1.調査テーマ
車両自動運転技術の出願動向
2.調査目的
7月28日のニュースで、ドイツのアウディが来年からレベル3(条件付自動運転)の自動運転車両を販売すると報じていた。
関連するテーマとして自動車安全化技術については本年1月29日付けで「自動車安全化技術の出願動向調査2017版」を作成し発表しているが、自動運転だけに絞り込んだ分析が無かったので、あらためて自動運転について調べることとした。
3.調査対象
使用DB :SRPARTNER
対象公報:公開特許公報
対象期間:2011月1月1日〜2016月12月31日の発行
対象技術 : 車両自動運転技術
4.概要
車両の自動運転を実現するためにどのような対策技術が出願されているか、どこから出願されているかを調べたが、分析結果の注目部分をまとめると次のようになる。
自動運転に関する分析対象公報の発行件数は、横這い傾向が続いていたが、2015年発行分から増加傾向を示している。
出願人数や発明者数もほぼ同様の傾向を示している。
出願人別で見ると、トヨタ自動車、デンソー、日産自動車、本田技研工業、SUBARU、ジェイテクト、三菱電機、三菱自動車工業、スズキ、マツダの発行件数が多かった。
この上位10社で58.8 %を占めており、自動運転技術は少数の出願人に集中しているようである。
特に、トヨタ自動車、デンソーが重要と思われる。
技術コード別に見ると、次の技術が重要と思われる。
[A:自動運転全般]
A03 :・自動・手動の運転モード選択
A05G:・・経路生成
A05H:・・ルート設定
[B:走行一般制御]
B03:・操舵支援
[C:走行環境認識]
C01:・周辺監視
C04:・障害物検知・回避
C05:・他車検知
C05H:・・先行車検知
[D:緊急対応制御]
D03 :・衝突回避
D03A:・・衝突判定
[E:運転者・同乗者のための走行制御]
E03B:・・安心感
[G:情報提示]
G02:・注意喚起
[H:情報交換]
H04A:・・走行支援情報の通信
H04B:・・位置情報の通信
課題としては運転支援が中心であるが、精度向上、制御適切化などにも注力しているようである。
重要課題としては、運転支援、安全性向上、制御適切化、精度向上、支援可能、違和感軽減が抽出された。
新規技術のサンプル公報からは以下のような発明が抽出された。
・超音波センサにより物体高さのレベル判定を行ない、物体が高いと判定した場合には、ブレーキ制御を実施し、低いと判定した場合には、車両制御を実施しない。
・車両操縦用アプリケーション(VMA)メモリ内にインストールする。
総括すると、トヨタ自動車、デンソーはいち早く自動運転に注力していたが、その他は出遅れたようである。
自動運転に必要な技術は広範囲に及ぶため今後も開発すべき技術は多いが、現状では高速道路のような特定区間において、渋滞防止のための追従走行、省力化のための隊列走行などを正確に制御するとことが重要と思われる。特に車線変更や、合流・分岐はまだ課題が残っていると思われる。
次のステップは一般道路での自動運転であるが、こちらは解決すべき課題が多すぎるため1社で取り組むのでは無駄が多くかつ遅すぎる。遅れを取り戻すためにも全日本で取り組むべきであると思われる。
なお、この調査はほとんどがプログラム処理による簡易的なものであるので、さらに精度の高い分析が必要であれば、特許調査会社の専門家による検索式作成と全件目視チェックによる分析を依頼されたい(ただし数百万円と数ヶ月の期間が必要となることがあるが)。
※ 作成した図表は86図と12表