4.検証
・まとめ
2年2学期まで
2年2学期まで
さて、仮説を提案したら、本当にその仮説が成立するかどうか、成功するかどうかの「検証」じゃ。
現代世界において、とりわけ日本は何かを「変える」ということにとても消極的じゃ。どんな危機が迫っていても、何も変えずに「現状維持できる」と錯覚している人の方が多い。「どうせ変わらない」「自分なんかには変えられない」「自分なんかが何もしなくても誰かがやってくれる」と思っている若者も多い。そうじゃなくて、自分にも微力ながら「変えることができる」という実感を持つことがみんなにとって必要なのじゃ。総合的な探究の時間の狙いの1つがここにあると思っておる。
探究学習の一番楽しいところじゃと思うので、存分に楽しんでほしい。
2年生の夏休みに入る前に、夏休み中の「検証作業」の準備をしておくことが大事じゃ。
まず、仮説の検証にあたって、検証作業を行う日程をグループ内で調整する必要がある。みんなで集まって「この日にこれをやろう」という算段をするのじゃな。
仮説の検証は、「データの取得」じゃ。被験者は多い方がいい。まずはクラスの中で自分たちのグループに協力してくれる人を探す。なので、可能であればクラス全体で一つ一つのグループの検証作業に付き合い、そのための日程調整ができれば盛り上がるのではないかな。もちろん、検証に被験者が必要ない場合もあるじゃろうがの。
仮説に必要な物品やお金の額を検討しなければならん。食の分野であれば食材が必要じゃろうし、まちづくりなどでフィールドワークに出かける場合は交通費も必要じゃ。学校から公的に助成できればいいが、現実問題としてなかなか難しい。ならば、なるべくお金のかからない方法で効率よく検証できるように、知恵と工夫を出し合うのじゃ。
使う施設も、有料の施設を使うよりも、なるべく学校などの無料の施設を利用するようにした方がいい。施設の予約など、学校側から支援してやれると助かると思う。
仮説の検証は、実際にやってみての「変化」を見ることが大事じゃ。ある一定の期間をかけて検証をしていかねばならないので、仮説検証ノートのような記録を取ることが大事じゃ。紙の記録を募ってもいいし、スマホなどで写真を撮りながらポートフォリオを作るのもいいと思う。
そういったことを、夏休み前にクラス内に周知徹底し、夏休みにちょっと間借りして検証作業を進めるのがいいと思う。夏休み明けに検証結果をまとめてもらうからね、と伝えてな。
さて、夏休みについては計画通りに検証を進めてもらい、休み明けに検証結果の持ち寄りじゃ。どうなった、こうなった、とわいわいやってもらえればいいのではないかな。
被験者がいる場合は、検証結果としてアンケートを取り、「どんな変化が表れたか」を聞く。フィールドワークに行った場合は、何を調査し、どんなデータが得られたかを共有する。クラス全体で色々なグループの検証をしたなら、Googleフォームなどのオンラインのフォームで結果を共有するのがやりやすいかもしれないな。
さて、ここまで来たらもう探究は生徒任せでどんどん進んでいくだけじゃ。「2学期末に発表会をやるから、それに向けて発表材料を作りなさい」とだけ言えばよい。
わしは、発表会は「ポスターセッション」の形を取るのがいいと思う。全クラスの全グループが平等に発表するには、PowerPointなどのスライド発表は時間がかかりすぎて現実的ではない。全員が集まり、全員が平等に発表できるポスターセッションは、大人数でやる発表会としては一番面白い。ポスターセッションの作り方、運営のしかたはまた別の機会に話すことにするが、ここからは発表会用の「ポスターづくり」がメインとなるので、その話をこの後しよう。
ポスターの材料となる探究課題と仮説、そして「検証結果」と、そこからの分析によって得られる「今後の展望」までを1枚のポスターにまとめるのじゃ。情報共有し、そこから何が言えるかを検証し、そして検証がうまくいったかどうか、結論を出す。今後の展望として、改善点や継続してやっていきたいことを議論してまとめておくのじゃ。
もちろん、探究をまとめていくと「足りない部分」が見えてくることもままある。というより足りない部分が見えてくる方が健全じゃ。まとめ作業をしつつも、検証を継続してデータを取り続ける必要がどうしても出てくる。
一つの教室だけでやっていくには、無理が出てくるはずじゃ。担当教員を複数で分担しつつ、生徒がやりたいことをやらせてやるサポートをしてほしい。
仮説の検証と検証結果のまとめは、とにかく時間がかかる。2学期いっぱいかけて充実したものを作らせるべきじゃ。ついつい担当者も口を出してしまいがちじゃが、ここは生徒の力を信じて、遠目に見守るくらいでちょうどいい。やる気のないグループについては、前にも言ったが「発表できなくて恥をかくのは自分」と言ってやるくらいでいいと思う。
大きな紙に、これらの観点でレイアウトし、作っていくのじゃ。発表一つあたりの制限時間も予め示しておき、発表原稿も同時に作成していくのが望ましい。これまでミニポスターの発表も2回やっているが、その流れを踏襲するのじゃ。
ポスターはWordやPowerPoint、Publisherなどで作ってポスタープリンターで出力してもいいし、もちろん模造紙に手書きでもいい。わしゃ昭和の人間じゃけ、模造紙にかわいく手書きしてくれた方が見やすくていいのう。例を2枚ほど挙げておこう(クリックで大きな画像を表示できるぞ)。
手書きを勧める理由の1つに、「字の大きさ」がある。ポスターは、小さな字でこまごま説明を書き連ねても意味がない。デジタルだと特に、さっぱり読めないほど小さな字でビッシリになってしまいがちだが、それはもはやポスターですらない。ある程度口頭で説明する前提で、大事なところだけを抽出し、見やすく、強調するところを強調して作るのがポスターじゃ。これが上手く作れたら、要約も上手になるぞい。
含めるべき内容だけ指示しておいて、あとはある程度自由に、かわいく、適度に落書きしながら楽しく作ったらいい。その方が発表も楽しくなること請け合いじゃ。
次回は、発表会の1つの形態としての「ポスターセッション」の運営について話をするぞ。