子では米国や中国との比較ではかなり差がついていると思われるので、電気自動車では遅れをとるのではないかと危惧している。
今後、電気自動車が伸びていく可能性は高いと思われるので、日本企業の出願が増加するか出願動向を見ていきたい。
※作成した図表は97図と第20表