2024年6月20日、東京都知事選が告示され、7月7日に投開票が行われる。
都知事選の候補としては、当初は現職の小池百合子氏と参議院議員の蓮舫氏の対決、という構図だと思われていた。しかし、蓮舫氏による選挙戦前のフライング選挙運動が問題視され、蓋を開けてみると56名の立候補者が乱立し、選挙ポスター掲示板の「荒らし」行為が話題になるなど、それ以外の話題も賑わっている。
そして、わしが個人的に好きな石丸伸二氏も立候補し、選挙戦を繰り広げている。メディアでも、小池・蓮舫に加えて代表的候補者として石丸氏を取り上げるようになっているのは嬉しいことじゃ。
相変わらず都知事選でも裏金問題の追究に余念がない蓮舫氏と、のらりくらりと質問をかわし続ける小池氏。そこに「政治屋の一掃」と割って入った石丸氏は爽快じゃ。
石丸氏を支持するとか支持しないとかではなく、石丸氏の戦略は注目に値する。「#東京を動かそう」というスローガンで都知事選に挑んでいるが、安芸高田市長時代から一貫して、「注目を集める」ということに全力を注いでいる。それも、アホなことをやって注目されるんじゃなくて、きっちんとファクトに基づいた論理を以て「日本の危機」「日本を変えていく」という意志を伝えきっているのがすごいところなのじゃ。今は都知事選なのでとりあえず「#東京を動かそう」じゃが、その意志は間違いなく「#日本を動かそう」ということじゃ。
ここからしばらく話をするが、今日の趣旨は「投票行って外食しろ」ということじゃ。途中を飛ばして結論を読んでくれてもよい。もしよかったら長話に付き合ってくれ。
石丸氏は、安芸高田市長時代に「首長がインフルエンサーになるべき」という発想で色々な活動をした。Xで情報発信をする「つぶやき市長」(つぶやきシローとかかっているのか?)としてまず注目され、市議会でおじいちゃん議員に「恥を知れ、恥を!」とカツを入れた。これ以降、市議会の場で議員たちをガンガン論破して対立し、「ものごとを前に進められないポンコツ市議会」として安芸高田市議会を全国区で有名にし、不要な公共事業や設備もバサバサ斬っていった。地元メディアの中国新聞の記事の内容の不備を記者会見の場でバッサリと斬り、中国新聞の某記者は会見の場に二度と現れなくなった。
さらに、活動の場をどんどん拡げ、以前紹介した財政の説明会や、「あきたかたMeet up」と題して市内各地で住民との意見交換会を行ったりした。YouTubeでライブ配信を始め、雑談とキタナい画質(笑)でこれまた全国的に有名になった。市内の名物として、主練習場を持つサンフレッチェ広島の応援を積極的にし、文化遺産として「神楽」の公演を県内だけでなく大阪まで行って行い、広島風お好み焼きの亜種として「あきたかた焼き」を売り出し、こちらは世界的規模で認証店を増やして認知度を上げた。
市長としてはさまざまなメディアにも積極的に出演し、市長時代に橋下徹、古舘伊知郎、ホリエモン、ひろゆきなどの論客と議論を交わし、日本をよくしていくにはどうすればいいか、自分の考え方を積極的に広めていった。議会や記者会見など「切り抜きをいくらでもしてください」と公言し、その丁々発止のやりとりと論理的な物言いがまとめ・切り抜きチャンネルに大人気となった。
その結果、安芸高田市のふるさと納税やYouTubeから市に多額の収入(広告・スパチャ)を得て、その臨時収入を全て「教育」に充てた。給食の小中無償化、机と椅子の更新、市内インターンシップの実施、球場だかグランドだかの整備、そして「中学校の生徒会長に100万円あげる」という、これから世界を担っていく子ども・若者に「投資」するという形でお金を使ったのじゃ。中高の生徒会長を集めてMeet upを実施したり、安芸高田市のキャッチコピーの選定を中学生にやらせたり、と4年の後半はそういった活動にも時間を割いた。
…と、1期4年間の石丸市長の実績を挙げれば本当にキリがないのだが(これでもまだほんの一部である)、何が一番のポイントかといえば、「拡散」ということに尽きるのではないかと思っている。市の取り組みと市の醜態を何も隠すことなく公表し、安芸高田市を全国区にした。いい悪いは別として、「山本数博」「山本優」「山根温子」「熊高昌三」「先川和幸」といった議員はフルネームで、「宍戸議長」「芦田議長」「大下議長」「石飛議長」「田邊議員」「南澤議員」「秋田議員」「金行議員」…ヘビーリスナーのわしはパッと浮かんだだけでも議員の名前を16名中13名も言えてしまった(パッと出てこない議員の名前は議会で質問しないのでお見かけしたことのない方々じゃ)。「永井教育長」「北森課長」「高下企画部長」なんていう執行部側のスタッフの名前まで言える(北森さんは部署異動になったらしいが)。遠く離れた視聴者にこれだけ市の現状を克明に伝えられた自治体がかつてあったじゃろうか?ちなみに漢字が結構難読なんじゃが、全員正しく読めたあなたはもはや安芸高田マニアじゃ(笑)。
単に拡散しただけではない。ちゃんと「政治への興味関心」を拡散していることがポイントなのじゃ。議会に市民の代表としての審議を任せていることの危うさ、それをちゃんと論理的に正していくことの大切さを、誰にでも分かりやすい形で見せていくことに成功しておる。しかも、小中学校という選挙権を持たない「次世代」に、「みんなのお金を有効活用する」やりかたとか、政治の大切さを積極的に見せて政治に対する関心を持たせることに成功した。市長のそういう取り組みだけじゃなく、中高生だって市議会の動画も見ているじゃろうしな。
石丸氏がよく語るエピソードに、「中学生の女の子が、自分のところに来て『私に選挙権がないことが悔しくて悔しくて悔しくてたまらない、安芸高田市のために、私にできることは何かありますか』とわざわざ言いに来た」というのがある。この話が実話である限りにおいて、少なくとも安芸高田市の、そして日本の選挙は変わる。ということは、日本が変わるということじゃ。
さて、都知事選じゃ。都知事選では、石丸氏はひたすら街頭演説を繰り返している。渋谷、池袋、原宿、秋葉原、新宿…若者がいそうなところに出向いて、漫画のネタからスモールトークで若者の興味をつかみ、正論で政治と経済の話を聞かせる。かと思えば巣鴨に出向き演説。1日何カ所でやっているんだろう、というくらい街頭演説をしている。
しかも、演説が終わったらYouTubeでライブ配信。雑談しながら街頭演説の正直な感想とか、コメント返しをしている。どんな体力をしているんだ、というくらい41歳の「若さ」を発揮している。
完全無所属を標榜する石丸氏は、他との「違い」を見せていかなければならない。演説の内容は過去の話ではなく、ひたすら「自分の実現したいビジョン」の話だけをしている。よく分からない政治資金パーティとか、興味ない人は全く興味ない「裏金」の話とか、そういう響かない話ではなく、経済をよくする、教育に投資する、という一貫した主張を、さまざまなネタで演説しているのじゃ。
そして、最後には、普通は「私が都政を変えます!どうか清き一票を!」と言うところを、「都政を、日本を変えるのはあなたたちです!ナイス投票!」と言って終わる。
これこそが、選挙の本来あるべき姿なのではないかな。ひろゆき氏がある動画で言っていたが(元ネタがどれか特定するのが面倒なので割愛)公約は守られると思わない方がいい(笑)。そんなことより、「あなたたちが自分の未来を選ぶんですよ、目の前でしゃべっている人間をよーっく見きわめて、責任持って投票に行ってください」ということなのじゃな。「無理な約束をなるべく守れるように善処しますので私に清き一票をください、知らんけど」というよりよほど責任がある言葉だと思わんかね。
もちろんこの街頭演説もYouTubeでたくさん流れている。石丸氏がスタッフを雇って撮影・編集などするまでもなく、切り抜き系YouTuberを含む色々な人が演説にカメラを向け、現地だけではなく、日本中の人々が耳を傾けている。石丸氏の思惑通り、彼のことばはネットを通じてどんどん拡散している。テレビや新聞の大手メディアが取り上げなくても、テレビの視聴者以上の数のYouTube視聴者が石丸氏の主張に耳を傾け、興味を持っている。
現職の知事、政党の後援を得ている候補者は大きく手強い。しかし、本当の都民の民意を動かす運動が実を結べば、東京が、日本が動くという可能性は十分にあるかもしれない。さまざまな人の意見を聞けば石丸氏は劣勢という見方が強いのかもしれないが、少なくとも「政治を変える意識」という観点では面白い都知事選ではないかな、と思う。今回の都知事選、若者の投票率が上がるのではないかと期待している。もしそうなったら、石丸さんが都知事になろうがなるまいが、勝ちっていうことでいいのではなかろうか。
わしは今日「石丸さんを応援しよう」ということを言いたいのではない。そうではなく、「投票率を上げていかねばこの国は変わらない」ということを言いたいのじゃ。
いかに新しい発想の候補者が出ようと、高齢者だけに投票を任せているうちは、「従来通り」やってくれる人が当選するのが当たり前じゃ。問題ないなら従前通りにやってくれる方が面倒がないし、安定的じゃからな。自分の暮らしに面倒を持ち込みたい人は、特に年配の方々に少ない。
今の60歳以上の「年配」世代は、団塊・高度成長世代。日本は先進国じゃと信じているし、経済大国だという感覚が抜けない人が多いのじゃ。政治が変わろうが変わらなかろうが、「技術が何とかしてくれるから政治は大した問題ではない」という感覚の人もいるのではないかな。日本がまるで成長しないのも、誰かがやってくれると信じているのが原因であるところが大きい。
逆に、今の20代の若者は、バブルがはじけて不況不況と言われ続け、「豊かな日本」を知らない。まぁ不自由なく暮らしてはいるけど、特に家庭を持とうなんていう発想をしたときに「今の収入で子どもが育てられるかなぁ…?」と考えると二の足を踏んでしまう人もいるのではないかな。
石丸氏が言うように、「経済」を大きく動かしていくには「政治」の力はどうしても必要じゃ。
「政治」とは、住民から得た税金を使うことを言う。税金を使って何かを作ったり、何かイベントを開いたり、何か住民へのサービスを考えて実行したり。めちゃくちゃ大きな額のお金を扱う仕事なのじゃ。1つの企業では到底なしえない規模の事業を、莫大な税金を使って推し進めることができるのが政治じゃ。
特に、「首長(都道府県知事、市町村長)」が持つ権限は絶大じゃ。もちろん事前に予算立てする必要はあるが、首長の一存で、何か大きな建物を作ることもできるし、ロックスターを招いてコンサートを開くことだってできる。基本的に、それを合法的に止めさせることができないくらい、首長の権限は大きいのじゃよ。
何でもやっていいからといって、何をやってもいいわけではないのは分かるよな。「知事、公園に知事の銅像を造るのは税金の無駄遣いです!」「市長、究極のラーメンを作りたいのも分かりますがそれはあなたのお金ではありません!」と庶民が諫めてもいいのじゃが、いちいち何百何千の住民の陳情を聞いていても埒は空かない。なので、住民の代表として、「議員」がいる。「議員」は、「議会」の場で、首長とその配下(執行部)のやっていることを精査し、不明な点に「質問」をし、止めるべきことを止める役割を持つ。
予算を執行する「首長」「執行部」と、それをチェックして時にブレーキをかける「議会」「議員」がいる。これを「二元代表制」と言う。そのうち「首長」と「議員」は、住民が「選挙」で選ばなければならない。
「税金を使う人」と「使い方をチェックする人」を選ぶ、ということは、大きな目で見ると「私たちが納める税金を任せられる人」を選ぶ、ということじゃ。つまり、
選挙とは、「私のお金をあげてもいい」と思える人を選ぶこと
大事なことなのでもう一度言うぞ。
選挙とは、「私のお金をあげてもいい」と思える人を選ぶこと
逆に言えば、
選挙に行かないということは、「私のお金は好きにしてください」という意思表示
なんじゃぞ。モーニング娘。も歌っておる。「選挙の日ってうちじゃなぜか投票行って外食するんだ(The☆ピース!)」とな。外食のついでだっていい。自分のお金をちゃんと使ってくれる人を選びに行こうじゃないか。
石丸氏のすごいところは、SNSやYouTubeを通じて「投票に行ってみよう」という気にさせているところじゃ。前述の中学生なんて、選挙権が与えられたらすぐにでも投票しに行くじゃろうな。今度は「なぜ私は一票しか入れられないんですか」とか言い出しそうな勢いを感じる。
こういうのを探究学習でやらせると、すぐ「SNSで広めます」と言う人がいる。しかし、石丸氏のレベルで真剣にSNSで広めている人を未だかつて見たことがない。本当にネットで何かを広めようと思ったら、並大抵の努力では広まらないよ。
・SNS…公式Xアカウントで取り組みや意見を発信する。メディアへの反論なども行う。
・YouTube…議会や記者会見でガンガン議員やメディアを斬りまくり、その動画を配信する。自分の取り組みを動画で配信する。YouTubeライブで雑談を交えて考え方を発信する。インフルエンサーにどんどん対談を申し込み、議論しながら考え方を発信する。
こういったことを、ずーっと継続してやり続けなければならない。YouTubeなんて素材や環境を用意するのも大変じゃと思うが、間を空けたら視聴者は離れる。休んでなどいられないのじゃ。
ちなみに安芸高田市のチャンネルはフォロワー数こそそれほど減っていないが(2024/6/25現在266,000人)この2週間更新していない。今後フォロワーから外れる人が出てきそうじゃ。寂しい限りじゃ。青森県知事もYouTubeチャンネルを持っているが、2023年10月開始、週1回程度の更新で、2024/6/25現在フォロワーは7400人。まだ方向性を探っている感じではあるが、今は知事による会見の配信と県内のいろいろを体験してみた的な動画が主なコンテンツじゃ。こう見えて石丸氏の方が年齢は若いのじゃが(笑)、青森県知事もかなり若い。今後の伸びに期待じゃ。
さて、石丸氏と同じ路線でやるフォロワーが出てきても面白いが、首長側の目線ではなく、「市民側の目線」でもっと投票率を上げていく、そして政治に興味を持てるような方策は何かあるかな?探究学習として、「投票率の向上」は一番面白くてやりがいのある題材かもしれない。
とにかく選挙に行く!投票する!選挙を楽しむ!ナイス投票!日本を動かすのは、まずは有権者の投票じゃ!ほーほら行こうぜ、そうだみんな行こうぜ!