第10回 インターネット日本の勘違い 2000年6月7日
第10回 インターネット日本の勘違い 2000年6月7日
インターネットについて多くの日本の企業が勘違いをしている。また、日本のインターネットの管理元であるJPNICも、前回ご紹介した米国のNetwork Solution社などとは比較にならないほど幼稚な体制でインターネットを管理している。今回は具体例をあげて日本のインターネット状況についてレポートする。 WebGendai
企業側の問題
●リンクお断り
数年前から、出版社に頼まれてCD-ROM辞書やインターネットのポータルサイト向けに、ホームページを調査する仕事を行っている。「コーヒー」なら上島珈琲のコーヒーの歴史などを紹介する仕事である。この際、リンクの了解をもらうのがインターネットの礼儀となっているが、「お断りします」という返事をもらうことが時たまある。
銀行や証券会社が多い。リンクされたくなければ、ホームページを出すなよ、と言いたくなるが、総会屋のページなどからのリンクに怯えているようだ。
●ドメイン名の認識不足
今回の連載でも「ドットコムを取ろう」と何回も書いたが、未だに、プロバイダーや大手制作会社の下にホームページを置いている例が見受けられる。数年前、社団法人 日本書籍出版協会からの依頼で、約100社の出版社のドメイン名取得を仲介し、ホームページの立ち上げをお手伝いした。
表現を重んじる出版社でなくても、自社のドメイン名は世界で唯一の商号なので、取得すべきである。
出版社のドメイン名を仲介した際、晶文社が取れるか心配した。地図の昭文社が先にホームページを開設していたのでダメかなと思ったら、Mapple.co.jpとなっていたので助かった。Mapple.co.jpは昭文社のページだが、Mapple.comは昭文社も出資したプロジェクトとなっている。.co.jpは会社のページ、.comはプロジェクトや製品のページという風に、.comドメイン名を上手く使う企業が増えてきた。
●事業部名付きメールアドレス
これは、最低である。世界の大企業でドットコム・カンパニーも目標にしている、SONYやNECが、未だにshimokawa@its.sony.co.jpなどという事業部名付きのアドレスを使っている。この2年間で3回も事業部名が変更になった知人がいて、アドレス帳の書き換えが厄介であった。
ひどい会社は、氏名@事業部名.事業所名.社名.co.jpなどとなっており、「事業部別に独立採算だから」とか、「メールサーバは事業部の資産だから」とか、「わが社はカンパニー制を導入しています」などともっともらしいことを言っているが、インターネットやメールアドレスについて、認識不足もはなはだしい。
余談だが、マイクロソフト社のドメイン名も滑稽である。日本のマイクロソフト株式会社の正式URLは、http://www.asia.microsoft.com/japanとなっており、asiaが余計である。マイクロソフトも大企業病にかかっている。
JPNICはアマチュア集団
このような、日本の後進性の象徴がJPNICである。トップページを比較すれば一目瞭然だ。JPNICはアルバイトの学生達がお役所仕事をしているような画面だが、Network Solutionsは「さあ、一緒にインターネットビジネスを始めましょう」といわんばかりのデザインである。
JPNICの問題点をいくつか指摘する。
●一貫性が無い
確固たる信念があるわけではなく、また、責任者も不在のように見受けられ、.or.jpから.ne.jpにネットワーク系ドメイン名を変更したり、1組織1ドメイン主義が批判されると、印鑑証明が2通あれば取得できる.gr.jpを作ってみたりと一貫性が無い。
また、city.yokosuka.kanagawa.jpなどの地域ドメイン制を後手に導入するなど、迷走運営が続いている。
niftyは、orからneへの移行が大騒動となったが、JPNICにいやけがさしたのか、最近nifty.comを使い始めた。
●ビジネスになっていない
JPNICは、「商売はしておりません」と思っているのであろうが、各社から登録料20000円を売り上げているので、立派なビジネスである。20000円を事前に指定銀行口座に振り込むなどという販売方法は止めにしてもらいたい。
eBusiness大流行の昨今、クレジットカードが使えないサイトも珍しい。法人相手だからと反論されそうだが、法人相手なら見積書や請求書を素直に出すべきである。
また、問い合わせに対しても、まるで機械で応答したかのような回答が戻ってくる。
●1組織1ドメイン名の功罪
数回にわたってドットコムを紹介したが、JPNICは1組織1ドメイン主義なので、製品名などで、複数の.co.jpが取得できない。Cyber Squatting(ドメイン名の不法占拠)防止には役立っているが、.comの自由な世界と比べると、いかにも窮屈である。
会社のページは.co.jpにして、商品やサービスごとに.comを取得して、インターネットビジネスを行う企業が増えている。JPNICの収益向上のためにも、自由な.co.jpの取得を期待したい。
このままでは、日本企業の.com利用が加速し、JPNICは裸の王様になりかねない。