このコラムでは,NIST MS Search Programについてご紹介したいと思います.
日本では,JAICI(化学情報協会)から情報が閲覧可能です.
http://www.jaici.or.jp/wcas/wcas_nist.htm
NIST MS Search Program自体は,以下のホームページからダウンロード可能です.
http://www.jaici.or.jp/wcas/wcas_nist.htm
(注:ここからダウンロードせずとも,このコラムの下のほうにある管理人が用意したリンクのほうが,すべて必要なものが揃えられてあるので,良いと思います.)
今回は,
「AMDIS等で使うMSPスペクトルライブラリーを,いい感じに閲覧するためのツールはないの?」
とか
「購入したWiley MS libraryやNIST library,もしくはMassBankライブラリーを一括管理できるツールは?」
という希望に答えてくれるNIST MS Search Programについて少し書きます.
最初断っておきますが,
・NISTライブラリー
と
・NIST MS Search Program
は全くの別物です.前者は,おそらく皆様がご存知の,有償スペクトルライブラリーであり,EIスペクトルやMS/MSスペクトルをそれぞれ30万種くらい格納してくれている素晴らしいライブラリーです.
http://www.nist.gov/srd/nist1a.cfm
日本からは,上記のJAICI(化学情報協会)のページから問い合わせ可能です.(自分が購入したことないので詳細不明ですが)値段は10万確実に切っていると思います(7万くらい…?).また,細かい情報がどこまで重複しているかはわからないのですが,Wiley 10th / NIST 14 combined libraryというものも存在し,とりあえずこれを買っておいたら基本,市場にある市販スペクトルのほとんどを網羅できていると思います.アジレントさんのホームページがよくまとまっていると思います.
http://www.chem-agilent.com/contents.php?id=41923
話はそれましたが,これらはすべて有償であり,「スペクトル情報」です.
一方,このようなスペクトル情報を実際に「使う」,もしくは単純に目で「見る」ためのツールが,NIST MS Search Programです.上記リンクからダウンロードできるこのプログラムは無償であり,第三者への再配布が可能です.(もちろん,有償のライブラリーは付属させてはいけません.)
いつか細かく紹介しますが,このNIST MS Search Programは保持時間・保持指標・MS/MS・プリカーサ‐サーチ等,色々な絞り込み方法と独自のシミラリティ検索アルゴリズムにより,柔軟な化合物同定が可能です.このようなシミラリティ検索アルゴリズムで有名なのは,開発者Stephen E. Steinの論文で紹介されています.
Stein, S. E. & Scott, D. R.: Optimization and Testing of Mass Spectral Library Search Algorithms for Compound Identification. JASMS, 5, 859-866 (1994).
Dot product search法やProbability-based matching (PBM)法は特に有名です.Dot productは,「コサインマッチ」とか「相関係数」とほとんど類似です.PBMは,dot productにさらにisotopic ionsの強度比シミラリティも統合した値という意味合いになっていると思います.また,現在に至るまで細かく改良がなされており,(もはや詳細は知りませんが)スペクトル数が少ない化合物に対する「重み付け」の方法も改良されているそうです.まぁ,この辺の細かな話はあまりにもマニアックなので,今回は控えます.
話がまたそれましたが,なんにせよ,このプログラムは以外と便利!ということです.
以前紹介したMassBankのMSPフォーマットファイルや,他の市販ライブラリーのフォーマットファイルを,NIST MS Search Programで読めるようにするためのコンバーター(Lib2NIST)も,上記ホームページからダウンロード可能です.
以前紹介した,MassBank MSPスペクトルライブラリーをLib2NISTでコンバートし,NIST MS Searchで自由に閲覧できるようにまでしているプログラム一式を以下のリンクからダウンロードできるようにしておいたので,ご自由にどうぞ.
https://dl.dropboxusercontent.com/u/12061578/NIST%20MS%20Search%20%28EI%20spectra%29.zip
管理人は,実際これプラス,NISTやFiehnライブラリーのEIスペクトルすべてをこのプログラムに読み込ませておいて,in house libraryではUnknownだったものに関してAMDISの「外部サーチ機能」としてこのSearch Programを使い,化合物「アノテーション」を行っています.スペクトル情報しか使えませんが,それでもかなり強いですよ.(ちなみに,構造情報から保持時間推定プログラムを自前で作っておけば,さらに「予測保持時間」で候補化合物を絞ることだってできます.この辺の話は,また今度取り上げます.)
また,MS/MS searchもできるので,MassBank, Metlin, LipidBlast, Respect等のMS/MSライブラリーもまとめて管理できるようになっています.(これもまた別途)
それでは,今回はこの辺で終わります.
次回は,AMDISとこのNIST MS Search Programの連結方法および,AMDISの「外部サーチ機能」としてのNIST MS Search Programを紹介したいと思います.