東工大初の女性学院長 近藤科江先生との座談会

~やりたいことをがむしゃらに ~

奈良工業高等専門学校 校長、東京工業大学 特定教授・名誉教授 近藤 科江 先生(岐阜薬科大学 第29回卒業)の特別講演会が本学で開催されました。この講演会に先立ち、近藤先生と座談会が実施されました。 

参加者:

ちらし_近藤先生20240117.pdf

学長:本日は奈良工業高等専門学校 校長、東京工業大学 特定教授・名誉教授の近藤 科江先生をお迎えしました。近藤先生は、東京工業大学生命工学院学院長として大学の運営にも尽力されました。そこで今回は、本学卒業生である近藤先生から在学生に対してメッセージをいただければと思います。先生は、本学の薬理学研究室のご出身で、その後アメリカに留学されていますね。その時のお気持ちなどをお聞かせください。

きっかけは交通事故!

近藤先生:研究に対する熱意を持ったきっかけは、1回生の時に遭った交通事故が要因でした。その時に入院した病棟で、リウマチ患者に会って、かなり悲惨な疾患であることを知り、薬で治したいと強く思いました。その研究に対する熱意を持って、薬理学研究室に研究室に入りました。その時代の日本における進学や就職の道に強い不安を感じましたので、留学をして見聞を広げたいと考えました。

 

学長:留学資金や準備はどのように進めたのでしょうか。

 

近藤先生:インターネットもない時代なので、関連書籍などを参考に自分で考えました。留学資金はある財団を頼り、それと同時に海外の大学院留学に必要なテストであるTOEFLやGREを受けるために東京まで行ってまた戻ってくるという生活を何度か繰り返しました。留学先では、単位を取るのが大変で苦労もしましたが、修士号を無事取得しました。その後、日本に戻り、大阪大学大学院で博士の学位を取得し、ポスドクや特任教員の経験を経て東工大の教授へ着任しました。また、2019年から2021年には、東工大の130年の歴史上のなかで女性初となる学院長を務めました。

女性研究者を取り巻く環境の変遷について

学長:学生時代から今日までの先生のキャリアパスの経験の中で、ダイバーシティの意識をどのように持たれていたでしょうか。

 

近藤先生:工学部はやはり学生・教員ともに女性が少ないです。特に、生命理工学院で初めての女性教授でしたので、女性教授がいる環境に対して周りも経験がなく皆戸惑っているように思いました。


学長:現在はどうでしょうか?

 

永澤先生:東工大では、近藤先生が学院長を務められた2年間に、女性教授、准教授あわせて5人が増員されているそうですが、どのように取り組まれたのでしょうか?。

 

近藤先生:生命理工学院では、女子学生は23%を超えています。やはり女子学生を増やしたいのであれば、女性教員を増やすべきだと女性限定公募を学長に進言しました。また、大学入試においても、明確に「女性枠」の導入を提案しました(実際に2024年4月入学の学士課程入試から開始)。


学長:最近では女子学生が増えたのではないのでしょうか?

 

近藤先生:まだ東工大全体では平均10-15%に留まっていますが、色々な学科で女性が増えてきています。将来的には30%程度を目標にして「女子枠」を全学院入試で導入する予定になっています。

これまでのモットーと、これからのビジョン

永澤先生:先生がこれまで、様々な困難をのりこえてこられたエネルギーの源は何でしょうか。

 

近藤先生:小さい頃から自分のやりたいことに挑戦してきました。また、親の転勤が多く、教科書通りに勉強できなかったので独学で勉強せざるを得ませんでした。そうやって自分の中で積み上げてきたものを大事にしたいと考えてきたので、途中で投げ出すという発想は基本的にないですね。

 

学長:今後のビジョンなどはありますでしょうか。

 

近藤先生:今は、奈良工業高等専門学校で電気や機械系などのエンジニア育成に関する教育を行っており、学生は勉強・実習だけでなく様々なコンテストに参加する機会があります。コンテストを通じて、学生の発想力や独創性の成長支援など、これまでの自分の経験や体験を次世代に伝えていきたいと思っています。

 

最後に、学生へのメッセージを

学長:他に何か学生へのメッセージはあるでしょうか。

 

近藤先生:今はかなり様々な面で環境に恵まれているのではないかと思います。貪欲にやりたいことをがむしゃらにやってほしいと思います。失敗しても、人生の汚点になるわけでも、道がなくなるわけでもありません。チャレンジし続けてほしいと思います。

 

学長:中外製薬の奥田社長も早期に留学していました。やはり、早い時期の挑戦が重要なのだろうと考えています。(参考:奥田社長との座談会

 

近藤先生:アメリカを含む海外では、自分の考えがないと周りに振り回されて終わってしまいます。今後皆さんがリーダーシップを取る人材になるためには、それを早めに理解し意識することが大事だと思います。


学長:本日は、学生にとって今後の大学生活の励みとなるメッセージをいただきありがとうございました。