日時:2020年2月15 日(土)14:00 –
場所:東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1
トム・ガリー氏 (KLA会長)
先行研究からみるインタラクション活動
根岸純子(TALK会員)
鶴見大学文学部英語英米文学科 准教授
*発表言語は日本語
2020年から順次施行される新学習指導要領では、従来までの英語4技能(「読む」・「聞く」・「話す」・「書く」)のうち、「話す」技能を「発表」と「やり取り」の2領域に分割して5領域とすることになった。学習指導要領における「やり取り」とは,複数の人間間におけるコミュニケーション活動で,発信力育成のための「発表」とは異なり,相手の産出する言語を「聞いて理解する」ことも要求される活動で,参考としているCEFR (Common European Framework of Reference: Council of Europe, 2001, 2018) で使用されている「インタラクション」の訳語である。このように、インタラクションを含む産出的能力の育成がますます求められるようになってきている一方で、文部科学省の実施した平成29年度「英語教育実施状況調査」によると、「話すこと」に関しては中3では文科省の求める成果目標を達成した生徒が33.1%で、「互いの考えや気持ちなどを外国語で伝え合う対話型の言語活動をより一層充実する」必要があるとされた。高3では成果目標を達成できた割合が12.9%と更に低かったという。ここからみて取れることは、学校現場では未だインタラクション活動は十分ではないということであろう。今後、ディスカッション活動と銘打ったインタラクション活動が求められていくと思われるが、英語教育に携わる者として、インタラクションの実践活動のみならず、その短所や長所、評価の方法等についても知るべきであろう。そこで、本発表ではこれらの点について、先行研究を中心にみていきたいと思う。
英文ライティングにおけるEFL学習者の機械翻訳使用方略の分析 —アンケート調査を用いた分類—
西山 幹枝(KLA会員) 東京医療保健大学大学院 准教授 / 東京大学大学院総合文化研究科博士課程
青田 庄真 筑波大学 助教
松田 紀子 近畿大学 専任講師
*発表言語は日本語
ニューラルネットワークに基づいた機械翻訳技術の応用により,外国語学習者にとって機械翻訳(MT)は,今後,有益な外国語学習支援ツールになりえるだろう。しかしながら,これまでのところ,EFL(外国語としての英語)学習者が英語で執筆する際のMT使用方略を調査した研究はほぼ存在していなかった。ゆえに,先行研究 (西山・松田・青田, 2017, Nishiyama, 2017, 2018) では,スクリーンキャプチャーを用いて録画した画像データとインタビューデータをもとに,EFL学習者がMTを使用して英文エッセイを執筆した際のライティングプロセスを,使用方略に焦点を当てて分析した。本調査では,西山ほか (2017) で実施したライティング実験参加者9名を含む184名のEFL学習者に「機械翻訳と外国語学習に関するアンケート調査」を実施し,ウォード法,ユークリッド距離によるクラスター分析と因子分析を行った。混合研究法による分析結果をもとに,EFL学習者の英文ライティングにおけるMT使用方略について,(1)EFL学習者(英語習熟度レベルがCEFR A1~B2) に特有の8つの方略を特定し,(2)アンケート調査参加者を5つのクラスタに分類し,それぞれ,1. 方略多様クラスタ, 2. 自律的使用クラスタ, 3. そのまま利用クラスタ, 4. 出力後調整クラスタ, 5. 方略非多様クラスタと命名した 。その上で,西山ほか (2017) で実施した実験参加者9名を上記5つに分類した方略クラスタに関連づけて,EFL学習者の英文ライティングにおけるMT使用方略について分析した。本調査結果を基に,EFL学習者が英文ライティングする際のMT使用の要因や,MT使用パターンを考察する。
Shadowingが英語弱化母音の音質に与える影響:日本人中学生の場合
肥田和樹(TALK会員)
早稲田大学大学院教育研究科
*発表言語は日本語
本研究では、shadowingが日本人中学生における英語弱化母音の音質に与える効果を音響音声学の観点から検証した。公立中学3年生11名が1回15分、全8回にわたる実験授業に参加した。実験授業の前・後・1ヶ月後に英語音読を録音し、分析対象となる母音を音響分析・比較した。得られたデータはF1-F2座標上で対象母音を発話した際の舌の位置を示し、視覚的に分析された。
分析の結果、分析対象の母音を発話した際の舌の位置の動きに4つの傾向が見られた。練習前と比べ①theがtoを発話した際の舌の位置に近づいた。②toと強母音uの距離が大きくなった。③aが上方向へ移動した。④atは練習効果を受けにくかった。
以上の傾向・動きを考察すると、①標準化したtoの位置をLadefoged and Johnson (2011: 225)の母音図と重ねるとschwaの真上に位置していたためthe、toの音質はschwaの音質に近づいたと判断できる。②強母音uの位置が母音図の後方へ移動し、母音図に含まれる強母音uの位置へ近づいたため、toの弱母音と強母音uの音質において違いが生まれ、強母音uは英語母語話者の音質に近づいたと判断できる。③aの移動は実験文における子音との組み合わせで起きたと推測される。④テスト文章のbreath groupがatへ影響を与えた可能性がある。
本研究はshadowingが日本人中学生におけるschwaの発話習得に一定の効果があることを示した。今後の研究では、実験参加者の人数を増やすとともに、英語発話内の強・弱母音の区別だけではなく、日本語の母音との比較も行なっていく。
松坂 ヒロシ氏 (TALK会長)
ルヴェソンベール駒場(東大駒場キャンパス内)