年賀状は書いておるかの。わしの場合、文具マニアなのもあって昔はかなりの枚数書いていたものじゃが、最近はめっきり年賀状のやりとりもなくなったのう。
日本郵便の「2025年年賀郵便物元日配達物数」、つまり元旦に配達した年賀状の枚数を見てみると、日本全国で約4億9千万枚と、ついに5億枚を割ってしまったそうじゃ。え、5億枚ってすごい数じゃない?と思った人もいるじゃろうが、去年、つまり2024年が約7億4千万枚じゃったから、2億5千万枚の減、枚数にして実に3分の2に減ってしまったということじゃ。
最大の要因は郵便料金の値上げじゃろうな。はがきの郵便料金の推移を見ると、わしが生まれた頃はなんと20円。その後1981年からしばらく約40円時代となり、1994年からは長らく50円という歴史を維持していた。2014年に52円という軽微な値上げがあり、2017年から60円台時代に入り、2024年からなんと85円に値上げされた。はがき1枚がつい1年前の定形郵便(25g以下)より高くなった、というのはさすがに驚くよな。
官製年賀はがきの発行枚数についても、ピークの44億3千万枚から4分の1弱の10億7千万枚に減少している。62円に値上がりしてからは特に落ち込みが激しいのが分かる。販売側も値上げによる年賀状離れを予見して印刷枚数を減らしているんじゃろうな。
そういうわけで、もはや「郵便というサービスを使って」年賀状を出そうという動きそのものが停滞しておるわけじゃ。ここまで停滞したら、「お年玉付き」という宝くじ的なサービスがなくなったり、元旦に届くように配達する年賀郵便というサービスそのものがなくなったりしてもおかしくないんじゃなかろうか。
ついでに言うと、年賀状印刷のためにプリンターを買うという人も多かったものじゃが、プリンターの売り上げも激減するじゃろうな。今のところプリンターの売り上げは堅調らしいのじゃが、いずれ年賀状にしても写真にしても書類にしても、「紙に印刷する」ということ自体が必要なくなってくるからな。写真屋もしきりに年賀状印刷を勧めていたが、わざわざお店で印刷してまで年賀状を出そうなんていう人ももういなくなるじゃろうな。企業の年賀状DMすらコスト削減を考えたらなくす方向じゃろう(毎年来ていた保険屋とかカーディーラーの年賀状は今年はゼロじゃった)。
そうなると、もはや年賀状はもらって嬉しい物ではなく、もらっても邪魔だし返信しなければならない面倒な物、という扱いになっていく、もしくはもうなっているのかもしれんな。
この傾向は、止めることはできないと個人的には思う。ビジネスとして考えるなら、「利用者数が減って値上げ」→「フェードアウト」となるのは明らかなのじゃから、日本郵便側も何か対策を練っていかなければならないのではないかな。サービスを続ける限り、首を絞めることになっていくと思うぞ。
郵便がないと困る、という人は大勢いる。しかし、オンラインで色々やりとりできるようになった今、個人の郵便の需要はだいぶ減ってしまった。値上げで郵便に見切りを付けた業者だっているじゃろう。切手コレクターだって、切手シートが高くなってしまって手を出せないという人がいるんじゃなかろうか。
みんなが「使いたい」と思えるサービスを考えてやっていかないと、このままでは「郵便そのもの」がフェードアウトしかねない。郵便というサービスがまだまだ必要な場面が多いとするなら、どうやったら持続可能になっていくかのう?インターネットを含めた、「あなたが使いたい郵便サービス」を何か考えて提案してみてはどうじゃろう。「ただのアイデア」じゃだめじゃよ。どのくらいのコストがかかり、どのくらいの利用料金でサービスを維持していけるのかまで考えるのじゃ。周囲の人に提案してみて、それならこのくらいの金額払ってもいい、というリサーチをしてみるのもいいかもしれんな。
明けましておめでとう、今年もよろしくお願いします…という年始の挨拶は、廃れてしまったのじゃろうか?といえば、そうでもない。
たとえばLINEを使っている場合、「あけおめスタンプ」を購入して使っている人もいるのではないかな。XやFacebookなどSNSを使っている人も、フォロワーと挨拶を交わすのは割と当たり前じゃなかろうか。
初詣なんかも、意外とみんな行っている。有名な神社は毎年長蛇の列じゃ。初詣は神様への新年のご挨拶。どうやら、「年始の挨拶」というよき文化は廃れてはいないようじゃ。
最近は御朱印をもらう文化も根付いているから、パワースポットを巡りながら幸運を分けてもらいたいという需要があるんじゃろうな。それに便乗して「正月バージョン」の御朱印を作っている神社も多い。つまり、かつては賽銭を投げて手を叩くだけだった初詣に、ネットの情報も手伝って御朱印という新たな付加価値を付けてビジネスとして持続しておるというわけじゃな(ビジネスなんて言うと怒られると思うが)。
こう考えると、年賀状なんかも新たな付加価値を付けることで持続していくという発想が必要じゃな。お年玉付き…という「宝くじ」で釣る時代は終わった。たとえば有名な神社仏閣とコラボして、「謹賀新年御朱印」が年賀状として届く、なんていうサービスはどうかな。はがきホルダーが御朱印帳になるという魅力的なシステムじゃぞ(御朱印帳風のはがきホルダーも作ったら売れそうじゃな)。もしくは、1枚500円くらいにして、神社仏閣に年賀状を書いたら御朱印の画像データをもらえる、とか。お寺に限定はされるが、裏面にペン字でいいから写経できるようにしたら意外と流行るかもしれんな(往復はがきくらいのサイズで2枚折りにしてな)。初詣の慣習が続いているのだとしたら、「神仏に年賀状で挨拶」っていうのも素敵じゃと思わんかね。
自治体とコラボして、「年賀状でふるさと納税」できる、なんていうのはどうじゃろう。ふるさと納税用の年賀はがきを1枚1,000円くらいにして、応援する自治体に届くようにしたら面白いのではないかな。はがき自体は年末に届くようにして、返礼品が元旦に届くようにする、なんていうこともできたら面白いんじゃないかなぁ。
そう考えると、「お年玉」を宝くじ式じゃなくて本物のお年玉にしてしまうのもいいかもしれんな。最近は田舎の方でも「正月に親戚一同集まる」ということが減っているのではなかろうか。1,000円、3,000円、5,000円+郵便料金と手数料くらいの値段ではがきを売って、年賀状としての挨拶もしつつ、もらった人が換金できるようなシステムにしてみてはどうじゃろう。もちろんセキュリティ的に色々クリアしなければならないハードルはあるじゃろうけどな(宛名の人以外は換金できないようにする、など)。
新年の挨拶をするという文化はまだ持続している。そのためにせっかく確立されたシステムとして存在する年賀状を利用しないのは勿体ない。どんな付加価値が付いたら「年賀状で」新年の挨拶をしたくなるじゃろうか。大切なのは、「付加価値で釣る」ことなのではなく、「年賀状という文化をなくさないこと」じゃ。住所氏名を明記して個人情報を晒す表面のスタイルも含めて、新しい年賀状の形を考えてみてほしい。