自分らしく生きる子どもが育つとき
〜自分らしさってなんでしょう?自分らしく生きるって簡単なことじゃない〜
自分らしく生きる子どもが育つとき
〜自分らしさってなんでしょう?自分らしく生きるって簡単なことじゃない〜
今日は様々な子育ての悩みをかかえる保護者のみなさんと一緒に、学校教育目標にも掲げられている「自分らしく生きる」子どもについて考えたいと思います。
まずは、私たち大人自身について考えてみましょう。保護者のみなさんは、自分らしく生きていますか?私は、まぁまぁ自分らしく生きているかなぁという感覚です。自分らしさって、なんでしょう?改めて考えてみると難しいですが、たとえば何が好きで何が嫌いか、何が得意で何が苦手か、どんな性格かといったことの他にも、何を大切にしているかといった価値観や信念、人との関わり方などもその人らしさが表れやすいですね。
好きな食べ物も好きなこともだいたい自分でわかるけど、どんなことに傷つきやすくてストレスを抱えやすいのか、弱い部分って見えにくかったりもします。価値観や信念を、自分はこうですって語れる人は案外少ないのではないでしょうか。そして、そうした自分らしさは、年齢を重ね、様々な経験を積み重ねていくことによって変化していくものでもあります。
そう考えると、子どもたちはまだまだ自分らしさの発展途中。自分の好き嫌いが幼い頃から強く表れる子もいれば、のんびり屋さんだったり優柔不断だったり飽きやすく好き嫌いが変化しやすい子だったり、子どもたちは個性豊かですよね。ただ、物事の捉え方に影響する価値観や信念は、家庭での親の関わり方や親の考え方、振る舞いが反映されやすいと言えます。特にトラブルが生じた時に、子どもの言い方や振る舞いが親にそっくりでギクリとしたことがあるのは、私だけではないと思います(反省の意を込めて)。
実は好き嫌いや得意不得意も、「うちの子、こんなところがあってね〜」なんて、何気なく親が親族や友人、先生らに話すことをそばで聞いていた場合、子どもは『自分はこうゆう性格なんだ』と認識し刷り込まれることもあります。肯定的な側面なら自信につながることもあるのですが、否定的な側面には注意が必要です。なにげない一言を、子どもはよく聞いて覚えています。それはつまり、子どもは親の影響を受けやすいだけでなく、その後も影響が続くことがあるということです。その後に、子どもが様々なことを学び体験して自分らしさに変化の兆しが表れても、『どうせ自分はこうだからできない』と、その変化や成長にストップをかけてしまうこともあるかもしれません。
子どもは、親に「ああしなさい」「こうしなさい」と言われているうちに、「こうでなければ自分は愛されない」「いつも叱られる自分は価値がない」「どうせこんな自分は愛されない」と愛が枯渇しやすい生き物でもあります。特に兄弟と勝手に比べて、「自分の方が愛されていない」と拗ねてしまうことは、どの家庭でもよく起こります。それほど、子どもは『自分だけをもっと愛してほしい、見てほしい』『愛されるような自分になりたい』と願っています。子どもは、とても正直で愛に貪欲なのです。愛を受けることで生きるエネルギーを貯めていきます。
日々の生活にも追われる親としては、「これ以上どうしろって言うんだ」「こんなに世話も精一杯関わってもいるのに」と、途方に暮れる想いに駆られることもあるかもしれませんが、子どもって不器用な生き物だな~自分もそうやったんかな〜ぐらいに捉えていただけたらと思います。保健室でも、子どもたちは、「私(僕)の話を聞いて!」と割り込んでくることがしょっちゅう起こります。どの子もみんな大切なので、順番に!と思いますが、「先生、はやく話聞いてや!」と怒られることもしばしば起きます。平等に子どもの愛を満たすって、本当に難しいですよね(笑)
さて、子どもが、自分らしさに気づいたり、自分らしさが育つときってどんな時だと思いますか? それは、「今のままでも自分は愛されている」という安心できる実感のもと、何か夢中になれるものを見つけたり、親を気遣う忖度抜きに自分で選んだり決めたり挑戦する体験ができたり、自分の思いや考えを否定されることなく受けとめてもらえる経験をした時です。
親は、そうした環境を整え、待つ。成長を、じっと待つ。失敗だって、立派な経験。我が家では、子どもが同じ失敗を繰り返したりすると「また!?」とついつい言ってしまうこともありますが、なるべく「ナイス失敗やな!次、どうする?」と声をかけるようにしています。失敗しないようにと、先回りはしないこと。焦ったくて、お節介したくなるし言いたくなる気持ちをグッと堪えるのが親の仕事。命と健康を守る枠組みだけは譲らずに守りながらも、やりたいことをやらせてみると子どもは自信をつけ、自分の得意と好きを増やしていきます。そして、失敗を通して、苦手や不得意にも気づき、その対処法を考えるようになります。
親は子どものことを一番よく知っていると思いがちですが、考えてみましょう。小学生になった子どもは、親の知らない時間を少なくとも平日毎日6時間、4年生以上なら友達と夕方まで遊ぶ時間を加えると9時間以上過ごしています。そこでは友達との関わりがあり、新たな学びがあり、遊びや体験的な授業など、本当に毎日目まぐるしいほどに刺激を受けて過ごしています。そこには、親の知らない子どもの姿があります。そこでの姿もその子らしさであり、社会で生きていく練習をして成長しているひとときです。
親としては、成長していくにつれ見えない部分が増え、「うちの子、全然話もしないけど大丈夫かしら?」「学校はちゃんと見てくれてるのかな?」など、不安や心配が膨らんで疑心暗鬼になることもあるかもしれませんが、子どもは案外しっかり悩み考え、成長しています。不安な時は、ぜひ大人のつながりを作ってください。いろんな方と話をしていると、「あ~思春期はそんなもんかぁ」「うちだけじゃないのね」などと思えたり、話を聞いてもらえることで少し気持ちが楽になることも多いです。福嶋にも、いつでもご相談ください。
最後に、親自身が自分らしく生きている姿は、子どもにとっても良い影響があります。自分が我慢してた方が楽だからと、子育てをしていると、ついつい親自身が自分を二の次にしてしまうこともあると思いますが、自分の好きなことや楽しみもぜひ大切にしてくださいね。