第3回 電子政府とサーバーテロ 2000年2月2日
第3回 電子政府とサーバーテロ 2000年2月2日
IT(情報通信)革命が盛んに叫ばれ、日本政府も情報公開などでインターネットの世界に本格的に乗り出そうとしたときにクラッカーが水を差した。どうも世界中のクラッカーの標的にされた感もある。しかし、時代の潮流はせき止めることができないというのが下川氏の見方。事件を乗り越えてIT革命は一層進展していく。 WebGendai
クラッカーがgo.jpを攻撃
最近、ハッカーがホームページにいたずら書きをする被害が広がっている。
1月24日早朝に科学技術庁、25日に総務庁のサーバがクラッカーにアタックされ、トップページが書き換えられた。テレビでは、意味不明の英数字が並んだ画面が表示されていたが、ブラウザーの表示言語を中国語にすると、日本政府を非難する言葉が書かれていたようだ。
ファイヤー・ウォールという不正アクセスを防止する仕組みを組み込み中とのことで、これらのサイトは(2月1日)現在見られない。通常「工事中です」などの表示を出すのがルールだが、そうすると、またクラッカーが襲ってくるので、ブラウザー側が「時間切れでアクセスできません」というエラーメッセージを出すのにまかせてある。
総務庁統計局のコンピュータも侵入され、国勢調査などのデータが消されていたとのこと。このほか、運輸省、農林水産省、日銀などのインターネット・サーバ・コンピュータに不正にアクセスした形跡があり、世界中のクラッカーから狙われてしまったようだ。
日本の政府やマスコミの大変な騒ぎように機嫌を良くしたハッカー達が、官庁のホームページの上で、オンライン・パーティーを開いているようなものである。「どうだい、俺は統計局に入ったゾ」、「私なんか、サーバにIDとパスワードまで設定してあげたのヨ」なんて言うメールが、仲間うちを飛び交っているのだろう。
パーティーなので、1ヵ月もすれば飽きて、どっかに行ってしまうのだが、攻撃された日本政府としては対策に躍起になっており、目ざとい商社は、米国やイスラエル製ファイヤー・ウォールの売りこみに動き出した。コンピュータ・ウィルスとワクチンの関係と同じように、インターネットのサーバやブラウザーのセキュリティ・ホール(抜け穴)を狙うクラッカーとファイヤー・ウォールの関係も、いたちごっこなので、完璧なファイヤー・ウォールなど作れないのだが。
情報公開の動きは止まらない
日本政府のインターネットを使った情報公開は、この数年、急速に進んでいる。
2年ほど前、総理府統計局のホームページに行ったら、Excelの表が添付されていて感激したおぼえがある。統計局だから当然国勢調査の集計結果などの数字が多いのだが、表計算ソフトの生データのまま置いてあれば、グラフ化したり、解析したりと、非常に扱いやすくなる。
前回の「電子書籍コンソーシアム」で、画像であることを問題にしたが、文字ならテキストにすべきだし、数字なら、羅列よりも表データになっていたほうが、計算式なども判って便利である。いつも数字と格闘している若手の官僚が、真剣に考えたサイトとなっており、好感を持った。
政府は2003年までに、すべての資料をデジタル化する方針で、国会議事録のデータベース検索、国会図書館の電子図書館プロジェクト、政府調達の電子化、住民基本台帳ネットワークなどの巨大プロジェクトが進んでいる。
すでに国会会議録検索システムでは、だれが(国会議員などをメニューで選択)、いつ(1997年以降の期間を指定)、どこで(本会議や委員会をメニューで指定)、どんな(キーワードを入力)発言をしたのか、を検索して、瞬時に議事録がブラウザー画面に表示される仕組みが出来上がっている。あなたが一票を投じた代議士が、国会でどんな発言をしているのか、検索してみて欲しい。
話はそれるが、紙の雑誌ならここで、ブラウザーの画面を4、5個並べて、解説しなければならないのだが、Web現代なら、別ウィンドウに「国会会議録」を開いて、実際に読者に使ってもらいながら、説明できる。これもインターネット出版の大きな利点である。
国会の答弁など、時々新聞に載っているものを見る程度だったが、ここまで生の情報が公開されると、新聞や雑誌の役割も変わらざるをえない。今まで「紙に転載」することに意味があった資料が、「ホームページにリンク」で済むことになる。近い将来、「国会を読む!」などというサイトが登場し、国会会議録にどんどんリンクを張って解説しはじめるかもしれない。これはまさしく新聞の政治欄のインターネット版である。
日本政府のやる気に、今回のクラッカーは水を差したのだが、日本のIT革命も間近に迫っているので、インターネットを使った情報公開の動きは止まらないだろう。
次回は、政府の情報公開の最先端、「インターネット官報」をご紹介する。