まずはこちらのニュースを見てみよう。
医療用にCureApp(キュア・アップ)というスマホアプリの利用が広まっているらしい。
CureAppは、医師が患者に対して「生活習慣の改善を指示」するアプリ。主に高血圧患者向けで、患者から生活習慣の状況を報告し、医師から改善のアドバイスをするというコミュニケーションツールじゃ。薬と同様に「アプリを処方」するという形で利用し、なんと2022年から健康保険も適用されるようになった。2024年帝人ファーマと提携することにより、さらに利用を拡大していこうという動きじゃ。
これまでは医師が患者に「薬」を処方してきたわけじゃが、医師が血圧の薬を処方しても、正しい量を飲まなかったり、生活習慣の改善をサボったりするばかりに薬の効果が表れないことが多い。診療時に、問診や検査で状況を把握し、食べ物や行動など「生活をまるごと処方」するのがCureAppの目的じゃ。
実際、このニュースにもあるように、CureAppを処方された患者の8割が自分の血圧管理を維持し、しかも患者の3割が生活習慣の改善のおかげで減薬や服薬中止に成功したという。これなら薬の代わりにアプリを処方するという意味も分かるじゃろう。最近血圧管理だけではなく禁煙にも利用されている。
自分で生活習慣を管理するためのアプリやウェアラブルデバイスなら今までもあったが、CureAppの画期的なところは、そういう健康意識の高い人「じゃない人」に、医師から積極的に情報配信できるという点じゃ。
よく探究学習で「短命県返上」を課題とするケースを見かけるが、よく考えずに「減塩レシピを考えればいい」「講演会をやればいい」という仮説を立てる人が大変多い。そういう方策ははっきり言って全く効果がないのは明白じゃ。レシピや講演会を提案してそれに乗っかる人は、既にその時点で「意識の高い人」なのであって、対策なんかしなくても自分から健康になれる人なんじゃよ。
一番大事なのは、レシピを考案しようが講演会を開こうが「そういうのに全く興味を示さない人」をなんとかすることなのじゃ。
わしの父親は、高血圧で、早朝の雪片付け中に血管が切れて倒れ、さようならになった。病院に行けと言っても嫌がって行かない、そしてしょっぱいと分かっていながら漬物にしょう油をかけて食べる人じゃった(ちなみに、わしも病院が嫌いなのでこの点は遺伝じゃな)。寿命を延ばそうと思ったら、こういう人の「生活に入り込んで」なんとかしていくことが必要不可欠なのじゃ。
もちろん、プライバシーの侵害にならぬように配慮することは必要じゃ。「指示」は出すが「監視」はしないのがベターじゃろうな。支障のない程度に血圧や体重などのデータを提供してもらえれば、医療の発展に役立つデータも得られるのではないかな。
「そんな、アプリを通して指示が来たって無視無視」という人もいるであろう。でも、大切なのはアプリを入れることで「意識が改善し、血圧も改善する人がたくさんいる」という事実じゃ。薬を処方する、注射を打つ、手術をする、といった「医療行為」を伴わずに、「意識の改善」が「健康状態の改善」につながっていくことの好例じゃと思う。
「探究学習」では「医療行為」を行うことはできない。直接的な対症療法を試みようとしても大抵は失敗する。それよりも、人々の「意識を変えていく」ことを目指せば、自然と世界をいい方向に導いていくことができるかもしれない。
さて、「絶対に言うことを聞かない人」の意識を変えていくために、どんな声がけをしていったらいいかな?医療の分野にとどまらず、どんな探究課題にも応用できる考え方じゃと思うので、一度じっくり考えてアイデアを出してみるといいと思うぞ。