日弁連総第99号勧告書 (1998.2.20)

---自己の民族文化を保持する教育についての人権侵害救済の申立てをうけて

調査したところ、朝鮮各級学校のみならず、いわゆるインターナショナルスクー

ルなど日本国に在住する外国人の自国語ないし自己の国及び民族の文化を保持す

る教育に関して重大な人権侵害があると同時に、子どもの権利条約など関係条約

違反の状態が継続していると判断したので、次のとおり速やかに善処されるよう

勧告します。

 [勧告の趣旨]

1. 日本国に在住する外国人が自国語ないし自己の国及び民族の文化を保持

 する教育をする学校と大学校及び卒業者について、日本国の学校教育法第1条の各義務教育課程、高等学校教育、大学に相当する教育を授受しているものにその資格を認めず、法律に根拠を持つ公的な資格を認定する試験を受験させないことは重大な人権侵害であり、かかる事態を速やかに解消させるべきである。そのための処置として、日本国に在住する外国人の学校について定める法律が制定されるまで、とりあえず、朝鮮各級学校と大学校及びアメリカ合衆国カリフオルニア州に本部を持つ西部地域学校大学協会(WASC)など国際的に一定の水準を維持している学校については、その教育内要に応じ てこれに対応する学校教育法第1条の各学校と同等の資格を認める処置を とるべきである。

2. 現行の私立学校助成制度は、学校教育法第1条に記載する認可を受けた

学校と、これを受けていない学校との間に大きな差異を生じ、甚だしい不

 平等であるとともに、上記1の結果とあわせて間接的に日本国に在住する外国人の自国及び自己の民族文化を保持することを妨げ、日本国の教育を受けることを押しつけることになっており、重大な人権侵害であるので、かかる事態を速やかに解消させるべきである。

 そのための処置として、上記の各学校、大学校とその児童、生徒、学生

 に対して、新たに外国人の学校の振興助成に関する立法処置がなされるまで、少なくとも私立学校振興助成法によるのと同等以上の助成金が交付されるよう処置をとるべきである。

3. 文部事務次官が、昭和40年12月28日「文普振第210号」として各都

 道府県知事に対して発した文書は、朝鮮人としての民族性または国民性を涵養することを目的とする朝鮮人学校について、これをわが国の社会に

とって各種学校としての地位さえも与えるべき積極的な意義がなく、学校

 教育法第1条に規定する学校の目的にかんがみこれを学校教育法第1条の学校として認可すべきでないこと、今後朝鮮人のみを収容する公立の小学校または中学校及びこれらの分校または特別の学級を設置すべきでないこと、などを都道府県知事に求めるものであって、日本国に在住する朝鮮人としてその民族性ないし国民性を涵養する教育をなしまたこれを受ける人々の人権を著しく侵害している。 よって本文書を撤回させるなどこれによる人権侵害を除去し、その被害を回復する適当な処置を取るべきである。