(ネタバレを多分に含みますのでご注意ください)
宇宙世紀モノのガンダムの、最重要人といってもいいでしょう。シャア・アズナブルについて解説しておきます。アニメ本編では、断片的な描写しかなく、意外と分かりにくい。アニメ本編では触れられていない、一年戦争以前の彼の過去についても触れていきます。
ジオン軍の若きエースパイロットとして、ホワイトベース隊を散々苦しめるシャアですが、次第に、ザビ家の打倒をもくろんでいること、また、セイラ・マスが妹であることが、劇中で明らかになっていきます。
シャア・アズナブルというのは偽名で、本名は、キャスバル・レム・ダイクン。ジオン共和国の初代首相、ジオン・ズム・ダイクンの息子です。妹が一人いて、名前はアルテイシア・ソム・ダイクン。後のセイラ・マスです。
既に述べた通り、ザビ家によってジオン首相は謀殺され、ジオン共和国の実権も掌握されしまいます。ザビ家にとってジオンの遺児は邪魔な存在でしたが、ジオンの忠臣であったラル家がキャスバルとアルテイシアの身を守り、サイド3から地球へ脱出させました。その後二人は、ザビ家の監視の目を逃れる意味もあり、資産家のマス家に養子として引き取られ、名をエドワゥ・マス、セイラ・マスとそれぞれ改めます。
妹はマス家の人間として人生を送っていましたが、兄はザビ家への復讐を成し遂げるため、マス家を出奔します。シャア・アズナブルという偽名でジオン軍士官学校に入学し、そこでザビ家の御曹司、ガルマ・ザビと学友の間柄となります。やがてドズル・ザビの部下としてジオン軍内でエースパイロットとして台頭、ザビ家への復讐の機会をうかがいます。ここまでが、『機動戦士ガンダム』アニメ本編前の、彼の生い立ちです。
アニメ本編が始まってから、復讐の第一弾として、ガルマ・ザビの謀殺に成功しますが(「ガルマ、散る」)、ガルマを守りきれなかった責任を問われ、左遷させられます。
しかし、ほどなくキシリア・ザビより招聘され前線に復帰します。アムロやララァとの出会いにより、彼の中では心境の変化が起こっており、ザビ家打倒よりも、ガンダムを倒すこと、あるいは、来たるべきニュータイプの時代をどう切り開くか、という問題に関心事が移っていました。キシリア・ザビはシャアの正体を看破しますが、シャアは、打倒ザビ家よりもニュータイプの件が優先であるとし、連邦軍とギレン・ザビの体制を打ち倒すという共通の目的の元、キシリアに協力することを申し出ます。
しかし、ジオン軍の敗色が濃厚となり、ア・バオア・クーの決戦の最中、シャアはアムロと妹のセイラに邂逅した後、キシリアを暗殺し、行方をくらまします。
その後も宇宙世紀の歴史に度々登場しますが、一年戦争以降については別途記載します。
まとめ:
・シャアの本名は、キャスバル・レム・ダイクン。ジオン共和国創始者、ジオン・ズム・ダイクンの息子。
・ザビ家を恨んでいて、復讐の機を得るためにジオン軍に入隊し、エースパイロットとして出世した。
・次第にザビ家打倒よりも、ガンダムやニュータイプに関心が移っていく。
・でも、最後はきっちりキシリアを暗殺し、自らも行方をくらます。
<補足>
ジオン・ズム・ダイクン暗殺後、キャスバルとアルテイシアをかくまったラル家というのは、グフのパイロットだったランバ・ラルのラル家です。ランバ・ラルは有能な軍人でしたが、ラル家がダイクン寄りであり、キャスバルとアルテイシアをかくまった件もあって、ジオン軍内では出世できないでいました。そんな彼を気の毒に思ったドズルは、彼にチャンスを与えるため、ホワイトベース隊の討伐を命じましたが、戦いの最中、かつて守り通したアルテイシアとばったり会ってしまい、自らも戦いに敗れて命を落とすという、悲劇的な結末になってしまいました。
シャアの生い立ちについては、安彦良和氏の漫画作品『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』に詳細が記載されており、OVAにてアニメ化もされています。