「病院で坐骨神経痛と言われ、痛み止めと湿布を出されたけれど痛みが取れない。」
当院には、そういったお悩みを持つ方が多く来院されます。
そもそも「坐骨神経痛」とは病気の名前ではなく「症状」のことです。
頭痛や腹痛と同じような言葉で、お尻周辺から足にかけて痛みやしびれが出るものを指しています。
痛み止めだけで根本的な解決に至らない、そんな坐骨神経痛の裏側をみていきましょう。
整形外科は本来、レントゲンやMRIを用いて「骨や関節の異常」を診る場所です。
そこでの画像検査では、明らかな神経の圧迫が見つからないこともあります。
「強いて言えば少し椎間板が出ているけれど、神経を圧迫するほどではない。
でも、ひとまず『椎間板ヘルニア』としておきましょう」
「若干の狭窄はありますが、痛みの直接の原因ではなさそうです。
ですが診断名は『脊柱管狭窄症』にしますね」
「原因が分からないけど、保険診療の便宜上、
『坐骨神経痛』として痛み止めを出しましょう。」
上記のようなこと、言われたことはありませんか?
このような診断名がつくのは、現在の日本の保険診療の仕組み上、何らかの病名をつけないと、薬の処方やリハビリの指示ができないからです。
実は、現在の日本の医学界には「筋肉の硬さが原因で痛みが出る」という正式な診断名がほとんど存在しません。
そのため、先生方も筋肉に原因がありそうだと感じていても、便宜上、既存の病名を当てはめざるを得ないという背景があります。
【参考資料】
日本における非特異的腰痛の診断と特徴
論文のポイント:世界的に腰痛の約85%は原因を特定できない「非特異的腰痛」とされています。この論文では、画像検査だけでは診断が難しいケースがいかに多いかを論じています。
骨に異常がない場合、痛みの正体は「深層筋(体の奥深くにある筋肉)」の過度な緊張にある場合があります。
鍼灸の臨床をしていると、結構あるある案件です。
筋肉が動くためには、「ATP」というエネルギーが必要です。
このATPを作るには、血液が運んでくる新鮮な酸素が欠かせません。
しかし、同じ姿勢の維持や疲労で筋肉が緊張し続けると、筋肉の中を通る血管が圧迫され、血流が悪くなります(虚血状態)。
血管の圧迫で酸素が不足すると、エネルギー(ATP)が作られなくなります。
実は筋肉は「緩む」ときにもエネルギーを使うため、不足すると緩むことができず、さらに硬く収縮するという悪循環に陥ります。
【参考資料】
筋膜トリガーポイントの病因:エネルギー危機モデル
論文のポイント:筋肉が持続的に収縮すると血流障害が起き、ATPが枯渇して筋肉がリラックスできなくなる現象が、持続的な痛みを引き起こすメカニズムを解説しています。
坐骨神経は、腰から足先まで続く非常に長い神経です。
その通り道の多くは分厚い筋肉に囲まれています。
なので奥深くにある筋肉が硬くなると、神経が逃げ場を失い、締め付けられてしまうのです。
通常、神経は外部からの刺激があったときだけ電気信号を送りますが、締め付けられて酸欠状態になると何もしていないのに勝手に電気信号を出し始めます
これが、脳に「痛み」や「しびれ」として伝わる正体です。
正座をしたときに足がしびれるのも、一時的に神経が圧迫されて酸欠(虚血)が起きているためです。
こうした筋肉の硬さはレントゲンやMRIには写りません。
そのため、体の中では神経が締め付けられていても、病院の診察では「骨に異常がないから原因不明」として片付けられてしまうことが非常に多いのです。
「骨が神経を突いている」のではなく、「奥深くの筋肉が神経を締め付けている」のが、痛みの正体です。
【参考資料】
Deep gluteal syndrome(深在性臀部症候群)
論文のポイント: 坐骨神経痛の原因は、背骨(ヘルニアなど)だけではありません。この論文では、お尻の奥深くにある筋肉(骨盤周辺の筋肉など)が硬くなり、坐骨神経を物理的に締め付ける(絞扼する)ことで、お尻や足に強い痛みやしびれを引き起こすメカニズムが詳しく解説されています。画像検査では異常が見つかりにくい「筋肉による神経圧迫」の概念を医学的に示しています。
痛み止めは「脳に届く痛みの信号」を一時的に遮断するものであり、湿布は表面の炎症を抑えるものです。
これらは一時的な苦痛を和らげるには重要ですが、体の奥で固まった筋肉の血流を直接改善するわけではありません。
根本的な解決には、この「深層の筋肉の緊張」を物理的に解き、血流を再開させて、筋肉に酸素(エネルギーの材料)を届けるプロセスが必要になります。
「病院で異常なしと言われたけれど、ずっと痛い」という方は、骨ではなく、奥深くの筋肉が悲鳴を上げているのかもしれません。
就寝中に足が痛くて目が覚めてしまい、睡眠不足から鬱を発症てしまう方もお見かけしました。
最後に
骨に異常がない、どこが悪いか分からないと言われたその痛み、もしかしたら原因は筋肉の硬さにあるかもしれません。
「どこへ行っても変わらないから」と、痛みを抱えたまま生活するのは本当に辛いことだと思います。
坐骨神経痛でお悩みの方は、一人で抱え込まずにぜひ一度ご相談ください。
一歩前へ進むためのお手伝いをさせていただきます。