令和3年度学位授与式 式辞

本日、晴れて博士、修士及び学士の学位を授与された皆さん、ご卒業おめでとうございます。ご家族の皆様にも心からお慶びを申し上げます。昨年同様に、今年度の学位授与式も新型コロナウイルスの感染拡大防止を最優先に考え、式典の規模を縮小し、卒業生の皆様、柴橋正直岐阜市長様をはじめとする来賓の方々並びに一部の教職員のみで執り行うことと致しました。大変申し訳ございませんが、感染拡大を防止するための止むを得ない措置でありますこと、ご理解を賜りたいと思います。

新型コロナウイルスの感染拡大は、2年ほど前から始まり現在も続いております。本日卒業される皆さんは、オンライン授業への切り替えなどで通常の授業とは異なる方法での学業の継続に苦労が多かったかと思います。さらに、クラブ活動、県人会や同門会、研究室の各種行事などあらゆるものが中止になり厳しい状態が続きました。皆さんが本学で学んだ最後の2年間にこのような事態になったことは本当に残念ですが、この幾多の困難に耐え忍んで、学問を続け、友情を温め合って今日を迎えることが出来ましたことに心より敬意を表したいと思います。

コロナ禍で学んだ3つの大切な事

私たちはこの2年間、新型コロナウイルスの感染に振り回されてきましたが、その中でも失ったことも多々ある中で、学んだ大切なこともあります。まず1つ目は、友達や先輩、先生、家族などの他者の存在です。今までは当たり前に会えていたことが、会うことを制限されました。夜遅くまで語り合うことや酒を酌み交わすことなどが極端に少なくなりました。私たちは社会の中で生きています。他者と切磋琢磨して教えたり教えられたり、ある時はぶつかり合ったり、反省したり、尊敬したりして生きています。お互いに自らを成長させているのです。このように他者との関係が人として大切なことを改めて知ることが出来ました。

2つ目は、エッセンシャルワーカーの存在です。エッセンシャルワーカーとは、例えば医師・薬剤師・看護師に代表される「医療従事者」、市役所や保健所に勤める保健師・生活相談や介護・福祉等の分野で働く方々、保育士や学校教員、社会インフラに関係するような職業・仕事などをされている、我々の生活基盤を支えてくださる方々のことです。このコロナ禍の中、エッセンシャルワーカーの存在なくして乗り切ることはできませんでした。私たちは、身を挺してこれらの仕事をされている方々に敬意を表したいと思います。皆さんはまさにこのエッセンシャルワーカーの一人として、今後働かれる方が多いと思います。

3つ目は、コロナワクチンの開発です。新型コロナウイルス感染症が大きな問題となって1年以内に製薬会社は、このワクチンの開発に成功しました。このワクチンの存在は、コロナ禍に大きく貢献して、重症化や死者を劇的に抑えることが出来ています。この分野に大きくかかわっているのは創薬研究者と臨床試験に従事する医師や薬剤師などです。コロナワクチンが現時点に存在しないことを想像すると恐ろしくなりますので、ワクチンの開発はこの人類にとって救世主といっても過言ではないと思います。以上のように、このコロナ禍によって、私たちは医療や創薬・医薬品開発の重要性を知ることが出来ました。皆さんの中にも、今後、創薬研究や医薬品開発の分野に就職される方も多いと思います。まさに薬を開発することは、「究極の人類貢献」につながることになりますので、今あるコロナワクチンを凌駕するような画期的な新薬を是非作ってほしいと願っております。

本学の伝統・理念・そして将来への発展

本学は、世界大恐慌の中、1932年に本学の前身である岐阜薬学専門学校が創立されました。当時の松尾国松岐阜市長は「産業上直接利用し得る実業教育機関」として、国民の保健衛生及び化学工業界の発展に寄与し得る学問として薬学に着目し、設立に至りました。その建学の精神は受け継がれ、現在は「ヒトと環境に優しい薬学(グリーンファーマシー)に基づいて、教育研究、地域貢献を行い、専門職業人を養成する」という本学の理念となっています。この理念は設立以来90年間という長きにわたって教職員並びに諸先輩方が努力を重ね、育み守られてきました。その間1万3千有余人の岐阜薬卒業生は、本学で学んだことを活かして、医療の現場で粉骨砕身頑張ってこられ、現在の岐阜薬科大学があります。私たちは、この伝統を堅持しつつ、将来への発展を目指していくことが求められていると思います。

With CoronaからAfter Corona、そしてコロナを飛び越えたBeyond Coronaの時代を描いてほしいと思います。一人ひとりの思いや行動、その一滴一滴のしずくが集まれば、大きな流れになり、新しい時代を切り拓くことができます。その将来を皆さんの若い力と思いで築いてほしいと願っております。卒業される皆さんは、医療分野に主に就職されるわけですが、医療に貢献している、人類の生存にかかわっている仕事に就くのだという自信と自覚を持ってください。まさに皆さんの一人ひとりの力が、これからの世界を発展させるのです。

最後に

最後になりますが、皆さんをこれまで支えてくださったご家族、教職員の方々、先輩、友人などに改めて感謝をして、次の世界は皆さんが作るのだという夢と希望をもって卒業してください。皆さんがこれから幾多の困難を乗り越えて、よい人間関係を築いて、豊かな人生を送られることを祈念して、お祝いの言葉と致します。

本日は、ご卒業おめでとうございます。

令和4年3月12日           

岐阜薬科大学学長  原 英彰