今日もあなたは優しかったね。
見つめる瞳のあたたかさも、胸に響く低い声も、わたしだけの宝物。
わたし、あなた以上にエスコートが上手な人を知らないよ?
キスも、それ以上も、あなた以上に上手な人なんて知らない。
あなたの言うことなら、わたしは全部信じられる。
本当よ。うそじゃないんだから。
……でも、ね。ちょっとだけ、聞きたいことがあるの。
どうしてわたしの嫌いな香水を使うの?
どうしてわたしの知らないキスマークがあるの?
どうして「あの人」とふたりっきりでいたの?
ねえ、答えてよ。
ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、
ねえ……!
今日もあなたはウソをついたわ。
隠したって無駄よ。ちゃんとわかってるんだから。
『あなたの目に映っているのは私だけじゃない』
あたたに黙っているだけなのよ。気づかないわけないじゃない。
そう、黙っているだけ。
あなたを手放したくないから、告発なんて絶対出来ない。
臆病だって、自分でもわかってるの。
こうするしかできない私を笑ってくれてもかまわないわ。
でも。私にだって意地はある。
だから、せめて、私の存在をあなたに刻み付けてあげる。
目も、唇も、手も、足も、すべて私のものにしてみせる。
そうよ。
視線の向こうにいるあの娘に、思い知らせてやるんだから……!
絡めた舌の余韻が蠢く。
探った指に触感が残る。
熱の名残に酔い痴れて、ぐしゃりとシーツを握りつぶした。
汗ばんだ肌の甘さをかみしめたはこの僕で、
目を閉じ叫んでいたのは君たち。
求められたから答えただけ、
そんなの、君たちが一番良く知っていることだろう?
君たちは君たちを信じていればいいんだ。
僕は君たちを信じているから。
ほら、そうやって笑っていようよ。
僕を信じて、自分を信じて、
そうすれば誰も傷つかないままでいられる。
ぬるま湯の中でたゆたっていられるんだよ。
彼女は信じて疑った。
彼女は疑い目を閉じた。
彼は笑って口を閉ざす。
さあ、喜劇の幕を開こう。