TVゲームに押されて、今ではすっかり廃れてしまいましたが、1980~1990年代、「ゲームブック」なるものが流行していました。ガンダム関連もいくつかあったのですが、その中で、ゲームとしてはともかく、読み物として面白く、宇宙世紀の歴史を語る上での資料としても貴重であると思われる作品、「機動戦士ガンダム 最期の赤い彗星」をご紹介したいと思います。
今は亡き勁文社より1986年に出版され、その後バンダイ文庫に再録されていますが、どちらも絶版のようです。著者はアニメ脚本家の山口宏氏。
主人公は、タイトルからも分かるとおり、赤い彗星ことシャア・アズナブルです。ア・バオア・クーでキシリアに向けてバズーカをぶっ放してから、アクシズにたどり着くまでのシャアの足取りは、アニメでは描かれいませんが、その空白を上手く埋める作品となっています。アニメ化されたものが公式設定、というサンライズの方針からすれば、非公式な内容ではありますが。
逆襲のシャアまでを含めたシャアのキャラクター像イメージからすると、「ありがとう、同志達よ!」などと言ってしまう仲間思いのシャアはやや違和感がありますが、出版当時は逆シャア公開以前ですから、これはこれでありかな、と思えます。ザビ家打倒を志すシャアの協力者達が実はジオン軍内部にいて、彼らとともにア・バオア・クーを脱出した、という設定はよくできていると思います。
この著作の見所は大きく2つあります。ひとつは、謎とされていたア・バオア・クーからアクシズまでのシャアの足取りについて、仮説を提示してくれること。もうひとつは、富野監督の構想にあったものの、ファーストガンダムではアニメ化されることなく「お蔵入り」したモビルスーツ4体(ガッシャ、ドワッジ、アクト・ザク、ガルバルディ)が登場し、シャアと激戦を繰り広げるところです。