なぜ鍼が痛みを取ることができるのか、本当に不思議で不思議で、思わず脱サラして鍼灸学校に行ってしまったBONです。
鍼灸学校の教科書や論文などから、鍼灸未学習者にもできるだけ分かりやすくまとめてみました!
鍼が効く理由は、主に「神経系」「血流」「内分泌系(ホルモン)」の3つの観点からメカニズムが解明されています。
鍼灸の効果は、以下の4つの働きが複雑に組み合わさって発揮されます。
鍼が痛みを和らげるメカニズムには、主に2つの理論があります。
まずは鎮痛のお話ですね。痛みが強いと辛いですから。
ゲートコントロール理論
鍼を刺した刺激が脳へ伝わる際、もともとあった「痛み」の信号を遮断する仕組みです。
痛みよりも鍼の刺激の方が速く脳に伝わるため、痛みを感じにくくなります。
ゲートコントロール理論の発表から50年を経て、この理論がどのように医療や鍼治療の発展に寄与したかをまとめた論文です。
掲載誌: Pain Research and Management (2015)
内容: 理論の歴史的背景と、TENS(電気刺激治療)や鍼灸などの非薬物療法における科学的根拠としての重要性を論じています。引用数も半端ない数です。
脳内鎮痛物質の放出
鍼の刺激を受けると、脳内でエンドルフィンやエンケファリンといった「天然の麻薬」とも呼ばれる鎮痛物質が分泌されます。
これにより、全身の痛みに対する感受性が下がります。
鍼による痛み緩和の代表的な証拠は、脳内エンドルフィンの放出に関する研究です。
論文名: Acupuncture: neuropeptide release produced by electrical stimulation of different frequencies
掲載誌: Trends in Neurosciences など
概要: 鍼刺激の周波数によって、脳内で放出される鎮痛物質(エンケファリンやエンドルフィンなど)の種類が変わることが明らかにされました。
ポイント: 鍼が単なるプラセボではなく、生化学的な変化を脳に引き起こすことを証明しました。
鍼を刺すと、その周囲で微細な「組織の修復反応」が起こります。
鎮痛で痛みをごまかすのではなく、原因を除去していきます。
軸索反射(じくさくはんしゃ)
鍼の刺激に対して神経が反応し、血管を広げる物質(CGRPなど)を放出します。
これにより局所の血流が劇的に良くなり、コリの原因である老廃物や「痛い!」を脳へ伝える物質が洗い流されます。
微細な傷による自己治癒力
あえて細胞に目に見えないほどの小さな傷をつけることで、体が「異常事態だ!」と判断し、酸素や栄養を運ぶ血液を集中させます。
これが組織の再生を早めるスイッチとなります。
筋肉系の問題は、たぶんこの現象が一番貢献してるんじゃないかな?と思っています。
皮膚の血管拡張や発汗が、どのように軸索反射によって引き起こされるかを解説しています。
タイトル: Assessment of cutaneous axon-reflex responses...
ポイント: 皮膚の血管拡張や発汗が、どのように軸索反射によって引き起こされるかを解説しています。
鍼は、自分の意志ではコントロールできない自律神経の調整作用があります。
リラックス効果
鍼刺激は、休息の神経である副交感神経を優位にします。これにより心拍数が安定し、胃腸の働きが活発になるほか、深いリラックス状態(眠気を感じることもあります)が引き出されます。
抗炎症作用
最新の研究では、特定の部位への鍼刺激が迷走神経を介して全身の炎症を抑える経路を活性化することが示唆されています。
世界で最も権威ある科学誌『Nature』に掲載された研究で、鍼がどのように全身の炎症を抑えるかが神経解明レベルで特定されました。
論文名: A neuroanatomical basis for electroacupuncture to drive the vagal–adrenal axis
掲載誌: Nature (2021)
概要: 足のツボ(足三里など)を刺激すると、特定の感覚神経が活性化され、それが脳を経由して迷走神経ー副腎軸を駆動させ、抗炎症作用を持つホルモンを放出させることが証明されました。
最近注目されているのが、筋肉を包む筋膜(ファシア)への影響です。
鍼を刺して軽く回したり動かしたりすると、結合組織である筋膜が鍼に巻き付き、組織が引き伸ばされます。
これが物理的な刺激となって細胞に伝わり、組織の柔軟性が回復すると考えられています。
鍼を刺して回す動作が、細胞レベルでどのような物理的変化を与えるかの研究です。
論文名: Relationship of acupuncture points and meridians to connective tissue planes
掲載誌: The Anatomical Record
著者: Helene M. Langevin (米国国立補完統合衛生センター所長)
概要: 超音波画像診断を用い、ツボの80%以上が筋肉と筋肉の間の結合組織(筋膜・ファシア)上に位置することを突き止めました。鍼を回すことで筋膜が巻き付き、細胞が引き伸ばされることで治癒シグナル(メカノトランスダクション)が送られることを示唆しています。
西洋医学的 :神経刺激、血流促進、ホルモン分泌、筋膜リリースとして捉える。
東洋医学的 :「気(エネルギー)」や「血」の滞り(経絡)をスムーズに流すと捉える。
鍼を刺したときに感じる「ズーン」「重だるい」あの独特の感覚は、専門用語で得気(とっき)と呼ばれます。
これは、単に「痛い」のとは全く別の現象です。
この正体は「深いところにある神経」への刺激です。
この「深い神経」が刺激されると、脳に強力な信号が送られ、これまでに説明した迷走神経の活性化や鎮痛物質(エンドルフィンなど)の放出のスイッチが入ります。
鍼のズーンは、体が治るためのスイッチが入った証拠だったんですね!