土質力学3
土の密度と間隙
土の密度と間隙
土木工学における土は,3つの要素に分けて物理性を評価します.それは,土粒子・水・空気です.そのうち水は,天候によって変化します.晴れが続けば乾燥していまい,水がなくなることもあります.したがって水と空気の占めている部分を合わせて間隙と呼んでいます.雨が降ると間隙に水が入っていきます.間隙が水で満たされた状態を飽和と呼んでいます.したがって,乾燥状態での土,水分がある程度存在する湿潤状態での土,飽和状態での土という風に,水分量で土の状態を表します.
教科書には,土の密度と間隙に関するたくさんの用語と計算式があります.全ていきなり覚えるのは大変ですので,まずは基本を覚えておくことから始めます.
図は,土の構成要素である土粒子・水・空気を模式化したものです.教科書にも載っていますが,まずはそれぞれに質量Mと体積Vがあることを認識してください.そして土木の世界では,空気の質量は無視できるので,Ma = 0 ですし,水の密度は1 g/cm^3と見なせるので,Mw = Vw とおくこともできます.あとは用語の意味を理解すれば式に結びつきます.
土の密度は,非常に重要な数値です.自然状態での土を移動させるのにダンプトラック何台必要かを計算できます.自然状態は,水分が含まれているので湿潤土です.その密度,湿潤密度ρtは,M/Vで計算できます.単位はg/cm^3を使うことが多いです.頭の中でイメージしやすいですし,この単位はt/m^3と等価です.通常の土は,1.8t/m^3ですので,この値も覚えておいてください.パワーショベルのバケットの体積からダンプに載せるとき,何杯分載せられるかが計算できます.
湿潤密度は,体積の分かっている容器Vに土を入れて質量Mを測るだけで求めることができます.ただ,スコップで掘り返した撹乱土を容器に入れるのと,自然状態の不撹乱土を容器に入れるのとでは,値が変わってきます.どの状態での値が必要なのかは,その後の実験や施工に関わるものなので,十分考慮して試料を採取する必要があります.なお,不撹乱土の採取は,専用のサンプラーで採取しなければなりません.
土を乾燥させると,その分質量が減りますから密度も小さくなります.そのときの乾燥密度ρdは,Ms/Vで計算できます.乾燥させるには規格に従い,110℃の炉に24時間入れて乾燥させる必要があります.温度が高いと,土粒子の成分が変質する場合があるので規格化されています.乾燥させると,土の質量はMsと見なせます.
含水比wは,土がどれくらいの水分を含んでいるかを表す値です.土粒子に対する質量比で,Mw/Msで計算します.Mwは,湿潤状態での土の質量から乾燥状態での質量を引くことで求められます.まず,自然状態での湿潤土の体積と質量を測り,それを乾燥させることで以上の値が求まります.
土粒子密度ρsは,重さに関わる重要な数値です.Ms/Vsで計算できます.教科書では水の密度に対する比重Gsも紹介されていますが,値に大きなずれはないので,まずは土粒子密度を頭に入れてください.普通の土粒子密度は,2.8〜2.9g/cm^3です.岩石の密度に近い値です.この土粒子密度は,土に関する非常に重要な物理量ですからできるだけ精密に測っておく必要があります.有効数字3桁は欲しい数値です.Vsを測れば求まる数値で,これを測るにはピクノメータというフラスコのようなガラス容器を用います.手法は教科書に書かれています.非常に繊細な計測で,慣れなければ,有効数字3桁の精度は確保できません.
次に,間隙の量が分かれば,乾燥によってどのくらい軽くなるか,飽和することによってどのくらい重くなるかを計算できます.間隙の量を比あるいは率で表します.間隙の量は,体積で表します.質量はゼロに等しいからです.したがって比の場合は,土粒子の体積Vsに対する間隙の体積Vvの比ですから,間隙比e = Vv/Vsとなります.間隙率は,土全体の体積Vにしめる間隙の割合ですから間隙率n = Vv/V となり,単位を%にする場合は100を掛けます.
最後に飽和度Srも重要な値です.全間隙のうち,どのくらい水が占めているか,ですから体積比で表し,Vw/Vvで計算できます.
教科書は,こららの値同士の関係式も説明していますが,模式図とともに以上の用語と式を理解していれば,様々な問題を解くことができるはずです.公式を探してとくのではなく,自分で理解したことを使って解くようにしてください.単なる比の問題ですから,難しい問題ではありません.