子どものおねしょ(夜尿症)の話

~我が家の小学2年生男子のおねしょ卒業をめざす道のりをふりかえって~

1年生でおねしょしてたら夜尿症?

 子どものおねしょ(夜尿症)は、だいたい小学生1年生になる頃にまだおねしょをしている場合に診断されることが多いです。夜尿症の細かい定義は、参考資料によると「5歳以上で1か月に1回以上の頻度で、夜間睡眠中の尿失禁を認めるものが3か月以上つづくもの」とされています。小学1年生で夜尿症は10%ほどいると言われ、その後はほとんどの場合、自然に治って大人までに減少していきます。

そもそもおねしょって治療した方がいいの?

 確かに、放っておいても大人になるまでには自然治癒していくことがほとんどですが、高学年になると5年生の林間学校や6年生の修学旅行があるため、それまでに親の心配や不安を軽減させたり、子ども自身の自尊心が低下しないように治療しておくことも一つの方法かと思います。ただし、一番大切にしなければならないのは、子ども自身の気持ちです。親だけでなく、子ども自身が「治したい」という気持ちを持たなければ治療を継続することは難しくなります。

 私自身で言えば、子どもにおむつをさせているものの、多尿のために夜間におむつから尿が漏れ出て衣服や布団が濡れてしまうことも頻繁にありました。子どもの体が冷えないかと心配で何度も確認するために起きたり、実際に漏れてしまったら衣服からシーツまで替えなければならなかったりと、特に冬に負担が大きいと感じていました。子ども自身も、祖父母宅でのお泊まりや親戚とのお泊まりで、おむつをしていることに恥ずかしさを感じているようでした。

 

 そこで意を決して治療をしようと小児科(あるいは小児泌尿器科)へ行ったのですが、夜尿症の原因を探るために尿量を自宅で測定したり(膀胱に年相応の尿量が溜めれるか確認したり、夜間の尿量や尿の濃さを測定するため)、朝一番の尿を採尿して持参しなければならなかったりと、なかなかに面倒なこともありました。さらには医師の勧めで処方してもらった内服を我が子が嫌がって飲まないという事態になり、子どもの気持ちを尊重して治療をストップし、自然治癒に任せようかと考えていました。そんな中、友人がアラーム療法を自分の子どもに実施した効果を教えてくれました。私も医師から説明を受けてはいたものの、保険適用ではないので実費がかかることや効果が本当に得られるのかという不安もあり、選択できずにいました。友人の実践とその効果に勇気をもらい、実際にやってみようと親子で挑戦することにしたので、まだまだ知られていないアラーム療法についても、皆さんにお伝えしていきたいと思い、今回は夜尿症をテーマとしました。

どんな治療方法があるの?

 そもそも、治療法は夜尿症の原因によって異なります。治療は、基本的な生活習慣の見直しをベースにしつつ、原因に応じた方法を選択できます。

 夜尿症の原因は、睡眠中に膀胱に尿がいっぱい溜まっても、尿意を感じて目をさますということができない覚醒障害が基礎にあります。この覚醒障害に加えて、膀胱に尿を溜めれる容量が年齢相応の大きさよりも小さい場合や、膀胱のコントロールが未熟で膀胱に尿が溜まると膀胱が勝手に収縮して排尿してしまう場合などがあります。他にも、十分な抗利尿ホルモンが夜間に分泌されないために夜間でも尿量が多くなってしまう場合もあります。

 ちなみに、我が子の場合は、膀胱はギリギリ年齢相応の容量がありましたが、覚醒障害に加えて、抗利尿ホルモンの分泌が不十分で夜間でも尿量が多くなってしまうというケースでした。

 

 それでは早速、家庭でもできる対策や、原因に応じた治療法にどんな種類があるのか見ていきましょう。

<基本的な家庭でできる対策>

① 無理に夜中に起こさない(アラーム療法時をのぞいて)

 夜の入眠中には、尿量を減らす抗利尿ホルモンが分泌されます。良かれと思って、就寝中にトイレのために無理に起こすことは、抗利尿ホルモンの分泌を阻害する可能性があるので、アラーム療法などの治療の一環として行う場合をのぞいて、無理に起こさないようにしましょう。

② 夕方以降の水分摂取を控える

 夕食を早めにすませ、その後の水分摂取を控えることで、夜間の尿量を減らします。午前中は水分をしっかりとり、夕食の後は、コップ1杯までにします。 

③ 規則正しい生活リズムを整える

 不規則な生活習慣は夜尿を悪化させたり、大切な子どもの成長を阻害するため、規則正しい生活リズムを整えることが大切です。早寝、早起き、早めの夕食を心がけましょう。

④ おねしょをしても、怒らない

 きっと一番恥ずかしくて治したいと思っているのは子ども自身です。怒ってしまうと逆効果になるだけでなく、自尊心を傷つけてしまうので気をつけましょう。

<原因に応じた治療法>

① 容量が年齢相応より小さい場合の膀胱訓練や服薬

 昼間にもお漏らしがあるような、ある程度膀胱に尿が溜まると膀胱が勝手に収縮して排尿してしまう場合はできませんが、そういった症状がない場合は、日中に1回は尿意を我慢して膀胱を大きくするための訓練も必要です。もちろん毎回排尿を我慢してしまうと、尿路感染を引き起こすことがありますので、1日1回程度にすることも大切です。ちなみに、年齢相応の膀胱容量は、(年齢+2)×25 ミリリットルだそうです。

 尿を多く膀胱に蓄えられるよう膀胱機能を安定させる作用をもつ抗コリン薬(内服薬)もあります。ただし、内服薬には副作用もありますので、必ず医師と相談し、容量と用法をしっかりと守るようにしましょう。

② 十分な抗利尿ホルモンが分泌されないために夜間でも尿量が多くなってしまう場合の服薬

 尿を濃くして夜間の尿量を少なくする作用をもつ抗利尿ホルモン薬(内服薬、点鼻薬)があります。ただし、こちらの薬を使う場合には、夕食後に水分を摂りすぎると水中毒を起こす危険もありますので、水分摂取のコントロールが必要です。また、抗コリン薬と同様、副作用もありますので、必ず医師と相談し、容量と用法をしっかりと守るようにしましょう。

③ 夜尿症の基礎となっている覚醒障害をはじめ、膀胱容量が小さい場合や夜間尿量が多い場合にも効果的なアラーム療法

 アラーム療法とは、センサー付きのおねしょパッドに少量でも排尿された瞬間にアラーム(振動も付けれる)が鳴って覚醒を促すことで、睡眠時に尿意を感じたら自分で起きることができるようになります。また、この装置を開発した上杉達也医師によると、アラーム療法により睡眠中の膀胱容量が増える、夜間尿量が減るといった効果も現れやすく、再発率も薬物療法に比べてかなり低いと言われているようです。薬を内服することによる副作用もないことが親としては安心できるポイントですね。

出典:おとなとこどもの仙川泌尿器科のホームページ「おねしょアラーム」https://www.uesugi-uro.com/alarm/

 具体的には、上記の使用イメージのように、センサー付きの特殊なパッドを普段履いているパンツに付け、排尿が少量でもあれば、右側の装置からアラームが鳴るという仕組みです。パッドには送信機をつけますが、コネクターなどはなく独立しているので、普段日中はいているパンツにも無理なく収まり、寝返りなどを阻害することはありませんでした。

 ただし、保険適用ではないため、参考にした「ピースコール」という装置の場合、初期費用として装置のレンタル(初回~3ヶ月目まで各月¥2,200(税込))と1ヶ月分のパッドの購入(1袋30枚入り1,914円)で、4000円ほどかかります(2023年11月時点)。ただ、毎月のおむつ代(夜用でビッグ以上のサイズになってくると、なかなか費用がかさみます)がかからなくなることを考えると、そこまで家計に負担はないのかなと思います。私は心配性なのでパッドを普段のおむつにつけようかとも思いましたが、そこまでしなくてもパッド以外のものまで濡れるということはありませんでした。なので、アラーム療法中はおむつは不要となりました。装置のレンタル代は4ヶ月目以降(そこまでに治療を終えたい気持ちは山々ですが)は、レンタル代が¥1,100(税込)、5ヶ月目→¥660(税込)、6ヶ月目→¥440(税込)と財布に優しくなっていきます。

 アラーム療法を開始した場合には、基本的に3ヶ月以上は治療を継続しないといけないと私は医師から聞いていたので、毎月パッドを買う送料を考慮し、パッドは初回の装置レンタルの際に3か月分をまとめて購入しました。

我が家の治療経過

 現在、治療開始からちょうど3か月が経過しました。始めの1~2週間は、毎晩夜中にアラームの音で親子ともども飛び起きてトイレへ排尿に行くということが続きました。それまで息子は、おもらしをして私が服や布団を引きはがそうが何をしても全く夜間起きないタイプでした。なので、アラームでそもそも起きないのではないか?と心配していましたが、アラーム装置は音量の調節やメロディの選択ができて、さらには大きめの振動まであるので、さすがの息子も大抵起きることができていました。ただし、あまりにアラームや振動がうるさいので、寝ている他の兄弟が起きないかと心配でつい私が先にアラームを止めてしまうこともありましたが。。。そして、アラームで起きてトイレで排尿できた翌朝、「アラームに気づいてちゃんと起きて、トイレに行けたね!」と誉めても、残念ながら本人は「え?僕、起きてトイレに言ったの?」と全く覚えていないという夢遊病状態がほとんどでした。そんな状態だったので、こんな状態で上手くいくのか?と心配でしたが、2週間を経過した辺りから週に2度ほど朝までアラームが鳴らず、夜間尿がないということが起こり始めました。その後も週に2回ほど夜間尿が全くないことが続き、2ヶ月目以降は、週に3,4回と夜間尿がない日の頻度が増えました。3ヶ月目に入るとアラームが鳴る日が週に0~1回程度までなくなり、ほぼ毎日夜間尿がなくなりました。朝までゆすっても起きないような息子が、朝方に自分から起きて「おしっこ行く」と言うことさえありました。

 細かい検査は受けていないのでわかりませんが、アラーム療法の効果として挙げられている睡眠中の膀胱容量が増える』『夜間尿量が減る』、といった効果が出てきたのかもしれません。アラーム療法は薬物療法ではないため、再発率も低いと言われているようです。

 もちろん、こうした治療経過は個々人によります。我が家では内服も本人が嫌がったのでできませんでしたが、ありがたいことにアラーム療法の治療効果が見えてきたところです。夜尿の話はなかなか相談しにくい部分かもしれませんが、いつでもお気軽に保健室までご相談ください。

<参考資料>

・日本泌尿器学会:『おねしょ』(夜尿症)が治らない  https://www.urol.or.jp/public/symptom/09.html

・おとなとこどもの仙川泌尿器科のホームページ「おねしょアラーム」  https://www.uesugi-uro.com/alarm/