山はその山の一番よい季節に登りたい。そして、天気が良ければ楽しさは倍加する。
2002年7月3日
高山植物の花の宝庫といわれる早池峰山(1917m)はそろそろ花が咲き始める良い時期だ。盛岡の週間天気予報はこの週7月5日だけ晴れ間が出るという。そこで7月4日・5日の2日間の登山計画を立てた。
ところが3日の朝に予報が急に変わって、5日に雨マークが付いてしまった。降水確率が低いのは4日。仕方なく直ちに出発する。
切符を買う間ももどかしく東京駅11:24分発の東北新幹線に飛び乗る。水曜日の昼にも拘らず座席はほぼ満席。東北地方も結構人が動くようになったなと思いきや、宇都宮で車内はガラガラになった。新花巻で降りたのはパラパラと10人ほど。駅前は一面の田んぼで、10台ほど待っていたタクシーに乗ったのは一人だけ。早池峰直通バスの乗り場に立ったのは私一人。この町は本当に生きているのか?
時間通りに一人だけ客を乗せたバスが来た。私が乗って、客二人を乗せたバスは動き出したが、間もなく一人は降りてしまい、とうとう私の専用バスになってしまった。ワールドカップの選手でもあるまいに。運転手と一言二言言葉をかわすが、霧雨も降り出し、何やら宮沢賢治の世界に入り込んだ気分に襲われた。
約一時間で宿泊地・岳の民宿部落に到着。 多分信仰の山なのだろう。ここの民宿は全てOO坊と称し、今日の宿は大和坊。部屋で一息ついてから、明日は朝5:00にタクシーを呼んででも林道の最高登山口・小田越まで行きたいと言うと、気風のいい宿の女将が車で送ってやると言ってくれた。床に就いてからもまだ時々雨音がはげしい。明日朝、雨が止まなければ、それはその時考えることにして就寝。
7月4日
4:00頃起床。曇ってはいるが、雨は降っていない。まあまあか~。
洗面を済ませるともう朝と昼の弁当も出来ていて、女将は何時でも車で出られるという。
岳発4:50
小田越着5:05 直ちに登り始める。何やら青空も覗いて、明るくなってきた。今日は晴れるかも!
岩とハイマツの尾根
白いウスユキソウと黄色いナンブイヌナズナ
30分ほどで樹林帯を抜け、一面岩とハイマツの広い尾根に出た。もう空は青く晴れているが、頂上付近はまだ霧が流れていて風が冷たい。このあたりからミヤマヤマブキショウマやオダマキが見られるようになってきた。登るにつれてミヤマオダマキの数が増え、大群落になる。更に高度を上げるとミヤマアズマギク、ハヤチネウスユキソウ、ナンブイヌナズナなどで一面のお花畑だ。ハヤチネウスユキソウはエーデルワイスにそっくり。この辺で朝食。頂上に近ずくとミヤマシオガマもまじり、色鮮やかだ。
早池峰頂上着7:40、 ちょっと早すぎた。頂上付近で長い竿を谷の方へ向けている人がいた。先端のマイクで小鳥の声を録音しているのだという。これもなかなか大変そうだ。
周辺の山は雲海の下で、ほとんど見えないので、そのまま中岳に向かう。この辺からチングルマやイワウメも岩壁に見られるようになり、尾根は開けていてまさに花の楽園。だが、所どころクレパスを歩く感じの岩だらけルートだ。岩は濡れていて花に見とれていると滑る。アレ、もうフィルムが無くなってしまった。そんなに沢山撮ったかなあ。
中岳着9:45 更に鶏頭山に向かう。登山路は次第に悪くなり、なだらかな所は沼地を歩くようにぐちゃぐちゃで、草木が道を覆い、掻き分けて歩くと露でズボンはグショグショ。まるでジャングルの沼地探検みたい。岩はつるつるで昇り降りにも相当体力を要求される。振り返れば早池峰頂上は霧が晴れて、その美しい姿を現した。でも、もうフィルムがない。人生いつ何が起こるか分からない。カメラもフィルムの余裕をもって撮影を終わるべし。そう言えば以前大雪山でも同じようなことがあった。失敗が生きていないなあ。
ミヤマアズマギクとミヤマシオガマ
白いイワウメ
鶏頭山着12:20 悪路のため随分時間がかかってしまったが、朝早立していたので助かった。早池峰山からいくらも離れていないのに、花が全く異なり、チシマフウロ、ハクサンチドリ、イワカガミ、イソツツジなどが咲いている。頂上で昼食後1000mを一気に下る。
花の季節になったと言うのに、今日、山で出会った人は早池峰頂上付近で二人だけ。皆どこへ行ってしまったの?
岳着15:00 再び大和坊で汗を流した。明日登る人が東京から車で来ていて天気を気にしていた。明日も晴れたらいいね。
16:58の花巻直通バスに乗る。 新花巻発18:20 東京着21:44
2002/7/6 森 利英
2020年1月 中旬より心拍数の乱れを感じて、掛かりつけ医院を受診し心電図を撮ったが、不整脈を捉えることが出来なかった。
2月に入っても気分が優れず、新型コロナウィルスの感染も心配の一つとなって、外出も控えながら過ごし、不快感が心臓に起因するのか消化器系の不具合なのか区別がつかない状態だった。
3月になり毎日のように不快感があり、寝汗もかくことから、新型コロナも心配で、掛かりつけ医院で胸のレントゲン検査や血液検査をしたが、ウィルス等感染症の兆候はなく、心電図でも異常は発見できなかった。不快感があるので 安静を旨としたが体力を考えれば寝てばかりはいられず、時々散歩には出た。
4月には新型コロナの感染者が減少し、毎日のように散歩にでた。主に午前中に不整脈を感じ、午後は割合に不快感が少なかった。
5月になるとめまいを感じることが多くなってきた。これが一時的な貧血や血圧低下によるものかとも疑ったが、証拠を掴むことが出来なかった。
6月始めには外出時に強いめまいを感じ、失神するのではないかと思う程だったが、幸い座って回復した。中旬には入浴中にも強いめまいを感じた。
掛かりつけ医院で心電図を撮った結果、心房細動の兆候が見つかり、早期に循環器専門病院を受診するよう紹介状を書いてくれた。
6月20日:専門病院では血液検査・心エコー検査の他、24時間心電計の装着など、専ら数値的な検査が行われた。最近の診察では手で脈を取ることもないのかとちょっと驚いた。
6月29日:検査結果が出て、心房細動があるとのことで、カテーテルアブレーションを薦められた。心房細動があると心房が痙攣して頻脈となり、血液が固まって脳梗塞のリスクがあるとのことだった。痙攣の信号を出す場所をカテーテルで焼切るとのこと。次回は家族を伴って手術を決心するよう促された。帰宅後も強いめまいを何度も感じた。
7月4日:家内を伴って診察を受けたが、自分の不快感は脈が欠落することによる虚血性のめまいのような気がして、カテーテルアブレーションの治療法を決心出来なかった。そこで、携帯心電計で更に調査することになった。
7月7日:インターネット経由で購入した携帯心電計が届き、早速計ってみる。頻脈に続いて除脈(遅い脈)となり、血液の流れが悪くなって強いめまいを感じるらしいと推定。このまま放置しておくことは苦痛が強く、何とか改善したいと思った。
7月10日:この結果を持って専門病院を訪れると、めまいは除脈時に起こっているのでカテーテルアブレーションの治療法に替えて、直ぐにでもペースメーカーを入れるように勧められた。
「命に係わりそうな大手術なのに こんなに簡単に決めて良いのだろうか?」、「もっと慎重な事前調査をするべきではないのか?」等の思いがあって、あまりにも急な方針変更にその場では決心がつかず、兎に角5日後に手術をすることにした。
不整脈のめまいが強い時は苦痛が耐えがたく、このままではいけないと思うのだが、ない時はその辛さを忘れて平常の生活が出来てしまうので最終決断が難しい。喉元過ぎれば熱さを忘れるとはこの事か。
こんな状況で簡単にペースメーカーなどと言う大手術をしてしまうのが正解なのかと迷いに迷った。
だが80歳を過ぎて 残された時間は多くない。このまま放置すれば暗い時間に向かって進んでいくように思う。これからを少しでも明るい気持ちで過ごすには医者の勧めを聞かざるをえないだろう。少なくともマイナスにはならないだろうと思った。
7月13日:入院準備の為 専門病院でPCR検査。同日中に訪れた掛かりつけ医院でもペースメーカーは確立した技術で 心配ないとの意見だった。
7月15日:11時頃入院。 16時手術、所要約1時間、鎮静剤で眠った状態。約3cmx4cmx0.6cmのペースメーカーを胸に植え込み、2本のリード線を静脈経由心臓内部に埋め込む。 手術後約1.5時間経てば起き上がって良い。入院中は心電計を常時付けて状態チェック。夜寝返りが打てず苦痛だった。
7月20日:退院。 シャワーOK。 1か月経過後は 左手を激しく使わなければ基本的には何をしても良いとのこと。IH機器や携帯電話等電子機器には近付かないよう要注意。
帰宅後立眩みがあるので、降圧剤を半量に削減。
7月25日:専門病院で回復経過チェック。風呂OK 出来るだけ運動せよとの指示。
8月7日:病状チェック。専門病院での治療終了とのこと。強いめまいは無くなったが、立眩みと息切れ感はまだ少し残っている。血圧コントロールが難しそう。
8月20日:専門病院でペースメーカーの作動状況チェック。問題なし。現在の状況で電池寿命は約8年と推定。
これからの通常のフォローはペースメーカー社が携帯電波経由で一日一回デバイスのチェックをするホーム・モニタリング・システムで行う。
次回の専門病院での定期健診は一年後となる。
何だか全てが機械化され、誰を頼りにしたらよいのか分からず、心細い感じだが、まずは上手く行ったのだろう。
一番驚いたのは治療費の安さだ。これだけの治療をしても高額医療費の負担軽減制度などでカバーされて、差額ベッドなどを利用しなければ数万円の支出で済む。日本の福祉が手厚く有難いことを知った。
これから 家に静かに閉じこもっていては体調を維持できないし、腰痛も出てくる。新型コロナ対策を取りながら出来るだけ外には出て行こう。庭仕事も少しは出来るかな?
少しづつ試しながら体力回復を図り、元の生活に戻して行きたい。
(20200822)