リナックス+ソフトがマイクロソフトを撃つ! 1999年12月1日
リナックス+ソフトがマイクロソフトを撃つ! 1999年12月1日
マイクロソフトの「オフィス」に対抗して、サンが提示した「スター・オフィス」はリナックスがベースの無料ソフトであった。マイクロソフト帝国に挑むベンチャー魂ともいえる。はたしてこの戦いの帰趨やいかに!? WebGendai
Mr.LINUXに拍手の嵐
今回のCOMDEXでの最大の話題は、やはりリナックス(LINUX)の急成長であろう。昨年まで、サブ会場であるSECC(Sand's Expo and Convention Center)の地下で細々と展示されていたリナックス・パビリオンが、「リナックス・ビジネス・エクスポ」と改名し、規模を数十倍に拡大してメイン会場に隣接するヒルトン・ホテルの大きな展示場に場所を移して開催された。
リナックスは、ヘルシンキ出身のLinus Torvalds君が作成したUnixをベースにしたオペレーティング・システム(OS)で、このリナスさん(ピーナッツ・ブックスに登場するルーシーの弟は同じつづりでライナスと発音するが、彼はリナスと仲間に呼ばれていた)がソース・プログラムをインターネット上に公開して、全世界のプログラマーから意見を求めてソフトウェアの完成度を高め、信頼性も増したため、瞬く間に世界中に普及した。彼自身も初日の夕方、ソニー出井さんの後にキーノート・スピーチを行ったが、登場と共に一部の人たちが立ち上がって拍手をするほどの熱気に包まれた。立ったのは、リナックスを無料で提供してくれたことへの敬意の表れである。
コンピュータのソフトウェアは、基本的に3つの層から成っている。ハードウェアの上にあるのがOS層で、これが基本的な処理を担当するいちばん重要なソフトである。この上にユーザー・インタフェースという層があり、ユーザーがコンピュータを操作する部分の処理を担当している。マイクロソフト・ウィンドウズは、OS層とこのユーザー・インタフェース層を含んでいる。この上にあるのがアプリケーション層で、ワープロとか表計算などのソフトはこの層で動いている。皆さんが今、このページを見るために使っているブラウザーというソフトは、ユーザー・インタフェース層とアプリケーション層を含んでいる。
リナックスは、OS市場の90%を占めるに至ったウィンドウズの対抗馬としてこの数年急成長を続けているOSである。一部のプログラマーから熱狂的に支持されているリナックスをビジネスの分野で使おうと、数社が2、3年前から事業化を行っていた。無料のOSだし、日本でも1000円前後のパソコン雑誌を買うと付録のCD-ROMに添付されているので、ビジネスの余地はないと思いがちだが、「サポートとサービス」でちゃんとリナックス・ビジネスは成立するのである。レッド・ハット、カルデラ、SuSEなどのリナックス関連企業が急成長している。
急成長しているなら株でも買おうか、ということで早速ナスダックのホームページに飛ばれる読者の方に一言。レッド・ハットのシンボルは[RHAT]ですが、カルデラもSuSEも未公開です。そのうち登場すると思いますので、ご期待ください。
Let Software be Free
リナックスはウィンドウズ対抗のOSだと説明したが、OSとネットスケープ社のブラウザーだけがあっても、ビジネスの場では使えない。リナックスで動くワープロや表計算ソフトなどのビジネス・アプリケーションの出現が待望されていたが、それが今回のCOMDEXに登場した。インターネットの巨大サーバー・コンピュータやジャバ技術で有名なサン・マイクロシステムズ社が開発した「スター・オフィス」である。マイクロソフト・オフィスの対抗なので、サン(太陽)・オフィスと命名すべきところを、少しひねってスター(星)としてある。
COMDEXの参加者全員が必ず最初に通過する「レジストレーション」の建物の前にスター・オフィスのCD-ROMがうず高く積まれ、ひとりひとりに配られていた。レジストレーションの建物を示す大きな垂れ幕には、サンの企業カラーである深いブルーに白抜き文字で「LET SOFTWARE BE FREE」とある。このFreeを「無料」と読むと、ソフトウェア会社の人間としては「冗談じゃない!」と叫びたくなる。Freeを「自由」と読むと、「コンピュータの世界を牛耳っているマイクロソフト帝国から、あなたは開放されます」というサンのメッセージが見えてくる。しかし、束縛されていると感じているウィンドウズ・ユーザーは少数だと思うのだが。
別の場所には「SCOTT McNEALY DOESN'T WANT YOUR MONEY」という20メートル以上の垂れ幕もあり、サンの社長スコット・マクナリー氏のビル・ゲーツ氏への対抗意識が剥き出しになっている。
スター・オフィスとブラウザーとリナックスがあれば、ビジネスの場で取りあえずの仕事が行える。オフィス・キラーと言うだけあって、ワードやエクセルのファイルを読むことができる。無料だし、オープン・ソース方式なので、いざとなればソース・プログラムを入手して処理を解析することもできる。その上、来年には、スター・オフィスの次世代製品である、「スター・ポータル」の提供も開始される。
スター・ポータルは、スター・オフィスのブラウザー版で、サンお得意のジャバ技術を使い、ブラウザー上で動くビジネス・アプリケーションとなっている。携帯電話やインターネット・テレビなど、ジャバ技術を使った製品であればパソコンに限らず動作するので、何時でも何処にいてもワープロや表計算が行える環境の提供を目指している。
マイクロソフト帝国に対するキラー製品群を矢継ぎ早に発表している、リナックス対応データベースのオラクル社、ブラウザーの本家ネットスケープ社、ボディーカラーで勝負するアップル社、そしてサン・マイクロシステムズ社などの共和国は、シアトルの巨大企業に対する、シリコンバレーのベンチャー魂の表れとして評価したいが、オープン・ソースの失敗例もあり、日本語や各国語対応の時期も不明なので、米国内での評価を待ちたいと思う。
たった今、さる筋から情報を入手した。マイクロソフト帝国は、スター・オフィス追撃の最終兵器を開発中とのこと。その名は「スター・デストロイヤー」・・・ ということで、映画スター・ウォーズでは、スター・デストロイヤーは破壊され共和国軍が勝利するのだが、コンピュータ・ウォーズはどうなることやら。
昨年の小さなレッド・ハット社ブース
今年のリナックス展示 レッド・ハット社だけで20ブース以上
山積みのフリーソフト「スター・オフィス」