ガンダムF91 まさに「不遇」の作品

宇宙世紀のどれをみる? では、入門者は見なくていい、とバッサリ切り捨ててしまったF91ですが、個人的にはかなり好きな作品です。作画はけっこうがんばっていてアニメとして見ごたえがあり、安彦キャラも魅力的。そしてなにより、モビルスーツのデザインが素晴らしい。ガンダムF91はもちろんですが、私はクロスボーン・バンガード(以下、C.V.)のモビルスーツのデザインがたまらなく好きなんです。プラモはほぼ買い揃えてあります(ただしほとんどが未作成のまま実家に保管中)。HGUCやMGでキットが発売される気配が全然ないのがとても残念。サンライズ&バンダイ的には、やはりF91は黒歴史なんでしょうか。

好きな作品ではありますが、話の筋を理解するのは非常に難しい。初見ではほぼ不可能でしょう。もともとテレビシリーズとして企画された内容を、強引に2時間弱の映画にまとめ上げてしまったため、話が飛びまくりです。特に、以下の点がF91を分かりにくくしていると思います。

    • シーブックの父(レズリー・アノー)と、セシリーの育ての親(シオ・フェアチャイルド)の容姿がよく似ていて、混同しやすい。

    • セシリーの家族関係が複雑。実父と育ての父がいたりとか。

    • C.V.が軍事蜂起した理由が分かりにくい。

    • 2つのスペースコロニー、「フロンティアⅣ」と「フロンティアⅠ」が主な舞台となるが、どっちがどっちなのか分かりにくい。

      • 解説すると、最初にC.V.が侵攻したのは「Ⅳ」のほうで、シーブック達もⅣの住人。シーブック達はⅣを脱出してⅠへ避難しますが、シーブックの父レズリーはⅣに残る羽目になります。また、セシリーはロナ家の一員となってⅣに残り、豪邸に住むことになります。Ⅳを占領したC.V.は、続いてⅠに侵攻し、シーブック達はこれを迎え撃つ。しばらく頑張ったけれどいい加減無理っぽいので、シーブック達の母艦スペースアークはⅠを撤退、時を同じくして、Ⅰは無差別殺戮兵器「バグ」の実験場となる。シーブックは鉄仮面を倒すが、C.V.のフロンティアⅠの制圧作戦自体は成功 (司令官の鉄仮面が死んで旗艦も沈んでいるのに、ザビーネさんが「凱旋するぞ!」とか言うのがまたわけわからん)。

      • 一番ひどいと思うのは、シーブックの父、レズリーが死亡するイベント。

① シーブックはⅠに避難するが、セシリーに会うために、F91を無断使用して、Ⅳへ潜入。

② ロナ家の屋敷に忍び込んで、セシリーと再会するが、警備兵に見つかり逃走。

③ 逃走中に偶然レズリーと再会、一緒に逃げるがレズリーが撃たれる。

④ F91にレズリーを載せてⅠへ向かうが、コクピットの中でレズリー死亡。

という流れなのですが、①のⅣを出発する描写が全くないんです。いきなり、シーブックがセシリーの実家のパン屋を覗き込んでいるシーンからスタートし、④の後、ガンダムを勝手に持ち出した件でシーブックが説教されるシーンがあり、そこで初めてシーブックがコロニーをまたいで無断外出していたことが明らかになります。

    • アンナマリーが寝返るイベントもテンポが早すぎる。初見だと、寝返ったことすら気が付かないままアンナマリーが何故か「味方の」ザビーネにやられていた、という人も少なくないのでは。

    • 鉄仮面のバグ起動イベントも唐突。ザビーネさんが味方の指揮官をいきなり銃殺してしまうあたりは、「ぽかーん」としてしまいます。ザビーネさんの味方殺しは2回ありますが、どちらも初見では理解しがたいです。

2chのガンダムの話題などを見ると、F91支持者はけっこう多く、自分もうれしいです。ビルギットさんがよくネタにされています(「ビルギットだけを殺す機械かよ!」など)。丁寧に再編成したうえでのリメークを切に望みます。ヒットを飛ばしているガンダムUCからの時代の連続性もあるので、UC~F91間の空白を埋めつつF91をリメイクしてOVA展開、同時に新キット発売、って結構いけるんじゃないんでしょうか。すくなくとも、ガンダムAGEよりよっぽどいい商売になると思いますよ、バンダイさん。