コラム⑦「子どもの思春期到来!する前に、性教育を始めるススメ」

〜「赤ちゃんってどこから出てくるの?」子どもたちの興味関心を学びにつなげる〜

1.子どもの興味関心を学びにつなげる性教育

 今日のお話のテーマは、「性教育」についてです。余談コーナーとして、「左利きと同じ割合いると言われる性的マイノリティについて知っておくススメ」のお話もさせていただきます。

 「そんなに早くから性教育する必要なんてあるの?」「悪影響があるんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、1人1台タブレット時代の今、親の知らない間に子どもたちが過激で誤った情報にアクセスしてしまったり、性被害に巻き込まれる危険が増えています。そんな今だからこそ、性に関する正しい知識を子どもたちに身につけさせることはとても大切だと思います。そうすることで、子どもたちが性犯罪の被害者や加害者になることを予防できます。また、ジェンダー平等や性の多様性を含めた一人ひとりの人権を尊重できるような人間に成長することができると思います。性教育は、一人ひとりが自分や周りの人を大切に思いやり、豊かに生きることにつながります。

 別府小学校では、1年生に「おしえてくもくん」という絵本教材を用いて、プライベートゾーンに関する保健指導を3学期の1月に行います(昨年度は1・2年生に実施しました)。4年生は2学期に心と体の成長を学習するので、その導入として9月の保健指導で心と体の成長に関する内容を実施しました。5年生は「赤ちゃんふれあい体験」授業を9月に実施し、林間に向けた性教育も行う予定です。6年生は1月に、にじいろアイルさんの講演会を予定しています。(体験授業や講演は、新型コロナウイルス感染症の状況により変更や延期、あるいは中止されることもありますのでご理解ください。)

 「おしえてくもくん」の教材では、水着で隠れる部分がプライベートゾーンであり、口も含めて、自分だけの大切な場所であることを伝えています。他の人のプライベートゾーンを見たり触ったりしてはいけないこと、他の人に自分のプライベートゾーンを見られたり触られそうになったら「いやだ」とはっきり伝えることが大事だよというお話をします。面白がって友達のズボンを下げたり、ふざけて友達のおしりに浣腸をしたりしてはいけないこと、浣腸はけがをさせる可能性があることも併せて説明します。

「おしえて!くもくん」〜プライベートゾーンってなあに?〜

【著者】監修:小笠原和美 / 制作:サトウミユキ / 企画:masumi

ご興味のある方はこちらのサイトをご覧ください。https://kumokun.themedia.jp

 発達が早い子どもの場合、4年生ごろから第二次性徴期が始まります。そのため、自分達の心と体がこれからどのように変化していくのかを知ってもらうために、保健指導では絵本を題材にしたパワーポイントを使った学習を行います。

 その題材となるドキドキワクワク性教育の絵本「大切なからだ・こころ」では、女の子や男の子が大人になるにつれて見た目にはどのような変化があるのか、見た目には分かりにくい性機能の発達はどのようなものか、こころの変化によってどんなことが起こるのかがわかりやすく説明されています。他にも、プライベートゾーンのお話や、性被害に遭わないためのお話、気持ちを伝えることの大切さや伝える言葉を選ぶことの大切さを考える機会にもなる教材となっています。SNSでのトラブルや普段のコミュニケーションにおけるトラブルも多くなる時期ですので、自分が言った言葉を相手はどう感じるかということを考え、自分の気持ちをうまく伝えたり、相手の気持ちを聞き入れるということを身につけてほしいなと思います。

ドキドキワクワク性教育「大切なからだ・こころ」

【監修】村瀬 幸浩 /【絵】いがらし あや

 「赤ちゃんふれあい体験」は、摂津市内全ての小学校で長年続けられている実践授業です。助産師さんに学校へ来ていただき、妊娠中のお母さんや胎児のお話、助産師さんの仕事のお話を主にしていただきます。その後、重さが3キロあるリアルな赤ちゃん人形を用いて、抱っこをしてみたり、着替えを行う実習をします。実際に小さな赤ちゃんがいるご家庭や教職員へ依頼をして、赤ちゃんとその保護者にも参加してもらうことがあります。その事前授業として、養護教諭が担任の先生と連携し、子どもたちが4・5年生で学習してきた「(第二次性徴期の)心と体の変化」、「生命の誕生」を復習しながら、受精から妊娠中のお母さんや胎児の変化、出産、生まれてから1歳までの赤ちゃんの成長についての学習をします。

今年のふれあい体験の様子は別府TUBEにも掲載されていますので合わせてご覧ください。

https://befusho.blogspot.com/2022/09/blog-post_12.html

 赤ちゃんふれあい体験を通して、生命の尊さ、一人ひとりが奇跡的な受精・妊娠・出産という過程を経て誕生してきたこと、赤ちゃんの頃は特に自分では何もできなくてお家のいろんな人にお世話になってきたこと、ここまで無事に成長できたことへの感謝が感じながら学び、自分や周りの人たちの命の大切さを改めて感じ考える機会としたいと思っています。

 また、5年生では、ドキドキワクワク性教育シリーズの絵本「大切なからだ・こころ」に加えて、「女の子が大人になるとき」「男の子が大人になるとき」を活用して、月経や精通のお話、女子にはナプキンの使い方などのお話もさせていただきます。一人一人の成長の時期やその起こり方も違っていること、誰一人として同じ人はいないから周りと比べて悩むこともあるかもしれないけど大丈夫だよと言うことをお伝えしたいと思っています。これから、お家でも子どもの変化に戸惑うこともあるかもしれませんが、成長しているんだなぁと思い、温かく見守り、いつでも相談にのってあげるよというメッセージをぜひ伝えてあげてください。

2.左利きと同じ割合いると言われる性的マイノリティについて知っておくススメ

 性的マイノリティと言われる人たちの割合は、最新の調査によると左利きの人の割合やAB型の人の割合と同じぐらいいると言われています。


 これって結構多いですよね?でも実感が湧きにくい方もいらっしゃると思います。なぜなら、出会ってないと感じる人が多くいらっしゃると思うからです。でも実は、「出会っていても気づいていない」のかもしれません。日本ではまだまだオープンに性的マイノリティの人が自分の性について語れない雰囲気があることが関係していると思います。

 私は専門分野や職業柄、そういったことに触れる機会も多く、さらにはたまたま行ったタイでのホームステイの経験も合わさって、私の周りには多くの性的マイノリティの友人がいます。看護師時代には、見た目は男性で男性が好きな看護師さんがいて、女性の看護師にはやたらと厳しかったり、お茶目な振る舞いをする人に出会ったことがあります。タイという国は日本とは違って、自分の性をオープンにしても受け入れてもらえる文化があるようで、私は15年以上前に行った田舎の村で衝撃を受けた経験があります。村の学校の先生が、男の子の制服を着たがっちりした体格の短髪の子どもを指差して「彼は女の子なの。」と笑顔でみんなの前で紹介してくれて、それに対して周りの子どもたちも満面の笑顔で「そうなの!」「彼はダンスが得意なのよ!」と教えてくれた時、カルチャーショックを受けました。そして、可愛いダンスをみんなの前で堂々と嬉しそうに披露してくれたその子どもを見て、「あぁ、自分を素直を表現できて、それを受け止めて認めてくれる仲間がいるって素晴らしいなぁ。」と思いました。 

 最近では、そのタイでホームステイしていたホストファミリーの子どもたちからFacebookで連絡が来たと思ったら、二人の男の子のうち、一人は女性の体つきの見るからにスレンダーな女性になっており、もう一人は見た目はそのままの男性に成長していましたが、「彼氏ができたの!」と嬉しそうに報告してくれました。ホストファミリーの親御さんたちもとっても温かく、いつも仲良さように過ごしている様子を見ると、なんだかいいなぁと思ってしまいます。

 実は、自分の性に違和感を感じたり、人と違うなと性的マイノリティの方が思い始めるのは、小学生までの時期だったという方も多くいらっしゃるのです。正直、私自身、他人事ではないなと思っていますし、自分の子どもに対しても常に、勝手に性的な決めつけをしないように気をつけています。しかし、まだまだドラマやCM、コメディなどに止まらず家庭や世間などさまざまな場面から受け取るメッセージは「男らしい」「女らしい」を良しとする風潮であったり、それが「普通」「当たり前」といった偏った常識ではないでしょうか。

 こうした日本では、性的マイノリティの人が直面する壁がたくさんあります。中でもやっぱり私が心配しているのは「自分は変なんじゃないか?」「こんなことを知られたらみんなに嫌われたりいじめられるんじゃないか?」「親にも誰にも言えない。」といったことです。実際に、性的マイノリティの方の方が自殺を考えたことがある人が多かったりと精神的な危機に直面する可能性があります。今もうすでに、素直な自分を表現できない苦しみを抱えた子どもたち、まだその苦しみには出会っていなくても自分の性に関する違和感を抱き始めている子どもたちがきっといます。そのことを保護者の皆様には知っていただき、ぜひアンテナを張ってみていただきたいなと思います。


 そしてもしも、「実は悩んでるんです。」と言って自分の子どもや友達の子ども、あるいは周りの友人が打ち明けてくれた時には、「伝えてくれてありがとう。」と受け止めてあげてほしいのです。「そんなの気のせいだよ」とか「そんなこと考えちゃダメ」なんて言わずに、しっかりとどんな思いを抱えてきたのかを聞いてあげてほしいです。打ち明けるには、大きな大きな勇気がいります。その勇気を振り絞って伝えたかった相手に、ちゃんと受け止めてもらえなかった悲しみやショックは計り知れません。もちろん驚きや衝撃もあるかもしれませんが、否定せずに聞いてあげてほしいなと思います。

 次に、そんな時にも冷静に対応できるように、多様な性についての理解を深めておきましょう。

 身体の性とは関係なく、男性を恋愛対象として好きになるか、女性を恋愛対象として好きになるか、どちらも恋愛対象として好きになるか、どちらにも恋愛感情を抱かないか、といったことを性的指向と言います。

 同じように身体の性とは関係なく、自分を男性と思うか、女性と思うか、どちらにも当てはまらないと思うか、といったことを性自認と言います。

 他にも、どんな言葉づかい、服装、しぐさをしたいか、といった社会的な性別をどう表現したいかを性表現と言います。

 こういった内容をLGBTQ+とかSOGIなどという表現で聞かれたこともあるという方もいるかもしれませんね。


 現在では多くの市区町村で性の多様性について理解を深める動きがあり、その中での説明をお借りして説明すると以下の通りです。(東京北区の「性の多様性について考えてみよう〜性的指向と性自認〜のHP掲載内容を抜粋しています。https://www.city.kita.tokyo.jp/tayosei/lgbtleaflet.html

SOGI(ソジ)とは、「sexual orientation」(性的指向)と「gender identity」(性自認)の頭文字をとったもので、性の構成要素に注目し「人の属性を表す略称」とも言われています。異性愛の人なども含め、個々人が持っている属性のことを言います。

LGBTQ+とは、「Lesbian」(レズビアン、女性同性愛者)、「Gay」(ゲイ、男性同性愛者)、「Bisexual」(バイセクシュアル、両性愛者)、「Transgender」(トランスジェンダー、出生時に診断された性と自認する性の不一致)、「Queer」(クイア、特定の枠に属さない性のあり方)または「Questioning」(クエスチョニング、自らの性のあり方を決めない人、定めない人)「+」(プラス、性のあり方は多様であり、上記以外のすべての性のあり方を表す包括的な意味)の頭文字をとったものです。

 私としては、誰一人として同じ人間がいないように、性に関しても誰一人として同じ人間はいないのかもしれないなと思っています。LGBTQ+やSOGIといった言葉を知って、「完全にこれに当てはまる!」といった人もいる一方で、「どこにも当てはまらない」と感じる人もいると思います。そうした悩みや苦しみを相談できる、大切な人と分かち合えることが大切です。私が出会ってきた性的マイノリティの方が一番辛そうだったのは、親に理解してもらえないことでした。親としても子どものためを思うがゆえに、いろんな思いが込み上げてきて、受け入れられない、受け止めきれないこともあるかもしれません。それでも、愛する子どもをひとりぼっちにさせないために、かけがえのない笑顔を守るために、少しずつでも受け入れてもらえたらと願います。親も悩んで当たり前です。親自身も自分のせいだなんて決して思わず、悩んだ時はぜひ相談してください。一緒に、子どもたちの未来を守っていきましょう。