騒音公害の訴訟の続きです。
2017年11月16日 進行協議期日
西鉄サンカルナ福岡城南の現地にて、13時30分から進行協議期日が行われました。裁判所による現場の視察の様なものです。
裁判所からは、裁判官と2名の事務官に来ていただきました。
事務官の1人は、私がお願いした西鉄サンカルナの空調コントロールパネルの見張り役です。見張りを付けないと、現場に移動した隙に職員がエアコンの設定を音が小さく成る様に変えることは過去に経験していますので、その様にお願いしました。
今回は裁判所が公害調停委員会に原因裁定の嘱託を行う前に、裁判所に現場を見て欲しいと、被告の弁護士から裁判官に申し出たことにより行われたものです。まさか、裁判所に来ていただけるとは思っていませんでしたので、有効に活用したいと思います。
折角なので私の騒音計を九電産業の検定品の騒音計と並べて撮影し、私の騒音計の誤差を確認することにしました。恐らく、裁判官の意図もそうだと思います。その時の動画はこちら。
事前に被告から「報告書」なるものが提出されました。
西鉄サンカルナのエアコンの通常設定を説明しており、冬の厳寒日には、温度設定26℃、風量強で運転するという、たわけたことが書いてあります。入居者を外気温との温度差によるヒートショックで殺す気でしょうか?
2017年12月12日 第7回弁論
福岡地裁のラウンドテーブル法廷にて16時から第7回弁論が行なわれました。
西鉄から提出された空調屋外機の一覧を甲58号証として提出しましたのでこれも掲載します。
自治体によっては3.75キロワットを超えれば公害規制の対象ですが、
西鉄サンカルナは送風機が12キロワット、圧縮機に至っては実に144キロワットもあります。
弁論後、裁判官からは公害調停委員会への原因裁定の嘱託について説明を受けました。
このため、裁判は一旦中断となり、原因裁定後に再開されることになります。
この嘱託が行われるかどうかは、まだ決まっていないとのことでしたが、ほぼ大丈夫そうです。
西鉄側の弁護士は未練がましくつべこべ言っていました。
原因裁定では無償で騒音測定をしていただけるそうです。
騒音が受忍限度を超えるとの裁定が出るかどうかで判断される様です。
また、裁定の内容によって、本訴の請求を修正しても良いとのことでした。
驕れる地方の悪徳企業に正義の鉄槌が下ることを期待しています。
立証趣旨:本物件の設置された業務用パッケージエアコンの屋外機の出力の合計は、
現在解っている範囲において圧縮機が144.9キロワット、送風機が12.09キロワットであること。
2020年3月9日 第8回弁論
公害等調査委員会の原因裁定後、福岡地裁での裁判が再開されました。
既に裁判官が代わっており、新しい裁判官は「既に裁定が出ているし、裁判所は騒音についての専門知識は無いので。。被告側が基準を超える様な騒音を出さない様するといった内容で和解できますか?」という感じでした。しかし、被告西鉄側弁護士は、応じないということでした。原告側も、騒音が基準を超えることが明白なのだから、判決が欲しいと述べました。
原告側からは、下記の準備書面の通り、原因裁定に誤りがあることを示し、職権調査により、西鉄サンカルナか ら の 騒音が、 規制基準を超えていて、原告に睡眠障害 等の健康被害を与え ること は 明白 であ ると主張しました。公調委の職権調査による騒音測定の結果について次の様に指摘しました。
1)本件物件建築前の事前説明において、被告は(騒音規制法に基づく福岡市告示の規制では、基準値が昼間50デシベル以下、夜間は45デシベル以下となっております。本件物件では、当該屋外機を全て稼動させた状態でも基準値以下の設計となっております。)と説明している。しかし、この事前説明の基準値を超えている。
2)騒音規制法の規制値も超えている。
3)環境基準法の基準値も超えている。
2020年7月6日 第9回弁論
新型コロナの緊急事態宣言により延期されたのち、裁判が再開しました。
前回の弁論で、裁判官から和解を打診されていたので、当日、妥協可能な和解案を提出しました。しかし、被告西鉄側の弁護士は即答で拒否しました。西鉄側に打診してみるとかしなくて良いのか疑問です、こういった代理人弁護士の態度が、事態を訴訟にまで至らせている要因になっていると思います。
前回、公調委の裁定に対する訂正申し立て書を、証としてではなく、裁判の弁論として書面で出す様に指示されましたので、それも提出しました。
原告準備書面(11)原因裁定訂正申立書、原告準備書面(12)和解案
2020年8月5日 第10回弁論
前回弁論での裁判所からの指示により、被告側から公害等調整委員会の裁定に関する資料一式が乙証として提出されました。憲法82条の裁判の公開により、これらの資料をこのサイトで公開することにしました。
裁判官から、裁判を合議制に移行すると告げられました。以降、結審まで事務的な弁論が続きます。
2020年12月8日 第12回弁論 結審
準備書面が公調等のものと錯綜し、番号の食い違い等がありましたので、事務官の指示により修正を行いました。訂正申立書
前回弁論での裁判所からの勧めにより、本人尋問を行いました。裁判官から聞かれたことに応えるという様に聞いていたのですが、騒音や騒音測定に関する技術的な質問は有りませんでした。尋問事項と陳述書は予め提出しておいたものです。
2021年3月16日 第1審 福岡地裁 判決
法廷で判決が言い渡されました。言い渡しは、判決文の主文のみで、直ぐに終わります。その後、地裁の事務室に行って判決文を貰いました。判決文はかなりの長文でした。
本文の「当裁判所の判断」の中で、「本件騒音が夜間の環境基準を超えていおり、顕著な騒音が原告宅に届いていたと言える」ことが認められていました。騒音規制法の規制値も「超えているが、本物件は適用の対象外」とう判断でした。よく言われる、「裁判の中で事実を明らかにしていく」ということができたと思います。数百万円かかったであろう公調委による騒音測定も国費で行われました。
残念ながら、「受忍する限度を超えているとは言えない」として、損害賠償請求と差し止め請求は棄却されました。本文の中で引用している最高裁判例が、改変引用されて誤って解釈されており、これが棄却の主な理由になっている様でした。また、公調委による騒音測定の騒音値を法令に定めるLAeq(等価騒音レベル) ではなく、それより低いLAmin(最低騒音レベル)で評価しているので、控訴することにしました。
判決文の被告側弁護士の欄に12人もの弁護士名が並んでいます。西鉄はこんな弁護団を雇っていたということですね。
2021年3月18日 福岡高裁に控訴
1審の判決を控訴で逆転することは難しいそうですが、正すべき点が多数あったので控訴しました。
2021年3月18日 控訴状提出。控訴状は、地裁の判決を受け取ってから2週間以内に提出する必要があります。控訴状は控訴する旨を宣言するのみで、理由書は追って提出します。
2021年5月7日 控訴理由書提出。理由書は、控訴状を提出してから50日以内に提出する必要があります。理由書は、1審判決文を詳細に整理し、綿密に作成する必要があるので、随分時間が掛かりました。理由書に示した事項は次通りです。
1.最高裁判例の改変引用、判例の前提事実と本件との乖離
2.環境基本法適用の誤り
3.騒音規制法の発生源装置の規模の認定に関する誤り
4.建築前説明の履行義務の審理不尽
5.福岡県の騒音防止条例の適用の審理不尽
6.公調委の公害裁定嘱託の踏襲し、裁判所の最終審としての役割を果たしていない。
7.測定値の採用の誤り(LAeq(等価騒音レベル) ではなく、それより低いLAmin(最低騒音レベル)で評価している)
8.防音壁の効果の誤認
9.被告が誠実に対応したとの誤認
10.被害を認めない理由の不備(原告の様態による憶測、原告が1名にみ)
最後に、本件騒音が基準値を超えていることを重ねて説明しました。
1.建築前説明の基準値こ超える事実
2.法定の基準値を超える事実
控訴状、控訴理由書、控訴理由証拠説明書、甲87証_最高裁判例
2021年6月11日 控訴審第一回弁論 即日結審
控訴審は裁判官3名による合議制で行われ、第1回弁論で即日の結審を告げられました。控訴審は即日結審となることが多いらしいです。しかし、被告が提出した答弁書に対する反論がしたかったので、結審しない様にお願いしました。裁判官から、反論は郵送する様に告げられました。
2021年6月18日 被告の答弁に対する反論を裁判所と被告代理人に送付
被告の答弁書、答弁書への反論:控訴人準備書面(14)
2021年8月27日 第2審 福岡高裁 判決
法廷で判決が言い渡されました。言い渡しは、判決文の主文のみで、直ぐに終わります。その後、高裁の事務室に行って判決文を貰いました。判決の内容は、地裁の判決を踏襲し、やはりかなりの長文でした。
原告の控訴理由については逐一、一蹴しています。地裁の判決文にあった最高裁判例の改変引用は改められていましたが、解釈は同じでした。また、測定値の採用の誤りも同じでした。これらの点は、どうしても納得できないので上訴することにしました。
2021年8月30日 最高裁に上訴
上訴で逆転することは、ほぼ不可能らしいですが、正すべき点があるので上訴しました。
上訴状と理由書の期限は、控訴の時と同じです。
2021年8月30日 上告状兼上告受理申立書
2021年10月18日 福岡高裁に上告理由書と上告受理申立書を提出
上告は憲法や判例の違反に対する訴えです。項目は次の通りとしました。
上告受理申立は、法律違反に対する訴えです。項目は次の通りとしました。
裁判を振り返って
裁判は本人訴訟で、原告側は代理人弁護士を立てずに闘いました。弁護士を雇っていたら、自分の経済力では、これだけ長期に渡る裁判は闘えなかったと思います。
裁判を通じて国費による騒音測定を受けることができましたし、次の事実が確認できました。
1)西鉄の建築前事前説明の基準値を超えている。
2)騒音規制法の規制値も超えている。
3)環境基準法の基準値も超えている。
被告の不誠実な対応や多数の虚偽答弁も立証できたと思います。
これだけの事実がありながら、勝訴できなかったのは、自分の失敗も多かったと思います。今後、同様の訴訟を起こされる方の参考になれば幸いです。
しかし、法定基準値を超えるにもかかわらず、「受忍する限度を超えているとは言えない」とする裁判所の判断にはやはり納得できません。なんのための法定値なのか、なんのための国費測定だったのか。これではどうしても勝てないことになります。上告の理由書にも次の様に書きました。
我が国の生活環境は昭和40年代の公害大国と揶揄された最悪の状況にから,公害国会(昭和45年臨時国会(第64回国会))を経て環境保全に関する法令の整備が進み,大きく改善した。企業にとって法令を遵守することは,法治国家において当然かつ最低限の「必要条件」である。このことは,近年の福島県における放射線量基準や,東京都豊洲市場における水質基準の適用でも同様であり,超えてはならない基準として報道され,超えてはならないことは現代日本の常識であり民意である。また,受忍限度の判断の中で規制値および基準値を上回る騒音の存在が重視された裁判例が少なくない。従って,原判決は我が国の環境保全に関する半世紀に及ぶ努力の歴史に逆行するものであり,憲法25条および,憲法の補助的原理である法治主義に違反する。