U.C.0079の1月3日に、ジオン公国は地球連邦政府に対し宣戦布告を行いました。この戦争は、翌0080の1月1日に終戦協定が締結されるまでの約1年間続いたため、通称「一年戦争」と呼ばれます。
アニメ「機動戦士ガンダム」は、この一年戦争を初めから終わりまで追いかけているわけではありません。ここがこのアニメを分かりにくくしている原因の一つで、アニメはいきなりU.C.0079の9月18日から始まり、それ以前の経過については、ナレーションで簡単に解説するにとどめています。今回は、この9月18日以前の一年戦争の経過を説明したいと思います。
開戦に至るまでの経過は、既に述べましたが、ここで簡単に振り返っておきましょう。
人口・環境問題対策のため、地球連邦政府が人々を宇宙へ移民させた。
やり方が強引だったので、地球連邦政府と宇宙移民者が対立、争いの火種となる。
とうとう独立宣言するコロニーが現れる。「ジオン共和国」が誕生。
ところがザビ家がこれをのっとり、独裁国家「ジオン公国」となってしまう。
独裁・強硬姿勢のザビ家は、ミノフスキー粒子とモビルスーツを武器に、地球連邦に宣戦布告。
国力に劣るジオン公国は、長期戦は不利と考え、モビルスーツの優位性を武器に、短期決戦にて勝敗を決する作戦を立てていました。「コロニー落とし」です。
スペースコロニーを1基、本来ある場所から地球引力圏まで牽引し、地球連邦軍の本拠地である南米(ジャブロー)に落下させ、一気に叩き潰して勝敗を決するという、暴挙ともいえる作戦です。落下させるコロニーの住人はもちろん犠牲になりますし、さらには、巨大隕石に匹敵する質量をもつコロニーを地球に落下させることで、落下の衝撃・およびその後の気象変動による多大な悪影響が地球に及ぼされるのは必定ですが、それを分かった上での非情な作戦です。
ジオン公国の目論見通り、ミノフスキー粒子とモビルスーツの威力は絶大で、開戦後、ジオン軍は艦艇数に勝る地球連邦軍に対して連戦連勝、コロニー落としも計画通り実行されました。
しかし、コロニーが大気圏突入時の衝撃に耐えられず空中分解し、予定していた軌道を外れ、南米に落下しなかったため、短期で勝敗を決するという当初の計画は失敗に終わりました。
ジオン軍は、地球連邦に追従し、ジオンに従わなかった他のコロニー群に対しても容赦ない攻撃を行いました。これと、コロニー落下による地球上での被害を合わせると、当時の総人口110億のうちの半数が、開戦から僅か1週間の間に犠牲になったとされています。
コロニー落としによる戦争の短期決着に失敗したジオン軍ですが、地球連邦の宇宙軍は壊滅状態にあり、地球上もコロニー落としによって大混乱に陥っており有利な情勢に変わりはなかったため、地球降下作戦を開始し、地球上での版図拡大を図ります。しかし、急速な戦線拡大によって補給が滞り、戦局は次第に膠着状態に陥っていきます。
一方、地球連邦軍は、体制の立て直しを図るとともに、ジオンのモビルスーツに対抗できる、連邦軍製の新型モビルスーツの開発計画(V作戦)を立案し、これを遂行します。この計画で開発されたモビルスーツが、「ガンダム」です。
ガンダムの開発は、連邦政府の支配下にあるスペースコロニー「サイド7(セブン)」で行われました。そして、完成したガンダム(およびタイプの違うほかのモビルスーツ)を受領するために、南米ジャブローで新造された艦艇「ホワイトベース」が、9月18日、サイド7に入港します。
ジオン軍側も、連邦のモビルスーツ開発計画の情報は入手しており、シャア・アズナブル少佐がその調査を行っていました。シャアはホワイトベースを尾行しており、同様にサイド7にたどり着き、コロニー内を偵察するため、モビルスーツ「ザク」を潜入させます。
アニメ「機動戦士ガンダム」は、このザクの潜入シーンから始まるのです。
最後に、アニメ冒頭の、永井一郎氏の名ナレーションを引用します。ここまで本サイトをお読みになった方であれば、意味が理解していただけるかと思います。
人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた。
地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった。
宇宙世紀0079、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。
この一ヶ月あまりの戦いで、ジオン公国と連邦軍は総人口の半分を死に至らしめた。
人々は、自らの行為に恐怖した。
戦争は膠着状態に入り、八ヶ月あまりが過ぎた。
まとめ:
・戦争は1月から、アニメは9月から。
・モビルスーツの力でジオン軍は連戦連勝、コロニー落としも実行するがこれは失敗。
・ジオン軍有利な情勢から、次第に戦局は膠着状態へ。
・反撃のため、地球連邦軍は新型モビルスーツを開発。これが「ガンダム」。
・アニメは、ガンダムの開発が終了して、いよいよ出航!というところから始まる。
<補足>
コロニーを地球に落とす作戦は、「ブリティッシュ作戦」と呼ばれています。