● メタボロミクスの成果により、自身の生活が変化した例は何ですか?
答:食品の機能性成分の分析(従来のターゲット分析)については,貢献できている.
医学研究分野では,信頼できる診断バイオマーカーが見つかれば貢献できる.将来的に自身の生活が変化したと自信を持って言えるようにメタボロミクス研究を発展・成熟させたい.(和泉)
● 今後メタボロミクスに求められる技術(計測技術、データ解析など)
答:これは回答というより,ディスカッションとなった.(1)安定同位体化合物のノンターゲットトレースを簡便に行うツールがほしい.(2)解析を考えたくない.(3)未知のピークがわかるツール.などなど(津川)
● 社会人になる前に持っておくべきメタボロームの知識・技術
答:メタボローム解析を利用する側と作業する側では異なっている。利用する側としては、ある代謝系と関連がありそうな代謝系を見出したいのか、或いはノンターゲットな解析からバイオマーカーを見出したいのか等、目的に応じて手法の選択が大事。作業する側としてはとにかくノイズが少なく再現性のある美しいデータが取れるように調整する事。(佐々木)
● メタボロミクスの最終的な目標は何か
答:自分が何を見たいかによって変わる。バイオマーカーが見たいか、代謝フラックスが見たいかなど。仮に「全代謝物の量的変動の観察」とするとまだまだ沢山のハードルがあるが。他班の方々にも広く意見をお聞きしてみたい。(佐々木)
● オミクス測定で高い技術を持つ分析機関を教えてください。
答:今回参加しているイケメン講師の所属する研究室でしょうか。(平山)
● イケメン研究者の皆様がもとめる理想の分析装置とはどのようなものでしょうか。
答:サンプルを入れたらレポートが出てくる装置でしょうか(笑)。(平山)
● 分析機器の値段は、今後安くなるのでしょうか?もし現在の分析機器の性能で十分な場合は、ある程度は期待できるとおもうのですが、いかがでしょうか?
答:メタボロミクスがさらに発展・普及すれば、分析機器の需要も高まり、廉価モデルの価格も下がると思います。個人的には、保守費用ももっと抑えて欲しい・・・。(池田)
● メタボロミクスの医療への応用を考えた際に、どのような病気(予防)に役立つ可能性があるのでしょうか →そもそも分析対象は尿、血液、臓器のいずれが良いのか?等も気になります。
答:予防や診断というのであれば、対象は採取しやすい血液や尿などが良いと思います。一方で、その病気でなぜそれが変動するかを知る必要があるので、責任臓器を様々な角度から解析する必要もあると思います。ちゃんと診断できるのであれば、どんな病気にも役立つと思います(社会的なニーズは別として・・・)。(池田)
● メタボロミクスのauthenticityへの応用にも興味があります 福崎先生より、インドネシアのコーヒーや生薬の鑑別のお話を聞いたことがあるのですが、どこまで適用ができうるのかご意見をいただけませんでしょうか。(とても有効、補完的な位置付け、他の技術と組み合わせが必要など。また知見や経験など教えていただけますとありがたいです。)
答:トレーサビリティ技術を向上するために、メタボロミクス技術のauthenticityへの応用ができれば素晴らしいと思います。難しいかもしれませんが・・・食品であれば遺伝子検査ですり抜ける対象をメタボロミクス技術で判別できれば良いですね。(池田)
● がん細胞はなぜ酸素が十分に存在する状態でも、酸素を使わない方法でエネルギーを生産しているのか
答:すみません、がんの研究をされている先生に回答をお願いします。(三枝)
● 農産物におけるピーク数,使用機器について
答:経験がないので回答できませんが、及川さんやHMTさんならばピーク数は判ると思います。また、使用機器は、生物試料を行っている人と同様に、ターゲット解析ならば三連四重極型、ノンターゲット解析ならば高分解能型を使用されていることが一般的だと思われます。(三枝)
当たり前のことですが,農産物の種類によって変わりますし,分析する装置によっても異なります.数千〜数万ピーク検出して同定できるのは数百種類というのは他のサンプルと同じではないでしょうか?(及川)
● メタボロミクスを行うにあたり、どのような能力・素質が必要でしょうか? (サンプル調製、分析、解析など、各ステップで皆さんがどのように感じておられるか、興味があります)
答:色々な話がでましたが、メタボロミクスは比較的初心者であっても習得して活躍できる領域です。また、分析化学や物理化学の専門家がメタボロミクス行う場合と、基礎生物や植物学の専門家がメタボロミクスを行う場合でそれぞれ求められる能力が異なると思います。研究の目的によりますが、ターゲット分子の定量を目的としている場合、HPLCの知識や分離分析の能力が重要ですが、ノンターゲット分析の場合は、構造解析が必要になるので、化学やマススペクトル解析の能力が必要になります。また、大規模解析や相関解析を行う場合は、情報解析の経験があることも重要です。さらに、メタボロミクス解析結果の解釈には、代謝学、生物学、脂質化学等、生体分子機能解析の知識に加え、臨床検体を用いた場合は、各種疾患との関連性を考察できる能力が必要です。また、ノンターゲットメタボロミクスでは、最終的にバイオマーカー候補分子等になった化合物に対して、有機合成による標準試薬の作成も求められる可能性があり、その場合は有機合成の能力も必要になります。その全てができる人材を得ることは難しいので、メタボロミクスは少なくとも数人のチームで望むべきであると考えております。(三枝)
● 用いる機器はとても高価ですが、機器を持っていない若手研究者にも手が届くようなコストパフォーマンスが良いシステムはないのでしょうか?
答:30歳までは年間10万円でMSメーカーが貸し出してくれるシステムがあると嬉しい(笑)。
組立のコストが結構あるようなので、デアゴスティーニのように、パーツを毎月買うと自分で組み立てられるMSとかどうでしょう。
現実的な話をするとGC/MS、もっと現実的なのはGC/FID。
最近は科研費も装置の共同購入できるようなので、学内で欲しい人を探して一緒に購入するのも一つの手。(中山)
● メタボロミクスを行う上で律速になっている部分
答:装置が高い。自前で持っていないと検査の業務に忍び込ませるのが大変。担当部署がどこまでやってくれるかという部分もある。
データから生物学的な部分に結びつけるのが難しい。製薬はマルチオミクスでの仕様が前提だが、そこをどう結びつけるかが難しい。
ノンターゲットの同定ができない。
メタボロ屋の育成が十分にできていない。育成拠点が十分にない。単純な分析屋さんだと思われている。
社内ではサイドワークになっているから会社からの理解を得るのが難しい。
サンプリングが実は大変。でっかい動物(象とか)はサンプリングが大変。部位に依っても結果が異なると思うし、暴れられたら命がけ。果実なんかも部位特異性がありそうだからサンプリングをよく考えないといけない。
異なる分析装置の統合をどうするかが難しい。(中山)
● 今後注目すべき装置、分析系、カラム
答:Imtaktのmix-modeカラム。
イオンクロマトグラフィーMS。
香り成分のメタボロを定量的にしっかりできるシステムが欲しい。
Retention timeが揃う装置やシステムが欲しい。
データの解釈をテキストベースでAIがやってくれる様になるといいですよね。(中山)
● 環境ホルモンの身体に及ぼす影響についてメタボローム解析された事例としてどのようなものがありますか。
答:阪大などでの個別研究例あり.大規模分析については今後の課題.(及川)
● 一般人(誰にでもわかるよう)にメタボロミクスを簡潔に説明するにはどう言えば良いですか?
答:「代謝物」「化合物」を「成分」と言い換える.分かりやすい例は疾病バイオマーカー.「サンプルに含まれる成分をできるだけ多く調べる方法」(及川)
● メタボロミクス研究が盛んになり,医療・医薬品だけでなく,食品・植物・微生物学など色んな業界へのアプリケーションが増えてきました.以前は「生体内代謝物の網羅的解析」と一意的に定義されたメタボロミクスですが,今改めて再定義するならどのような言葉で説明されるのかお聞きしたいです
答:「サンプルに含まれる低分子化合物を同時網羅的に解析する」(広義で)
・ゲノミクスやプロテオミクスなどに対する言葉のメタボロミクスが狭義であるべき(及川)
● 天気によって実験結果が変化すると聞いたのですが、それはどうしてですか。
l 答:誘導体化(GCMS)試薬は水と反応するので,湿度が高いと誘導体化効率が下がる→器具を良く乾かすとか十分な窒素雰囲気下で実験するとか気をつける(特に梅雨の時期)(及川)
● メタボロミクスによって初めて分かった現象の例や、他のオミクス解析よりも優位な点
答:ゲノム情報の無い非モデル生物でも分析できる
・食品,環境なども対象となる
・バイオマーカー,医療分野の発展
・レビューいっぱいあるから読んでください(及川)
● メタボロミクスの線引きについて。例えば、アミノ酸のみを網羅的に解析している場合は、アミノ酸をターゲットにしたターゲットメタボロミクスという解釈でいますが、極端な話ターゲットを3つに絞ってしまうとそれはメタボロミクスではないと思います。網羅的な解析とはどの範囲を指し、どこまではメタボロミクスと呼んでよいのか気になりました。
答:結局は「俺メタボロミクス」なのが現状でしょうか。(三浦)
● メタボロミクスが日常生活に生かされている実例
答:バイオマーカー探索や食品研究の現場では非常に役に立っています。(三浦)
● 特に植物や食品の分野において今後求められそうな、新しい分析技術がありましたらご紹介いただきたいです。
答:イメージング?超高分解能でのMSイメージング。酵母細胞内のフラックス可視化。植物ホルモンの局在可視化。unknownの同定。他に何かあれば追記お願いいたします(三浦)