ars electronica festival 2011

Post date: Sep 15, 2011 9:01:43 PM

http://www.aec.at/origin/category/blog/

今回は2年前と同じ分散開催。いつもより規模が小さい感じだが、2年前と同じ予算規模という話も.3回めのarsだが、2日間でたっぷりその神髄を味わうことができた.arsのフェスティバルは、以下のように分けることができる.

  1. 全世界から寄せられた中から選ばれたメディアアートの展示(その最も優秀なものがprixとして、GALAで賞を与えられる)
  2. 映像や音楽も含めた展示として、electric theaterもある。
  3. アーティスト同士の情報交換を目的としたconference
  4. 一般の人も参加し、様々なテーマについて話し合うsymposium

これまで、1しか注目されなかったが、今回、2、③に参加してみてこのあたりもarsがオピニオンリーダーとして、重要な役割を果たしていることがわかった.

今回はメインテーマとして、ORIGIN, How does it beginが制定されている.これは、CERNとLHCに関してコラボレーションが始まったことが大きい.CERNはLHCの開始にあたり、artistのチームを構成し、その存在意義をアーティストを通じて、大きく発信しようと試みている.これがarsと共同の collide@CERNというプロジェクトになっている.今回は、CERNの所長も登場し、artzと一緒に、LHCという本まで出版した。black holeを作ろうとしているとか、いろいろ話題になったこともあり、LHCを題材にしたシンポジウム、Deep Spaceでの講演も立ち見が出るほど人々の関心も高い.artistによるboard, artist in residenceの試みも行っており、CERNは情報発信に関してかなり積極的だ.

prixの内容を見るとarsが発信しようとするメッセージが読み取れる.

チリでweb communityによるNGOを立ち上げた活動やNewstweekと呼ばれるpublic wifiの利用者に情報を書き換えたニュースを流すことにより、インターネットの危うさを警告する活動など、ディジタル社会と積極的に結びついた活動が評価されるようになり、従来のメディアの楽しさや新しさを訴えるものは影を潜めている.

その意味で、日本からの参加者が従来路線で置き去りにされた感がある。欧米のアーティストとの展示と比べると社会との関わりが、希薄な気がする.

北ヤードへの提言

トライアルにみる現在の北ヤードの取り組みは、サロン、シンポジウムと一般の人々への情報発信という部分は備えている.arsのシンポジウムの形式も、サロンのように討論する人を真ん中におき、観客を回りに配置するというものであったし、COLLIDE@CERNというOpen Scienceの方向性は、The Labのそれとも一致するもので、arsが北ヤードの方向性に近づいた印象さえある.また、create your own labというハンズオンの試みは、CAMPのそれと同じ.しかし、このような方向性も突然出てきた訳ではなく、arsを取り巻く様々なアーティストや審査側の人々と行った集団によって支えられている。StokerというプロデューサーやFuture labのメンバーもこれらの集団がうまく動くように支えているように見える.

北ヤードに欠けているのは、このような集団とそれを世の中に出してくというプロセスである.アーティストを引きつけ、それらが集団を形成し、社会に対して力強いメッセージを発信していくという方向性は見られない.prixによって様々な作品が集まり、それをjullyと呼ばれる集団が審査し、選定するというプロセスが欠けている.このあたりは魅力ある国際会議を作るプロセスと全く同じであり、organizing committeやprogram committeeがある種強い方向性をもってたくさんの公募作品の中から世に出すものを慎重に選定してくプロセスがあって初めて、評判の良い国際会議としてのブランドが形成される.arsのjuryにはかなりいい人がそろっている.北ヤードにおいて、このようなプロセスをどのように作っていくかが、ひとつの鍵なのかもしれない.

また、ものを作る人たちの間の情報交換も必要である.arsではこれがシンポジウムという形で、創りだす家庭での苦労やノウハウが集団に共有されていく.北ヤードにおいてもThe Labに参加する人々の間の情報交換が必要なのだろう.

補足

MIT MediaLabの新所長Joji itohとCERNの所長とのOpen Scienceに関する討論.

CERNは核物理といういわば真理を追究する集団.それに対してMedia labは様々なソリューションを作るところであり、何を追求するかという問題は外から与えられないと行けない.

その意味では好対照であった.

伊藤は、今後研究所の意味が変わってくるだろうという.これまでは個別のソリューションを作っていくことを競っていくが、今後は、個別の技術よりエコシステムを以下に作るかが重要だと.そのため、platformを作り、エコシステムを加速することが今後の研究所の役割だと.Creative Commonsの所長らしい意見.

Sensing place/placing sense

センサーにまつわるアーティストや技術者のフォーラムであり、Sky earという携帯の電波強度をセンスしながら、それを可視化する試みを行っていた.技術者は答えを探そうとするが、アーティストはその本質を見せることを試みる.

http://www.haque.co.uk/skyear/information.html