2009年12月4日、小塚道子先生をお招きして「さゆり会」を致しました。先生は相変わらず美しく素敵でしたが何となく覚束なくて、芳夫先生(道子先生は小塚芳夫先生とご結婚)がなにくれとなくアドバイスして居られるご様子でしたので、当日幹事をして居りました私は、これで「さゆり会」は最後と感じたのでした。
そして今秋(2016年9月)ふと思いついてご自宅にお電話致しましたところ、お嬢様から二年半前から‘世田谷福祉法人蘆花ホーム’に入所されたと伺いました。火・木・日曜日毎に道子先生の許にいらっしゃるとのことでしたので、私もご一緒させていただくことに致しました。
「母は昔とは大分変わって居りますよ」と伺って居りましたので、内心不安に思って居りましたが、車椅子でいらした先生は、小さく小さくなっていらっしゃいましたが、昔のままの先生でした。
(2009年のさゆり会)
「教え子の梁瀬温子さん、今は小林さんが、おばあちゃんに逢いにいらして下さったのよ」とお嬢様がおっしゃると、小さなお声でしたけれども紛れもなく小塚先生のお声で「有難いわねえ、涙が出るわ」とおっしゃって両手で目頭を押えられました。「母は現状を理解できて居ります」とお嬢様もほっとした表情をなさいました。
居室のある4階より1階までエレベーターで降りて外に出られ、車椅子のままお天気のよい日には少し体操をしているのですと両手を上げたり下げたり、足を交互に動かしたり、私も先生の手を握ってお手伝い致しました。小さいとても柔らかな手をして居られました。
12時からのお食事は、汁物・パン粥・白身魚にブロッコリーとポテト添え・漬物・デザートで、全て見事にペースト状になって居りました。お粥はお米の粒々がどんなに細かくても駄目だそうです。汁物はご自分で両手を使って上手に飲まれましたが他の品々は一口一口お嬢様がお口に運び、たっぷり30分かけて完食なさいました。
お茶を飲み、お口をすすいで完了です。私はお嬢様の手際よくてきぱきとした所作にただただ見とれて居りました。その日は芳夫先生(95才)もご一緒でしたが、耳が少し遠くなられて居られましたがとてもお元気で、お食事中にも「おばあちゃん」と呼びかけられると道子先生も「ハァイ」と答えられて手を握り合って居られました。なんともうるわしい光景でした。お嬢様は、「母はいつも父に甘えているんですよ」と笑って居られました。
後日(2016年11月)谷孝子さんと再びお訪ねして、野田節子さんが三越で見繕って下さった小ぶりで軽いキルティングの肩掛けと暖かそうなソックスを「さゆり会」からお贈りしました。
谷孝子さんと私も96才になられた道子先生の今を、そして施設の方々から「先生、先生」と大事にされていらっしゃるお姿を拝見して、本当に幸せな時間を過ごして帰って参りました。後日、お嬢様より誠に行き届いたお便りをいただき、さすが道子先生のご息女と感じ入りました。
以上、思いつくままに附属小学校でお世話になった小塚道子先生の今をお伝え致しました。
(20170107)