● 同じくGC/MSの多くのunknownピークに対して、同定にチャレンジしている研究者はいるか。
答:保持時間とEIフラグメントの帰属法や法則性を再度検討していくしかない.この分野の世界トップランナーの津川さん(@理研)にお聞きするのが良い.(和泉)
● GC/MSを担当していますが、TMS化の温度の37℃となる根拠を知りたいです。(そういった論文の紹介でもよいです)
答:最初にGC/MSメタボロミクス分析法を提案した論文は以下となる.
O. Fiehn, J. Kopka, R. N. Trethewey, and L. Willmitzer, Anal. Chem., 72, 3573 (2000).
・ 一方で,上記論文では誘導体化条件を検討した詳細なデータは記載されておりません.これまでのメタボロミクス研究者は,上記論文の誘導体化条件(温度,時間,誘導体化試薬の量)は完璧なものと信じ込んでおり,その後あまり条件検討の評価は実施されてこなかった.
・ 現在では,植物試料以外の様々な生体試料の分析が実施されている.当然,それらの資料に含まれる代謝物は異なるため,誘導体化の条件も最適化する必要はあると考えられる.
・最近,検討したところ,特に誘導体化 の量(反応液中での濃度)は誘導体化効率に大きく影響していることが分かって来ており,誘導体化条件を再度見直す必要がある.
・ MSTFA+1%TMCS (Thermo Scientific™) TMCS を添加することで,MSTFA 単独では誘導体化されないアミド,第 2 級アミン,および立体障害のあるヒドロキシル基を誘導体化できるとの説がある.こちらについても検討が必要.
参考:シリル化剤の強さは以下の順になります (GL Sciences HP参照)
TMSI>BSTFA>BSA>MSTFA>TMSDMA>TMSDEA>MTMSA>TMCS(with base)>HMDS(和泉)
● GC-MSによるメタボロミクスでMSイオン源が汚染されるが、何か良い対策は?
答:セルフクリーニングイオン源がひとつの解決策.イオン源に微量の水素を流し,イオン源の汚れを最小限に抑制する (Agilent特許).材料の分野では,水素を用いた洗浄などは良く使用されてきたようです.Agilentの検証では,サンプルの種類や使用頻度にもよりますが,月1回のメンテナンスが,4ヶ月に1回程度に延長するとのことです.
参考: 水素ガス発生装置は株式会社エアーテックなどから購入可能.(和泉)
● GCMSでの測定時、同じ成分で複数の誘導体化成分が検出される場合の解析処理の仕方
答:選択性の高いEI定量イオンを使用する.また,誘導体化試薬の量,反応時間,反応温度によって効率は変わる.新しい生体サンプルを分析する際には,大量に回収抽出した同一試料を用いて,反応条件等を検討するのがよい.また,誘導体後の安定性については,代謝物によって様々なようなので注意が必要.(和泉)
● GC-MSを用いたトリシリルメチル誘導体化でのメタボローム解析の前処理における注意点、をお教えいただきたいです。
答:十分に乾燥させる(水分を除去).誘導体化条件の検討については上記と同じ.(和泉)
● GC-MSでピルビン酸を分析すると、複数のリテンションタイムでピークが確認できます。みなさんはどのピークをピルビン酸としていますか。
答:エノール型のピルビン酸かも?メトキシ化を十分に実施すると解決するのではないか?
・メトキシアミンの調製液を使いまわしていた(おそらく原因はこれだろう).用事調製を実施すると解決できる可能性あり.(和泉)
● GCの安定性に最も寄与する(最も影響を及ぼす)ものは何か
答:イオン源の汚染と誘導体化条件の最適化だと考えられる.(和泉)
● GC/MSを用いたメタボロミクスで、アミノ酸の光学異性体が分離でき、更にはその他低分子代謝物質も網羅的に分析できたらコストパフォーマンスなどの面で素晴らしいかもと思うのですが、技術的に可能でしょうか?
答:しっかり光学異性体を分離して進めていきたいのであれば、それぞれに分離条件を最適化する必要があるので、網羅的にやるのは現状厳しいのでは・・・。(池田)
● GC-FIDによるメタボロミクスのやり方を教えてください。
答:GC-FIDについては下記4つ論文だしてますので,それを参考にすればできるとおもいます。基本GC/MSと同じです
Application of gas chromatography/flame ionization detector-based metabolite fingerprinting for authentication of Asian palm civet coffee (Kopi Luwak).
Jumhawan U, Putri SP, Yusianto, Bamba T, Fukusaki E.
J Biosci Bioeng. 2015 Nov;120(5):555-61. doi: 10.1016/j.jbiosc.2015.03.005. Epub 2015 Apr 23.
Metabolic fingerprinting of hard and semi-hard natural cheeses using gas chromatography with flame ionization detector for practical sensory prediction modeling.
Ochi H, Bamba T, Naito H, Iwatsuki K, Fukusaki E.
J Biosci Bioeng. 2012 Nov;114(5):506-11. doi: 10.1016/j.jbiosc.2012.06.002. Epub 2012 Jul 21.
Gas chromatography-mass spectrometry based metabolic profiling for the identification of discrimination markers of Angelicae Radix and its application to gas chromatography-flame ionization detector system.
Kobayashi S, Putri SP, Yamamoto Y, Donghyo K, Bamba T, Fukusaki E.
J Biosci Bioeng. 2012 Aug;114(2):232-6. doi: 10.1016/j.jbiosc.2012.03.022. Epub 2012 May 25.
Fast GC-FID based metabolic fingerprinting of Japanese green tea leaf for its quality ranking prediction.
Jumtee K, Bamba T, Fukusaki E.
J Sep Sci. 2009 Jul;32(13):2296-304. doi: 10.1002/jssc.200900096.(馬場)
● GC/MSでもunknownピークは多いですが、解釈の時にどのように活用しているか。
答:GC/MS測定の場合、データベースが充実しているので先ずはUC Davis の研究室から出されているライブラリーを参照すると良いです。また、理研の津川さんが作成されたMS Finder等は構造推定に有用です。特に誘導体化の種類から化合物構造を絞ることもできるので、各種誘導体化を試してみると良いかもしれません。(三枝)
● GC/Q-MSを用いた食品サンプル分析において,Unknownを減らしたりアノテーションの精度を向上したりするために使用できるソフトウェアなどがあれば教えていただきたいです.
答:AMDISを用いてピークデコンボリューションすれば、と言う方がいましたが、津川さんいかがでしょうか。(三浦)