今回は,NIST MS Searchの具体的な使い方を見てみようと思います.
AMDISとの連結に関して前回は述べましたが,これはAMDISが唯一NIST MS Search Programとの連動機能がついているという理由で紹介しようと思ったにすぎず,本来NIST MS Search Programはそれ自体,単独で使用可能です.
基本的に使うツールボタンは2つです.
1.Import: 左から3番目の,「ファイルを開く」的なツールボタン
2.Library search options: 左から4番目の,赤いスペクトルっぽい絵のボタン
AMDISと連結する場合,1は意識しなくて良いです.ただ,AMDISのスペクトル全部を一気に!とか,QTOFやQExactive等の,いわゆるMS/MSデータをNIST Searchにかけたい!というためには,1の操作が必要になってきます.
AMDISのスペクトルを全部一気に!は,あまり必要ないかと思うのですが(AMDIS上で簡単に,検出されたピークを全部MSPファイルに一括保存できるやり方があります),LC-QTOF/MS等で取得したデータを化合物同定したい!というときや付属ソフトウェアではどうしても潰しがきかない場合は多々あると思います.
そんなときは,まず各社の生データファイル(つまりスペクトルデータ)をMSP,JCAMPもしくはMGFに変換しておけば,1のオプションによりNIST MS Search Programにインポートすることができます.
MGFへの変換は,ProteoWizardでほとんどすべてのMSメーカーに対してサポートされているので,ProteoWizardによるMGFの変換をお勧めします.
http://proteowizard.sourceforge.net/
余談ですが,MS生データは基本的にBinary(人間が認識できない)データで記載されていて,API(Application Programming Interface: 要するに,この場合,データを取得するためのプログラミング上のメソッドコマンド)さえユーザーには与えられていないので,各社raw dataを自分自身で直接解析することはまず不可能です.一方で,ProteoWizardでは,このようなMSデータをすべてテキスト形式で出力してくれる機能もあり,モチベーションの高い学生や,既存ソフトウェアではどうも手が届かないから自分で自作プログラムを作ってみようという方は,ProteoWizardは最適なツールかと思います.有名なmzXMLやmzMLも,Base64とzlibのinflateをクリアして,あとは各プログラミング言語のfile streamを理解すれば読めるので,研究の幅も広がるのでは?と思ったりします.
話は戻って,とにかく,MGF形式やMSP形式ファイルを1でインポートするか,AMDISのGo to NIST機能を使うと,Lib. Searchタブのメインウィンドウに,検索候補のスペクトル情報が一覧で表示されます.
次に,2番目のLibrary search optionを押してください.
1.まず,GC/MSのデータを検索したい場合,つまりシングルMSのデータを解析したい場合(管理人これで一回はまりました!),Searchタブの「Spectrum Search Type」において,
「Identity」かつ「Normal」を選択しておいてください.ここが「MS/MS」になっていると,何も検索ヒットしてきません.
逆に,MS/MSのデータを解析したい場合は「Identity」かつ「MS/MS」を選択してください.
2.MS/MS searchを行う場合は,次のMS/MSタブから,precursorイオンのmass toleranceとproductイオンのmass toleranceを入力してください.
3.Librariesで,検索したいデータベースをincluded libsに加えてください.Available Libsに何も表示されていない方は,前回および前々回のコラムを参照してください!また,コンボボックスでSpectrum searchが選択されていることも確認しておいてください.
あとの3つのタブは必要ないので,これでOKを押します.
ちなみに,管理人が使っているのはNIST MS Search 2.0 f (build Dec. 3, 2009)であり,おそらく今最新のものは2.0gです.管理人は2.0fのほうがわかりやすくて好きなのでアップデートしていませんが,現在ダウンロードできるバージョン(つまり2.0g)をご利用の方は,少し上記と違うと思います.ただ,根本は同じなので.
最後に,一番左のツールボタン「Go」と書かれたものを押すと,一括処理が始まります.
また,1つずつやりたい場合などは,その化合物の行を「ダブルクリック」すればそのファイルだけ解析されます.
結果は,左下にヒット結果,右にはライブラリーとのスペクトルマッチがスペクトルの絵と一緒に出力されます.Figureも保存できて,そのまま論文に張り付けられるので,化合物同定して「この生体試料で初めてこの化合物が同定されました!」というときにバーンとこのスペクトルマッチの図を出すという感じに使ってもよいかと思います.
それでは,今日はこの辺で.来週からは,化合物表記方法について記載していきたいと思います.