米帝のDPRK(朝鮮)テロ支援国指定解除に関する私見

鄭 源作

 

アメリカはイスラム諸国民から大悪魔と名指しされた国だ。

この認識は正しいと思う、私も同感している。というのは、アメリカは「朝鮮民族の奴隷状態に留意し日本敗戦後朝鮮を独立させる」というカイロ宣言を遵守せずに不法にもわが国朝鮮南部を占領し軍事基地を設置した。わが国のみならず周辺諸国を挑発し威圧してきた戦争国家である。

アメリカは年70兆円(軍事専門家によればその2倍以上)の軍事予算を持つ超大国である。残念ながらアメリカに勝てる国はないと思われている。その超大国(猛獣)にわが国はがっぷり咬まれたまま今日まで至っているのだ。今回のテロ支援国指定解除は端緒についたばかりで先は長い。段階を越えるハードルは多く、アメリカはどんな言いがかりをつけて無にするかは不明である。だがいずれにしても緊張緩和は良いことだ。このまま順調に休戦協定から平和協定、国交正常化へと進んでくれることを願っている。

 ところで、この『朝米』和解を何とかして阻もうとする者がいる、日本だ。朝鮮にとって、日本は140年間、現在に至るまで良好な関係を築けなかった不道徳の国だ。日本とは将来にわたって平和な隣人として存在可能かどうか疑わしい、難しいと私は思う。

 

安倍晋三氏が簡単に首相になれたのは、偶然でも何でもない。多数の好戦的な日本人の心性にかつがれたからなのだ。

 和田春樹「拉致問題—解決への道」(『世界07年4月別冊号』に依れば—————安倍晋三氏は拉致問題という十字架を背負った政治家である。終始一貫北朝鮮への「圧力」を主張して、国民の人気を得て首相の座を射止めた。一昨年十月「拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はありえないということ」を再確認した。まとめれば被害者全員の生還実現、制裁の強化拡大である。この方針のどこにも国交正常化交渉のかけらも無い。2006年11月14日自民党の政調会に拉致問題対策特命委員会が設置され、委員長に中川昭一氏がなった。同氏は「拉致問題は何も解決していない、残り数百人を返して初めて北朝鮮との対話がある」と言っている。

 

これは大ペテンだ、はじめから朝鮮をだまし討ちしたようなものだ。何のために朝鮮へ行き平壌宣言を締結したのか。安倍氏は小泉元首相と平壌に同行し、平壌宣言締結に関与した主要当事者の一人だ。

同宣言第一項には、国交正常化を早期に実現させるためにあらゆる努力を傾注することとし、そのために2002年10月中に朝•日国交正常化交渉を再開することとした。このように国交正常化交渉が『優先課題』であることは、この文面から充分読み取れるだろう。ところがどうだ、どっから見ても日本側がこの宣言に違反していることは明白だ。この6年間何らの進展もなかったではないか。

安倍前首相は「DPRK(朝鮮)テロ支援国指定解除」をブッシュ大統領から告げられショックを受け、先手を打って首相職を投げた。

 

拉致問題対策本部は、2007年度予算案で4億8000万円を計上し、その内訳は朝鮮放送関連に1億3400万円、特定失踪者問題調査会の短波放送に1億1700万円、安否情報収集体制強化のために8100万円などである。北朝鮮向け放送は、方針が決まっていないままの予算計上とされている(和田春樹氏前掲論文「拉致問題—解決への道」より)。

この予算以外にも莫大な寄付金が集まっていると聞いている。拉致問題対策本部の主要メンバーの某氏が多額資金使途不明事件の被疑者として立件される寸前迄なった。今や拉致事件は、豊富な資金をまわせるビジネス的な観を呈している。拉致被害者が帰国して数年以上経過したが、その後、彼、彼女からは何らかの発言を聞いたことがない。帰国した5人は政府当局者と警察庁その他関係者に対し詳しい情報を提供している筈だ。しかしこの情報は、隠されて出されていない。

つまり朝鮮が発表した死亡を認めてしまうことは、とりもなおさず予算執行が停止されるか、または縮小されるだろう。

拉致問題は被害者家族の願望から逸れて拉致ビジネスに転化した感も否めないのだ(和田春樹氏)。

テレビをつけるとニュース、時事問題で頻繁に出てくるのが拉致事件である。コメンテーターが威勢よく捲し立てる。その姿は生き生きとし楽しそうに見える。拉致問題が唯一、正しい国だと吹聴するのに丁度よい格好のネタになっているのだ。

そこで言われている『制裁』、『圧力』とは、どういうことなのか。

朝日新聞コラム(2007、3/5)–安倍政権の空気。戻った家族、戻らぬ家族 蓮池透氏が語るー「私たちは、純粋に家族を救いたいという一心でやってきた。救出を願っているのであって、拉致報復とか勘違いされるのは困るんです。何か利用しょうという人達がいるのは残念です。」

この蓮池透氏の発言によれば、蓮池氏自身は純粋な気持ちで取組んでいるつもりだろうが、実際の行動は報復行為になっているのではないか。自分の子供が敵地の手にあるのに『制裁』『宣戦布告』せよとの要求は、人間として、肉親としては尚更、正常な精神じゃありません。常識はずれで狂気じみています。政府の方針がそうであっても話し合ってほしいと思うのが普通じゃないでしょうか。アメリカやロシアの悲惨な事例(脚注1)を見ればわかるでしょう。仮に相手に攻撃を加えた場合、もし生存者の子供が居ればいっしょに死ぬのは明らかです。子供が帰って来ようが帰って来られなくともどうでもいいというのが拉致被害者家族と日本国民の本心だというのでしょうか?拉致被害者家族が望んでいる解決とは何か、報復して朝鮮人の血を見たいと叫んでいるとしか思えません。朝鮮叩きが日本国民の心の御馳走になっているのでしょうか。

(脚注1)アメリカのバス、電車その他で人質を取り立て籠る事件が数多くあるが、そのとき武装警官の実力行使で人質が犠牲になっている痛ましいニュースが報じられている。また旧ソ連崩壊時のチェチェン分離独立戦争で、チェチェン人の抵抗組織がロシア側に捕まった仲間の釈放を要求し人質を取って立て籠ったとき、人質家族など関係者がロシア当局に話し合いによる解決を懇願したにも拘わらず当局の武力行使によって多くの人質が犠牲になった。

わが国による拉致事件を知った当初、私は日帝による植民地支配拉致を経験した者として、あり得ないことだと確信していたので強いショックを受けました。子を持つ親として被害者家族の方たちの悲しみと怒りを正当なものとして共有しました。

だがこの拉致事件を国家が犯したということの背景を考える必要があります。カイロ宣言により宗主国日本のポッツダム宣言受諾は朝鮮人の奴隷状態からの解放でありましたが、日本帝国軍隊の管轄境界線たる北緯38度線を奇禍として朝鮮半島が南北分断されたこと、朝鮮民族•国土の分断直後の戦争、朝鮮戦争停戦後の米帝による敵性国家として脅威にさらせられ封じ込められ、ゲットー化されてきたこと。朝米間は停戦状態であって、今も戦争は終結していないこと。

そうした異常な国際環境の中で、この拉致事件が起きたのです。それは2002年9月小泉元首相が訪朝し結んだ朝日平壌宣言第3項に記載されているように「各国家間が不正常な関係にあったがために起った不幸な事件」なのです。このように拉致事件は本来純粋な人権問題として追求されるべき筈でした。

ところが朝鮮蔑視の感情が露骨にあらわれ、拉致フアシズムとなって燃えています。『制裁しろ』「圧力かけろ」の怒声は「やってしまえ」「殺してしまえ」「朝鮮人は殺してしまえ」の大合唱に聞こえます。もはや拉致問題は『制裁•圧力』を叫ぶことで人権問題から逸脱し、日本が主張できる正当性が失われたと断ぜざるを得ない。

拉致問題が人権問題から逸脱し拉致フアシズムに転化した以上、朝•日両国の罪科の質と量、大小、深刻さ等を比較しなければならなくなった。

日本は拉致問題を現在進行形の事件とまくしたてているが、日帝による朝鮮侵略•植民地支配もいまだに清算されておらず現在進行形なのだ。多くの日本人達が自国のやってきたことー19世紀、20世紀の所業を、21世紀に入っても何をしてきたのかをよく知らないだけなのだ。

「明治維新」近代が始まって今年で丁度140年間、自国が血まみれの国であること、日本が今経済大国としてあるのは隣国朝鮮を蹂躙して肥え太ったということ、日本が朝鮮の独立を奪い植民地支配し朝鮮民族の自由と人権を踏みにじり、搾取を欲しいままにした事実。それらの犯罪の清算がなされていないことこそが、現在進行形で、未解決の問題として残されたままなのです。

日本の植民地支配という巨大な犯罪と朝鮮の拉致犯罪は比べようがないほどなのです。

多くの日本人が植民地支配の痛みが理解できないそうなので、一度他者への想像力を働かせられるように日本の植民地支配がいかに巨大な犯罪なのかについて述べてみよう。

『被植民地支配』ということは、主権を奪われることー国土、人、物すべて根こそぎ略奪され奴隷にされることなのです。それでは日本が行ってきた蛮行、犯罪行為について見てみよう。

日本の近代化•富国強兵の道は、朝鮮を侵略し植民地支配することから始まった。

 

●1875年9月20日日本軍艦雲揚号がソウルの玄関口にあたる江華島へ奇襲攻撃し、つづけて隣の永宗島にも攻撃を加え朝鮮側に35人の死者を出させ大砲8門を奪った。

 

●1876年2月27日、日本は6隻の艦船の威嚇のもとに日朝修好条規(江華条約)を締結さした。勿論一方的な不平等条約であってその内容を見ると、

第一に、日本人の朝鮮開港場に於ける治外法権を認めさせたこと。

第二に、日本の「諸貨幣」の朝鮮国内での流通を認めさせたこと。

第三に、朝鮮の関税自主権を認めないばかりか、日本との貿易に関してはすべての輸出入商品に関税をかけないと約束させたこと。

その上この条約の有効期限すら明記せず、「永遠に及ぼす」とされたのです。

植民地支配の初期においては御多分に漏れず侵略者は金の略奪から始めた。(その後朝鮮産出の金の流出は朝鮮の近代的貨幣制度確立を困難にする大きな原因になりました)朝鮮産の金を略奪したことによって日本の金本位制度が実施できたのです。大量に略奪されたものは金ばかりではなく、穀物(主に米)、文化財(現在もその大半は日本国内にある)も略奪された。

 

●1894年7月25日日本軍は、朝鮮支配権確立のため、二日前(7月23日)の朝鮮王宮占領に引き続いて、豊島沖の清国艦隊に奇襲攻撃をかけ勝利した後、朝鮮全羅道一帯の東学農民軍を攻撃し農民40万人を殺した。

 

●1895年10月明成皇后(閔妃)殺害事件

清日講和下関条約締結後、朝鮮で反日気勢がさらに高まった時、日本公使(三浦梧楼)の指揮のもとに日本の正規軍と警察そして「壮士」と呼ばれる日本人ゴロツキを動員し、王宮に押し入って国王の后である明成皇后(閔妃)を寝室で虐殺した。一国の王妃を、他国の公使が軍を動員して虐殺•焼却するという世界史上にも類例のない野蛮極まりのない蛮行をしたのだ。しかも日本政府は事件関係者を誰一人処罰しなかったばかりか(軍人は軍法会議で全員無罪にし)、三浦梧楼は形式裁判で起訴さえされず釈放され凱旋将軍のような扱いを受け、その他関係者等も“箔”をつけて立身出世しているのだ。

 

●1919年3月1日 『3•1運動』

「独立万歳」を叫び行進する朝鮮人総決起に驚いた日本は、本土から援軍を送り完全武装の軍隊と憲兵警察を使って、最初から発砲、抜剣して弾圧にのりだした。日本人居留民も鳶口や刀などの武器を手にして素手の朝鮮人に襲いかかった。ソウル郊外の水原里提岩里にある教会での虐殺は凄まじいものだった。37人の村人を小さな教会に閉じ込め、外から銃火を浴びせ、さらに教会を丸ごと焼いて一人残らず殺してしまったのだ。

死者7645人、負傷者45562人、投獄者49811人(高文研刊「未来をひらく歴史」77ページ)

 

●1923年9月1日 関東大震災

この大震災下に約7000人以上の朝鮮人が虐殺された。

地震による混乱のなかで、警察などが「朝鮮人が井戸に毒を投げた、暴動を起こそうとしている」とかの流言飛語をばらまき、内務省の指示を受けた県や市町村は自警団を組織し、日本刀、竹槍、鳶口,棍棒、ピストル、猟銃などで武装し、朝鮮人だと判断すると叩きのめして虐殺したのだ。しかし、この件で日本政府の公的な調査すらなされてないし、誰一人裁かれた者はいないのだ。

 

●1945年8月6日、8月9日 アメリカによる広島•長崎原爆投下。

原爆の閃光によって被爆死した住民は、広島で約14万人、長崎で約7万人になるが、そのなかに広島•長崎に強制連行され軍需工場で働かされていた者も含め広島•長崎居住の朝鮮人約7万人も被爆し広島で約3万人、長崎で約1万人の朝鮮人も被爆死した。

 

●1945年8月24日 舞鶴湾で浮島丸爆沈

海軍特別輸送船浮島丸が、青森県で飛行場建設などに動員された朝鮮人軍属や徴用工等3735人と旧海軍乗務員255人を乗せ、同県•大湊港から朝鮮釜山港に向けて出航。途中進路変更して舞鶴湾へ入港するや爆沈し、朝鮮人524人、日本人25人が死亡した(毎日新聞2003、5、31)。日本は未だに事件の調査もしないで、機雷に触れたと言い逃れするが舞鶴湾への寄港理由不明、船体爆破状態や乗務員家族の間に伝えられていた噂(火薬を積み込み爆破装置がセットされている)などから意図的に爆破されたと認識するのが常識であろう。

●1950年6月25日 朝鮮戦争

この戦争は何故起こったのか、米帝によって朝鮮が分断されたからだ。朝鮮分断の原因素地は日本の植民地支配にあるというのが多くの研究者の共通認識である。

日本の基地から爆撃機が飛び立ち、約400万人の朝鮮人が犠牲になった。日本はこの朝鮮戦争で米軍の武器の供給,兵器修理工場の役割をにない、兵員の休養、傷病兵の治療などあらゆる便宜をはかった。

朝鮮戦争は、アジア侵略太平洋戦争で壊滅した日本経済復興に劇的なカンフル剤となり日本繁栄の基礎となった(当時の日本工業総生産高の60%以上が朝鮮戦争特需だった)。

吉田茂元首相は語る。「朝鮮戦争は日本にとって神の恵み「天佑神助」だった」と。このときから、日本は世界一の戦争大国アメリカの手下となり、その見返りにアメリカ巨大市場の解放という優遇措置を受け経済大国になった。

 

●日本軍「慰安婦」問題は世界人権問題の主要テーマの一つだ。

うら若い15、16歳の娘たちが拉致され、日本帝国軍人の性の奴隷として陵辱されたこと、その人数たるや最小約10万人,最大約20万人と推計されている。慰安婦の大半は朝鮮人女性だった、

世界の戦争史にもない、軍隊が戦場に組織的に〈慰安所〉を設置したのだ。そのような恥ずべき歴史を日本は持っている。

現在国際社会において、20世紀における重大な人権侵害事件として位置づけられ、国連や欧米諸国その他多数の国々から日本に対し「元慰安婦」に対し謝罪と賠償を行い和解するよう勧告決議がなされている。毎水曜日、生き残った元慰安婦がソウル日本大使館前で抗議と謝罪要求デモを支援者と共にやっているが日本の政府、テレビ新聞などは報道すらせず無視している。

2008年5月国連人権理事会は全国連加盟国で初の対日作業部会が開かれた。各国からは「日本軍慰安婦」問題への誠実な対応を日本に求める声があいついだ。(5月15日共同通信)

 

●その他未解決の人権問題が多すぎるほどあります。

1.  徴用された朝鮮人給与未払い問題

2.  過酷な労働や拷問で死んだ朝鮮人の遺骨収集返還問題

3.  旧サハリンに置き去りにされた朝鮮人問題

4.  戦争犠牲者援護法から適用除外された旧日本軍朝鮮人軍属•軍人問題

5.  植民地支配によって略奪された朝鮮文化財返還問題

6.  所謂戦後も継続された日本政府の在日朝鮮人に対する差別同化政策よる人権侵害—基本的人権保障で国籍差別する同胞高齢者の無年金問題、同胞子女の民族教育権剥奪など。

7.  その他

以上、日本の国家犯罪たる「植民地支配」は、朝鮮の拉致犯罪とは比べようのないものなのだ。

ところがこれらの事実を、日本政府が隠し、偽造し、その偽情報を教育機関や多くのメデイアを通して発信流布することによって、大多数の日本人の認識は曇らされ、事実を事実として認識できていないのが現状である。

たとえば大沼保昭東大教授は、朝日新聞コラム「私の視点」(07、2/12)で次のように書いている。

「今年1月25日付朝日新聞に掲載された世論調査で94%の人が日本に生まれてよかった、と思っている。自分は愛国心が「ある」という人は78%だった。日本はすばらしい国である。豊かで平和で、清潔で、安全な国であり、暮らしよい、長生きできる国である。

しかし世界には、深刻な問題を抱えた国が少なくない。何もかも理想的な国などあり得ない現実の中で、日本は世界中の人々から高く評価される国である。その日本に生まれてよかったと感じる人々が9割以上を占め、8割が愛国心を持つと考えているのは至極まっとうな感覚である」

 

日本が豊かで平和で、清潔で、安全な国でいられるのは、どうしてなのかを知らないとでも言うのでしょうか?

日米軍事同盟と在日米軍基地が「戦争」と関係ないとでも言えようか!それは「戦争」なのだ。所謂戦後63年間、日本は何をしてきたのか、国際法の専門学者が知らない筈がないだろう。日本は朝鮮戦争からベトナム、アフガニスタン、イラクとアメリカの戦争共犯者として現在に至っていることを。

軍事研究者の論文中に所謂戦後の戦争犠牲者は数千万人以上だと書いている。世界の人々は知っている。大沼教授は知らないふりをしているだけだろう。彼はまた、世界には深刻な問題を抱えた国が少なくないと言うが、その深刻な問題の原因はG8の国々、とりわけ米、日.英の三国にあるのだ。

 

〈日本は正しいんです.日本人は、なんておとなしいんでしょう。日本人はもっともっと怒らなくてはなりません。〉と拉致被害者家族の横田早紀江さんがテレビで絶叫している。

 

大沼教授や横田さんのように自己をかえりみない意識と態度、自己のみを絶対正義とし、他者を見下げて軽侮する、そのような日本人が平気で人を殺してきたのだ。

軍人は人殺しを専門職とするが「普通の市民」が凶器をふりかざした「3•1独立運動」時の虐殺や関東大震災時の虐殺をどう理解すればよいのか。正しい日本人、おとなしい日本人はどこにいたのか?

近代日本のアジア侵略太平洋戦争(1875〜1945)は、アジア全域で約2000万人から3000万人の諸国民が殺された。多くの日本人には、この事実に対する認識がない。研究者達は、日本人は歴史健忘症に陥っているとか言うが、そのような日本人の歴史認識の欠落と誤った自己認識が東北アジアのナショナリズムを惹起するのである。

この日本人の正しい歴史認識の欠落に由来する誤った自己認識からは、謙虚に反省しょうとする態度が生まれないばかりか、傲慢になり居丈高になるのだ。政府要人の植民地支配を正当化する暴言、妄言をあげればキリがない程ある。

歴史は正直に物語る。日本が朝鮮を武力で脅迫し国を強奪した歴史のことだ。日本外交は伝統的に武力を背景にしてきた。相手にごちゃごちゃ言わさない。言うことを聞かなきゃ殺してしまえという式なので、外交が機能不全に陥るのが通例であった。

小泉訪朝後の朝日交渉になんら進展が見られないのは、それを証明している。今後の行方も日本側の変化がない限り進展は望むべきもないであろう。

日本は近代が始まって以来、今日まで何ら変わることはなかった。所謂戦後も天皇制は維持され日の丸、君が代、靖国神社も変わることなく、正されなかった。今やアメリカの手下となって「戦争」している。日本は侵略者として、その邪悪な本性は今も変わっていない。

 

●日本の戦力–世界第2位(日本政府ホームページ)

*軍事予算「公称約4兆8000億円(研究者によってはその2•3倍)」

*自衛隊員約26万人

*主要航空機1154機(攻撃ヘリは除く)

*主要艦艇151隻。護衛艦(53隻)、潜水艦(16隻)、

その他艦船(16隻)。

*最新鋭イージス艦(対艦•対空ミサイル、輸送機•攻撃ヘリ搭載)5隻

 

*洋上給油艦—現在インド洋、ペルシャ湾で展開中

(テロ対策特別措置法により給油活動実施中)

小沢民主党代表は「補給活動は戦争です。日本は、戦争はやってはいけないから給油は止めましょう」と言っている

*パトリオットミサイルは日本各地に配置済みである。

*「MD」戦略防衛ミサイル網は将来配備決定(約一兆円予算推定)されている。

その上さらに今年5月、国会で宇宙基本法が成立した。ろくに論議もされずに自民、公明、民主各党の賛成多数であっさり可決された。(京都新聞2008、5/28)

この法律は今まで自衛隊が人工衛星を打ち上げ軍事利用するのを自制していたものを取り払ったのだ。(宇宙法条文で攻撃をはっきり許している)

これは今後、軍事衛星を複数打ち上げ先制奇襲攻撃意図もふくまれているということだ。

日頃日本のメデイアは朝鮮の先軍政治を揶揄しているが、どちらが先軍なのか。朝鮮の一年の国家予算総額は日本48都道府県のなかでの最下位から二番目の県予算と同額程度と知られている。

日本はアジア侵略に対する謝罪も反省もないまま今日まで来た。日本の完全武装体制が完成する時、いかんなく得意技であり伝統の先制奇襲攻撃を行使しょうとしているのではないでしょうか。将来東北アジアに“日本発”惨劇の再来を妄想するのは筆者のみであろうか?

以上、変わらぬ日本、極悪非道の犯罪国家日本を糾弾してきました。やっかいな日本人のメンタリテイについても指摘した。だが日本人の中にも良心の人々が居られます。日本人だけが邪悪でないのは当然のことです。日本の排他的で好戦的な動向に憂慮し、偏狭なナショナリズムに反対する言論活動も粘り強く行われています。しかしながら、勇ましい好戦的な声にかき消されているのが現実ではないでしょうか。

大多数の日本人は、都市大空襲被害、沖縄集団自決、原爆被害、シベリア抑留、戦時下の苦しい生活など戦争被害を強調する。そうであるならば、こんなに悲惨な被害をもたらした戦争を誰が起こしたのか、日本の戦争指導者がこの戦争を欲しいままにやってこられたのは何故か、等等。戦争犯罪人追求、戦争責任問題追求がもっともっとなされねばならないと思います。そうすることによってアジア侵略太平洋戦争(1875〜1945)の正しい歴史認識を確立し、アジア諸民族と歴史認識を共有しなければならないであろう。

そのなかで、日本は真摯に朝鮮と向き合うべきだ。まずは朝鮮に謝罪と賠償を行うべきだ。そうしてこそ日本は正義を回復することができるのだ。そうしなければ日本は、今後とも未来永劫、犯罪者として糾弾され断罪され続けるであろう。

本文を書くにあたり、下記の諸著作に大きく依拠しました。諸先生方に対し無断引用、抜粋したことを伏してお詫び致します。

 

小熊英二著「日本という国」理論社刊

中塚 明著「これだけは知っておきたい日本と韓国•朝鮮の歴史」高文研刊

尹 健次著「もっとしろう朝鮮」岩波ジュニア新書

江口圭一著「アジア太平洋戦争は何故起こったか」岩波ジュニア新書

姜 尚中著「日朝関係の克服」集英社新書

「日中韓=共同編集未来を開く歴史–東アジア3国の近現代史—」(高文研刊)

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