さて、「探究」ということばを深掘りしたが、今度はそれを学校で行われる探究「学習」というところまで突き詰めてみよう。
「探究」とは、「インターネットでちょちょいと調べて分かった気になってんなよコラ、ちゃんと自分の脚で、自分の目で本当の姿を確かめてこんか」ということだと書いた。
この「探究」を「学び」に変えていくというのが探究「学習」なのじゃな。学校の授業では、特に高等学校では、主に「総合的な探究の時間」(「総探」と略されることが多いようじゃ)という授業で探究学習を実施することになる。
では、学校の授業のマニュアルである「学習指導要領」で「総合的な探究の時間」の狙いを確かめてみよう。(文部科学省の学習指導要領をリンクしようと思ったら、高等学校のところだけリンク切れしておる…)
第1の「目標」にこう書いてある。
探究の見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して,自己の在り方生き方を考えながら,よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 探究の過程において,課題の発見と解決に必要な知識及び技能を身に付け,課題に関わる概念を形成し,探究の意義や価値を理解するようにする。
(2) 実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし,自分で課題を立て,情報を集め,整理・分析して,まとめ・表現できるようにする。
(3) 探究に主体的・協働的に取り組むとともに,互いのよさを生かしながら,新たな価値を創造し,よりよい社会を実現しようとする態度を養う。
【学習指導要領(平成30年告示)475ページ】
このくだりで、「課題」ということばが4回出てきておる。つまり、実際に自分の暮らす社会における問題点や困りごと=「課題」を自分の脚と目で探すことで、まずは自分の社会の「真の姿」を照らし出すのが「探究学習」の第一歩というわけじゃな。実際、読んでみると分かるが、この後のくだりにも「探究課題」ということばが何度も出てくる。
とりあえず「課題の発見」を自分の脚で稼ぐことで「探究」の目的は果たされそうな気もするのじゃが、「探究学習」はもう少し欲張りじゃ。「課題の発見」に加えて「解決」ということばも出てくるのじゃ。
高校の「総合的な探究の時間」の面白いところがここにある。「課題」に対する「仮説(解決策)」を示しながら、実際に自分の手でやってみて「解決」に導くように務める。つまり「仮説の検証」という、大学における学術研究につながるプロセスを含んでいるのじゃな。(それを「まとめ・表現」するということも謳われているが、個人的にはそんなことより課題解決を楽しんでもらいたいと思っておる)
地域の困りごとに対して、「こうやったらいいじゃん」と提案し、「協働的に」つまり「仲間みんなで」実際にそれをやって地域の困りごとを本気で解決しようとすることが「探究学習」の醍醐味じゃ(探究学習が基本的にグループ学習という形態をとるのは「協働的」であることを目指しているからじゃ)。そういう態度が「新たな価値を創造」し、「よりよい社会を実現しようとする態度」につながっていくということなのじゃな。
そしてそれが、冒頭にある「自己の在り方生き方」につながっていくのじゃ。課題解決に真剣に取り組むことで、自分の人生につなげていく、キャリア教育という一面も探究学習にはあるのじゃ。
ちなみに高等学校では基本的に週に1時間しかないんじゃがな(笑)。週1時間でやるにはさすがに欲張りすぎな気もしないでもない。むしろほかの授業を少し減らして総探に当ててもいいんじゃないかと思うぞ。
次は、探究学習というものの入り口として「SDGs」を取り上げてみようかの。