1.調査テーマ
野菜類工場の出願動向
2.調査目的
このところ、葉もの野菜の高騰が続いている。
世界的にも食料問題が取りざたされている。
その一方で、洗わずに食べられる、安心、安全な野菜を工場やレストランで生産することも実用化されている。
そこで、今回は、野菜、果物、穀物など(以下、野菜類という)を工業的に生産する技術を分析し、野菜類の工業的生産にどのような技術が関係しているか、現在どのような技術に注力し、近い将来にどのような技術が伸びそうかなど、技術開発の現況および今後の動向について調べることとした。
3.調査対象
使用DB : SRPARTNER
対象公報: 公開特許公報
対象期間: 1997月1月1日〜2017年12月31日の発行
対象技術 : 野菜類の工業的生産技術
作成した図表は35図と35表
4.総評
野菜類工場に関する過去の出願を調べ、現在どのような状況にあるのか、近い将来の技術動向はどのようになりそうかなどを調べたが、分析結果の注目部分をまとめると次のようになる。
野菜類工場に関する公報は1972年から発行されていたが、今回は急増していた1997年以降に発行された公報を分析対象とした。
この分析対象公報の発行件数は増減していたが、2010年からは概ね増加傾向を示しており、最終年には急増している。
出願人数や発明者数も増減しながら増加傾向を示しており、最終年でも増加している。
出願人別で見ると、第1位はパナソニックIPマネジメントであり、以下、生物機能工学研究所、椿本チエイン、昭和電工、大和ハウス工業、井関農機、シャープ、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、シャープライフサイエンス、福岡丸本と続いている
特筆すべき点は、昭和電工、シャープなど家電メーカーの参入が目立つことである。
また上位10社で12.9 %を占めているに過ぎず、野菜類工場に関する技術は多数の出願人に分散しているようである。
所定条件を満たす重要出願人は次のとおり。
パナソニックIPマネジメント株式会社
サンプル公報を見ると、植物栽培における空調装置、低カリウム野菜の養液栽培方法、水分量観察装置、植物成長促進装置などに注力しているようである。
IPCのメイングループの出現頻度を集計した結果を見ると、次のメイングループが重要として抽出された。
A01G1/00:園芸;野菜の栽培
A01G7/00:植物の生態一般
A01G9/00:容器,温床または温室での花,野菜または稲の栽培
A01G31/00:水耕栽培;土なし栽培
当方で公報にコードを付与し、コード別・年別に集計した結果を見ると、多くのコードは横這い傾向を示していたが、増加傾向などから次のコードが重要と判定された。
A01:養液調整
A02:栽培床への給排水、水位調節
C01:移動式栽培
C03:傾斜栽培
F03:照明調整
L01:野菜
EXCELマクロで機械的に抽出した課題を集計した結果を見ると、次の課題が重視されているようである。
効率向上
コスト削減
品質向上
設置容易化
管理容易化
安全性向上
調整容易性
これらの分析結果を総合すると、野菜類工場に関する技術は古くから有ったが、家電メーカーなどの異業種からの参入が増加し、2011年発行分から増加傾向が続いている。
技術的には養液調整、給排水、水位調節、照明調整、移動式栽培などに注力しており、課題としては効率向上やコスト削減が中心であると思われる。
しかし、まだICTの利用は少なく、産業として発展するためには製造・流通・販売などで更なる技術開発が必要であると思われる。
なお、この調査はほとんどがプログラム処理による簡易的なものであるので、さらに精度の高い分析が必要であれば、特許調査会社の専門家による検索式作成と全件目視チェックによる分析を依頼されたい(ただし数百万円と数ヶ月の期間が必要となることがあるが)。