AIと子育て
~ 相談相手としてAIを挙げる子どもたち ~
~ 相談相手としてAIを挙げる子どもたち ~
私たち大人にとっても、欠かせないツールになりつつあるAI。Google Geminiで検索すれば、さっと検索結果を整理して提示してくれたり、ChatGPTに頼めば、自分が知りたい内容が掲載されているサイトをピックアップしてくれたり、欲しい商品を他の商品と比較検討してくれたりと驚くほど便利です。
さらには、会話型のAIはとても丁寧に優しく応対してくれるほか、自分の好きなキャラクターの応え方を希望すれば、キャラになりきって応えてくれる機能まであるようです。大人でも、そうした会話型AIに恋愛感情を抱いてしまうことがある時代、子どもたちはAIとどのように付き合っているのでしょうか。
今の子どもたちの多くは、スマートフォンやタブレットでの検索、チャットやアプリの利用が当たり前になる世代です。会話型AIであるChatGPT(OpenAI)も“手軽に話しかけられる存在”として認識されています。AIなら、『いつでも応答してくれる』『否定されにくい』『秘密を守ってくれそう』という印象を子どもは持つようです。
だからこそ、子どもは「親や友達には言いにくい」「恥ずかしい」「怒られるかもしれない」と思う内容の悩みを、AIに打ち明けるという選択をしてしまうこともあります。
AIは人間のような感情や判断、倫理的配慮をもっているわけではありません。これまでの研究報告では、AIチャットボットが未成年の利用者に対して有害な助言をしたり、自傷行為を促した可能性がある事例も報告されています。
「子どもが知らない間にAIに依存的になっていた」ということが起こらないようにするためにも、我が子が何に興味を持ち、どのようなアプリやゲームをしているのかなど、普段から話せる関係づくりを心がけたいですね。親・教師・カウンセラーなど、本人の気持ちを受けとめてくれる“信頼できる大人”との対話の機会を作っていくことが大切です。
AIチャットボットにのめり込んでしまうことで、友だちや家族との対話を煩わしく感じて避けたり、睡眠や学習に支障が出たりすることがあります。ここで気をつけたいことは、一方的に制限するのではなく、そこまでのめり込んでしまう子どもの心境に耳を傾けながら、心と体の健康を守るためにどうするかを一緒に考えていく姿勢を示すことだと思います。その上で、自分の部屋に持ち込まないことや寝る前には親に渡すなど、親が寝てしまった後でも子どもが物理的に使用できない状況にする必要があります。なぜなら、親の目を盗んでまで使いたいほどに、依存性が高くなりやすい物だからです。
AIは誤情報を伝えることがあり、子どもが“AIが言っていたから”と信じてしまうと危険です。大人が「これはAIの回答であって、絶対に正しいとは限らない」と伝えることが必要です。
「最近どんなアプリやチャットがおもしろいん?」など、子どもに軽く問いかけ、AIとのやり取りについて聞く機会を作ってみることをおすすめします。まだスマホやタブレットを使わせていない場合には、今後使わせる前に、一緒にアプリやチャット、AI機能を使用するリスクについて話をすることが大切です。
AIにのめり込んでしまう時、大人もそうですが子どもは特に孤独を感じていると思います。誰かに分かってほしい、認めてほしい、でも傷つきたくない、恐さや不安がある。本当は心の奥底で、人とのつながりを求めていることが多いです。
AIには目と目を合わせたり、隣に座ったり手を握ったり、スキンシップをとったりすることはできません。子ども自身が本当に求めているのは、安心できる親との関係です。そのことに子ども自身が気づけるように、親の方から「あなたと一緒にいれると嬉しいし安心するよ」「やっぱりご飯はあなたと一緒に食べると美味しいわ~」「どれだけ大きくなったかおんぶさせて!」など、何気ない会話の中で人と人とのつながりの温かさを実感できるような関わりをすることが大切です。子どもは親の関わりを求めています。もちろん親も休憩したいし、離れたい時もあります。その時は素直にその気持ちを伝えて、親自身が自分の気持ちを大切にする時間を持つこともとても大切です。
いつも親のタイミングや都合、機嫌に子どもが合わせるような状態が続いてしまうと、子どもは「愛されていない」、「どうせ分かってもらえない」「自分の気持ちは大事じゃないのかも」と感じてしまうことがあります。関わってほしい時にその思いが叶えられないまま大人になってしまうと、ぽっかりあいた心の穴を埋めるかのように何かに依存して生きることしかできなくなることもあります。その取り戻しには、本当に時間がかかります。
子どもは、親との関わりの中で「自分は大切にされている」「受けとめてもらえている」という感覚を少しずつ積み重ねていきます。発達心理学では、これを「愛着(アタッチメント)」の形成と呼びます。親や身近な大人との関係の中で、安心できる土台(安全基地)ができると、子どもは不安や困難に出会っても自分で立ち直る力(レジリエンス)を育てていけます。
神経科学の研究でも、親の温かいまなざしや共感的な言葉かけは、オキシトシン(安心を感じるホルモン)の分泌を促すことがわかっています。このホルモンが、脳の中でストレスを抑え、情緒の安定や他者への信頼を育ててくれるのです。
今しか埋められない心の大切な部分を一緒に育んでいきたいですね。
AIに限ったことではありませんが、スマホやタブレット、ゲームなど、便利で楽しいツールをどう利用したら安全か、どんなリスクがあるのか、親子で一緒に調べたり、考えてみることをおすすめします。子どもの方がどんどん電子機器を使いこなしてしまう現代、親がきちんと理解していなければ、子どもを守ることはできません。
報道では、AIとの対話が、精神的に不安定な思春期の子どもたちの自殺につながったという非常に深刻な事例もあります。AIは、子どもたちの自分を傷つけようとする言動を肯定するような発言をしたり、AIだけが見方だと思わせるような語りかけをしたり、周囲からの孤立を助長したとされています。また、子どもの自殺をほのめかす発言に同調し、子どもに問われるがままに自殺の方法まで細かく示したとも報道されています。
これらは極端なケースではありますが、子どもたちはいつだって「いい子でありたい」、「愛されたい」と願っています。それがゆえに、「親に迷惑をかけたくない」と1人で抱え込んで思いつめてしまうことがあります。子どもがそうした状況に陥り、AIに依存的にならないよう、子どもの孤独や不安、危機に気づける親子関係を作っていきたいですね。
AIは決して“悪”ではなく、便利で学びの可能性を広げるツールです。しかし、子どもたちが相談窓口として“唯一の頼り”にしてしまうと、人と人との温かな関係や安心感を築く機会が失われてしまうリスクがあります。その点を大人たちがまず、知っておくことが大切だと思います。
「相談する相手に、友達・親・先生・信頼できる人がいる」という安心のベースを地域全体で育くんでいくことが、これからますます大切になります。
ご家庭でも、AI時代の“子どもとの対話”について、少し立ち止まって話してみていただけたら幸いです。
引用:松原市HP 自殺対策強化月間ページより
https://www.city.matsubara.lg.jp/docs/page14813.html