ホワイトベースの微妙な立場

(ネタばれありなのでご注意ください)

『機動戦士ガンダム』は、強襲揚陸艦「ホワイトベース」を中心にストーリーが展開していきますが、ホワイトベース、あるいはホワイトベースの乗員の立場が微妙であるがゆえに、話が分かりにくくなっている部分がありますので、今回はそのあたりをフォローしていきたいと思います。

地球で建造された、地球連邦軍の最新鋭の宇宙艦「ホワイトベース」は、スペースコロニー「サイド7」で開発中のモビルスーツを受領するため、地球を出発しました。トップシークレットではあるものの、連邦軍所属の正規の軍艦ですから、当然乗組員は連邦軍の正規軍人で占められており、その中にはガンダムなどの新たに開発されたモビルスーツに搭乗する予定のパイロットも含まれていました。

ところが、サイド7でジオン側から受けた奇襲攻撃により、モビルスーツのパイロットを含む正規軍人のほとんどが戦死してしまいます(アニメではいまひとつ説明しきれていないのですが)。そのような状態で、シャアの攻撃を振り切りサイド7を脱出するために、やむなく、アムロなどの民間人にモビルスーツやホワイトベースの操縦を任せることになってしまいました。この時は、サイド7の近くにある、連邦軍の宇宙基地「ルナツー」に逃げ込むまでの一時的な措置であるということになっていてました。

避難民を乗せ、命からがらサイド7を脱出してルナツーに逃げ込んだホワイトベースですが、ルナツー司令のワッケインは、最高機密の新兵器を民間人が勝手に運用したとして、ホワイトベースの乗員(アムロら民間人を含む)を逮捕・監禁してしまいます。

サイド7での戦闘で重傷を負ったホワイトベース艦長の必死の説得により、ワッケインは折れ、ホワイトベース乗組員の監禁は解きましたが、サイド7の避難民の受け入れは拒否し、また正規軍人を補充する余裕もないことから、ホワイトベースは、多数の民間人による運用体制のまま、避難民および新兵器の運搬のため、南米・ジャブローにある地球連邦軍本部まで赴くことになってしまいます。

この先、アムロら民間人は、正規軍人ではないにもかかわらず、連邦軍の「戦力・人手不足」という勝手な理由のため、連邦軍の最新兵器を本部に届けるという任務を課され、ろくな支援も受けられない状況で、戦いに借り出されていくことになります。当然不満はつのり、ブライト・リュウなどの数少ない正規軍人のクルーに対して、ことあるごとに反発します。

連邦軍の船に乗り、ジオン軍と戦ってはいるけれど、一方で連邦軍に対しても不満爆発、という微妙な立場は、こうして形作られました。

先にお話した、「アースノイドとスペースノイド」という軸で考えても、彼らの立場の微妙さが浮き彫りになります。ホワイトベースの民間人の多くは、宇宙生まれ、あるいは地球生まれの宇宙育ちであり、明らかに「スペースノイド」寄りです。しかし居住しているコロニーは連邦政府の支配下にあります。スペースノイドとして地球連邦に対し不満を持ち、ジオンに共感できる部分もある一方で、地球連邦市民として、あるいは、自分や仲間の命を守るために、ジオンと戦わなければならないわけです。

ガンダムは、敵味方がはっきりしなかったり、主人公達の行動がどっちつかずだずだったりで分かりにくいところがありますが、そうした勧善懲悪でないところがむしろガンダムの奥深さ・面白さである、ということは、今までも再三申し上げた通りです。

まとめ

・ホワイトベースは、当初は正規軍人によって運用されていたが、

シャアの攻撃でほとんどが戦死してしまった。

・その代わりに、なし崩し的に、アムロ達民間人が戦うはめになった。

・軍人でもないのに戦わされているので、不満に思い反発することも多し。

<補足>

    • その後、物語中盤で、アムロ達は正規軍人として連邦軍に編入されることになります。