㈱実用技術研究室
超短パルスレーザー応用、レーザー微細加工、技術コンサルティング
超短パルスレーザー応用、レーザー微細加工、技術コンサルティング
Nd3+ (Feb. 18, 2018)、自然放出、誘導放出 (Feb. 25, 2018)、熱平衡状態における誘導放出と光吸収 (Mar. 4, 2018)、反転分布状態における誘導放出と光吸収 (Mar. 11, 2018)、光ポンピング (Mar. 18, 2018)、4準位レーザー (Mar. 25, 2018)、Qスイッチ (Apr. 1, 2018)、縦モード (Apr. 8, 2018)、横モード (Apr. 15, 2018)、開口数 (Apr. 22, 2018)、集光ビームの推定評価 (Apr. 29, 2018)、入力ビームと焦点のエネルギー分布 (May. 6, 2018)、トップハットビーム (May 13, 2018)、ガウシアンビームとトップハットビームの比較 (May 20, 2018)、実作業におけるいろいろなコツ (Jun. 3, 2018)、光路設定,アライメントのコツ (1) (Jun, 17, 2018)、光路設定,アライメントのコツ (2) (Jul, 1, 2018)、光路設定,アライメントのコツ (3) (Jul. 15, 2018)、光路設定,アライメントのコツ (4) (Jul. 29, 2018)、光路設定,アライメントのコツ (5) (Aug. 12, 2018)、光路設定,アライメントのコツ (6) (Aug. 26, 2018)、光路設定,アライメントのコツ (7) (Sep. 9, 2018)、加工機運転のコツ (1) (Sep. 23, 2018)、加工機運転のコツ (2) (Oct. 7, 2018)、加工機運転のコツ (3) (Oct. 21, 2018)、加工機運転のコツ (4) (Nov. 4, 2018)、加工機運転のコツ (5) (Nov. 18, 2018)、加工機運転のコツ (6) (Dec. 2, 2018)、加工機運転のコツ (7) (Dec. 16, 2018)、加工機運転のコツ (8) (Dec. 30, 2018)、加工機運転のコツ (9) (Jan. 13, 2019)、加工機運転のコツ (10) (Jan. 27, 2019)、加工機運転のコツ (11) (Feb. 10, 2019)、加工機運転のコツ (12) (Feb. 24, 2019)、加工機運転のコツ (13) (Mar. 10, 2019)、レーザー発振器の仕様書の読み方 (Mar. 24, 2019)、DPSSレーザーの仕様 (Apr. 7, 2019)、出力中心波長 (1) (Apr. 21, 2019)、出力中心波長 (2) (May 5, 2019)、出力中心波長 (3) (May 19, 2019)、出力中心波長 (4) (Jun. 2, 2019)、平均出力 (Jun. 16, 2019)、パルスエネルギー (Jun. 30, 2019)、繰返し周波数 (Jul. 14, 2019)、パルス幅 (Jul. 28, 2019)、横モード,M2 (Aug. 11, 2019)、ビーム拡がり角 (1) (Aug. 25, 2019)、ビーム拡がり角 (2) (Sep. 8, 2019)、ビーム真円度 (Sep. 22, 2019)、集光スポット形状 (Oct. 6, 2019)、偏光比 (Oct. 20, 2019)、平均出力安定性 (Nov. 3, 2019)、パルスエネルギー安定性 (Nov. 17, 2019)、ポインチング(指向)安定性 (Dec. 1, 2019)、ポインチング変動による加工位置精度の低下 (Dec. 15, 2019)、高調波出力モデル (Dec. 29, 2019)、暖機運転 (Jan. 12, 2020)
ネオジウムは希土類元素である。原子番号は60。磁石材料として有名である。ネオジウムの三価の陽イオンは、レーザー活性材料である。
Ndレーザーは、四準位レーザーである。波長約1064 nmの光は、4F3/2 から 4I11/2 への遷移により得られる。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
低いエネルギー準位の電子軌道から励起された電子は、周囲からの刺激がなければ、高いエネルギ準位の電子軌道に留まる。高いエネルギー準位の電子軌道に、励起された電子が留まる平均時間を、励起寿命と呼ぶ。励起寿命が過ぎると、高いエネルギー準位の電子軌道にある電子は、低いエネルギー準位の電子軌道に遷移する。励起電子の緩和が光の放出であるとき、これを「自然放出」と呼ぶ。
励起電子の低いエネルギー準位の電子軌道への遷移に伴う発光には、もう一つ別のタイプがある。それは「誘導放出」と呼ばれる。光が励起電子の近傍を通り過ぎるとする。励起電子の近傍を通過する光の波長が、励起電子からの自然放出による光の波長と「同じ」であるとき、励起電子は「すぐさま」低いエネルギー準位の電子軌道へ「誘導放出」を伴って遷移する。誘導放出の引き金となる光を、「種光」と呼ぶ。
誘導放出光の波長、位相、伝播方向は、種光のそれらと同じである。誘導放出光と種光は、コヒーレントな関係にある。
誘導放出の後、誰も誘導放出光と種光を区別して認識することはできない。我々は、誘導放出光と種光が足し合わされた光を観測する。この光の足し合わせは、「コヒーレント加算」と呼ばれる。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
熱平衡状態にある系を考える。熱平衡状態では、高いエネルギー準位の電子軌道にいる電子の数は、低いエネルギー準位の電子軌道にいる電子の数よりも小さい。従って、光吸収(低いエネルギー準位の電子軌道から、高いエネルギー準位の電子軌道への、電子の遷移)の確率は、発光(高いエネルギー準位の電子軌道から、低いエネルギー準位の電子軌道への、電子の遷移)の確率よりも大きい。
種光が熱平衡状態にある系に入力されても、我々はこの系から光が出力されるのを観測することはない。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
「負の温度」と呼ばれる、特別な熱状態がある。負の温度の状態では、高いエネルギー準位の電子軌道にいる電子の数は、低いエネルギー準位の電子軌道にいる電子の数よりも大きい。「負の温度」は、「反転分布」(低いエネルギーにある状態の数よりも、高いエネルギーにある状態の数の方が大きい)とも呼ばれる。
光吸収の確率は、誘導放出の確率よりも小さい。
従って、負の温度の状態にある系に種光を入力すると、系から増幅された光が出力されるのが観測される。
増幅とは、出力される光の強度が、入力された光の強度よりも大きいことを意味する。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
昔、半導体レーザーがまだなかった頃、レーザー発振のための光励起(光ポンピング)には、希ガスを含むランプやフラッシュランプが使われていた。Nd3+の800 nm近傍の吸収が、波長1064 nmのレーザー発振に関係している。フラッシュランプの発光スペクトルを図に見ることができる。フラッシュランプの発光は、300 nmから1 µmを超える広い波長領域に及ぶ。その広い波長範囲にもかかわらず、Nd3+ レーザーの1064 nmの発振に寄与するのはわずか800 nm近傍の波長のみである。換言すると、フラッシュランプを用いた光ポンピングはエネルギー効率が悪い。
半導体レーザーはレーザーであるので、出力が単色であるというレーザーの特色を備えている。最近、半導体レーザーの出力はどんどんと向上してきている。単色で高出力の光源は、レーザー発振のための高効率光ポンピングに適している。現在、Nd3+レーザーの大部分がDPSS(半導体励起固体)レーザーになってきている。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
Nd3+ レーザーは4準位レーザーである。4I9/2 は「基底準位」、 4F5/2 と 2H9/2 は「励起準位」、 4F3/2 は「レーザー上準位」そして 4I11/2 は「レーザー下準位」である。
基底準位にある電子は、光ポンピングによって励起準位に励起される。励起準位の励起寿命は短い。すぐさま、励起準位にある電子はレーザー上準位へ遷移する。この遷移は無輻射遷移である。 レーザー上準位の励起寿命は長い。光ポンピングの結果として、大量のNd3+がレーザー上準位に電子がいるという同じエネルギー状態を有するようになる。レーザー下準位にいる電子は レーザー上準位から遷移してきた。レーザー下準位の励起寿命は短いので、レーザー下準位にいる電子は、すぐに基底準位へと遷移する。従って、レーザー下準位が電子に占有されている Nd3+ の数はわずかである。反転分布は、レーザー上準位が占有されているNd3+のエネルギー状態と、レーザー下準位が占有されているNd3+のエネルギー状態の間で満足される。
レーザー発振は、光子エネルギーの変換である。レーザー光の光子エネルギーを、ポンプ光の光子エネルギーで割ったものは、量子効率と呼ばれる。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
品質因子(Q値)は、共振器内の振動の状態に関するパラメータである。このパラメータの値は、共振器内に蓄えられるエネルギーを、散逸率で割って求められる。共振器の品質因子は、共振器内での光子の寿命に比例する。
共振器の品質因子が低い時、共振器の損失が大きい。種光はすぐさま消失してしまうので、誘導放出は生じない。光ポンピングは、大きな反転分布を形成する。
一方、共振器の品質因子が高い時、共振器の損失はわずかである。支配的な現象は、誘導放出になる。
「Qスイッチ」とは、品質因子の値を「低」から「高」にスイッチすることを意味する。品質因子が低い間、反転分布は成長する。品質因子を「低」から「高」にスイッチすると、共振器内に蓄えられた大量のエネルギーが、即座に、極短い時間(ナノ秒)の間に解き放たれる。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
光共振器の中に存在できる光は、定在波と呼ばれる。定在波は次式を満足する、
L = m ( λ / 2 )
ここで L は共振器長、m は任意の整数、λ は光の波長である。
Nd3+ の 1064 nm近傍の自然発光は、分布(拡がり)を持っている。中心波長は約 1064 nm、約 1063 nm から約 1065.5 nm にかけて分布している。
一般に材料加工用のレーザーは、多くの波長の光を出力する。これらの光の波長は、定在波に関する式を満足しており、且つ、自然発光の分布内にある。我々はこのタイプのレーザーを「マルチ縦モードレーザー」と呼ぶ。
計測やセンシング用途では、ただ一つの縦モードしか持たないレーザーがある。我々はそれを「縦単一モードレーザー」と呼ぶ。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
短パルスレーザー、超短パルスレーザーの出力ビームの殆どは、ガウシアンである。ガウシアンビームの断面内のエネルギー密度分布は、正規分布である。ただ一つのエネルギー密度の強い点が存在する。
光のエネルギーは、電磁場の二乗に比例する。また、ビームの断面内で電場の方向と磁場の方向は直交している。横方向電場モードは、電場の二乗の極大の数から一を引いた数字と定義される。横方向磁場モードは、磁場の二乗の極大の数から一を引いた数字と定義される。ガウシアンビームの場合は、横方向電場モードは零(TE0)であり、また横方向磁場モードは零(TM0)である。TE0 且つ TM0 の状況を TEM00 と表記する。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
開口数(NA)は、集光に関する指標である。大きなNAの集光では、小さな明るい集光スポットが得られる。一方、小さなNAの集光では大きくて暗い集光スポットが得られる。開口数の定義は、
NA = n sinθ ≒ n ρ / f ,
である。ここで、n は集光の場の屈折率、ρ はビーム半径、f はレンズ焦点距離そして θ = arctan( ρ / f ) である。
古典光学は、ガウス光学とも呼ばれる。これらの一般的な光学は、近軸近似に基づいている。近軸近似下では、以下の関係が成り立つ。
θ = sinθ = tanθ
NAが約0.10よりも大きくなると、近軸近似に基づく計算には無視できない誤差が生じるようになる。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
焦点面でのエネルギー分布や伝搬軸に沿ったエネルギー分布などの集光ビームの特性は、フラウンホーファ回折に基く計算により推定評価することができる。
u1が光電場の振幅分布である時、遠視野の電場振幅分布をu2として得ることができる。焦点における電場の振幅分布u2を得るには、「u1」の代りに「u1×レンズの位相シフト関数」を用いる。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
u1が光電場の振幅分布である時、u1×u1* は光のエネルギー分布である。u1* は u1 の複素共役である。
入力ビームのエネルギー分布を図中に書き入れてある。Dt はトップハットビームの直径、D1/e2 はガウシアンビームの直径である。pe はパルスエネルギーである。
トップハットビームやガウシアンビームの焦点面におけるフラウンホーファ回折は、解析的に解くことができる。図中に、焦点面での分布の表式を示す。f は集光レンズの焦点距離、J1 は第一種一次のベッセル関数である。
ガウシアンビームに関しては、伝搬軸に沿った分布も解析的に解くことができる。一方、トップハットビームは伝搬軸に沿った分布の解析解を得ることができない。従って、数値解析によって分布を得る。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
トップハットビームの焦点の特性は、古典光学において既に調べられている。焦点面上で、トップハットビームの焦点は、「エアリーパタン」と呼ばれるユニークな強度分布を有する。「エアリーパタン」は、円型虹彩を通過した光により作られる干渉パタンである。明るい円板が中心にある。さらに中心の明るい円板の外側には、多くの同芯の明るい円と暗い円が交互にある。中心の明るい円板は「エアリーディスク」と呼ばれる。
トップハットビームの集光直径 dt0 は、最も小さい暗い円の直径と定義される。トップハットビームの焦点深度 ztf は、「焦点からの伝搬軸に沿った変位であり、焦点における光強度の80%以上が維持される範囲」と定義される。
ガウシアンビームとトップハットビームの焦点の特性を比較するためには、定義を統一しなければならない。図中に、ガウシアンビームに対する定義に従った場合の、トップハットビームの焦点の集光直径 dt1/e2 と焦点深度 ztf50 の表式を示す。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
ガウシアンビームとトップハットビームの集光スポットの特性を比較しよう。ガウシアンビームについての集光スポット直径および焦点深度の定義を、トップハットビームにも適用する。
パルスエネルギーと、集光スポット直径を同じにした場合、ガウシアンビームの集光スポットの中心の強度は、トップハットビームのそれよりも若干強い。別の表現をすると、トップハットビームの場合、エアリーパタンの明るい同心円に、少なからぬ量のエネルギーが分配されている。
集光スポット直径が同じ場合、トップハットビームの焦点深度は、ガウシアンビームのそれよりも明らかに深い。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
p.s.
次回 (Jun. 3, 2018) 以降、隔週で新しい記事を掲載します。
下方から上方に向かう光路は危険である。多くの眼を焼く事故が、下方から上方に向かうビームが原因で発生している。事故を避けるために、光路は水平面内で組むのが良い。
レーザービームは直進する。光学素子は、その中心をビームが通るように、位置が調節される。多くの光学素子があるならば、光学ベンチを用いるのが便利である。光学素子は、光学ベンチ用キャリア、ロッドスタンド、ロッド、ホルダを用いて保持され、光学ベンチ上に設置される。
一般に、一本の長い光学ベンチの代用として、幾本もの短い光学ベンチを継ぎ足して使う、ということはしない。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
レーザー光源は「平行移動 (上下,左右)」「アオリ (上下,左右)」調整ができるホルダに保持される。
二組の高さを揃えた「虹彩絞りユニット」(光学ベンチ用キャリア、ロッドスタンド、ロッド、虹彩絞りホルダ、虹彩絞りから成る) を用いる。
(a) 光学ベンチの両端に「虹彩絞りユニット」を設置する。
(b) 光源側の「虹彩絞り」を絞る。
(c) 光源ホルダの「平行移動」ノブを用いて,出力ビームの高さを「虹彩絞り」中心に合わせる。
(d) 手前側「虹彩絞り」を解放し、後方側「虹彩絞り」を絞る。
(e) 光源ホルダの「アオリ調整」ノブを用いてビームの出射方向を調整し、後方側「虹彩絞り」を通過させる。
(b) ~ (e) を数回繰り返す。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
波長板を例にとる。
「波長板ユニット」は、光学ベンチ用キャリア、ロッドスタンド、ロッド、波長板ホルダ、波長板から成る。
可視光をガイドビームに用いる。予め、ガイドビームを光学ベンチに平行に通しておく。
(a) 光学ベンチのガイド光源側に「虹彩絞りユニット」を設置し、これを閉じる。
(b) ロッドの中間リングを用いて、波長板の高さをガイドビームに合わせる。
(c) ロッドを軸として波長板ホルダを回転させて、波長板表面の法線とガイドビームを一致させる。
波長板表面からの反射光を、虹彩絞り表面にスポットとして見ることができる。波長板を回転させると、虹彩絞り表面のスポットが円を描く。我々のゴールは、スポットが描く円の最小直径を得ることである。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
平凸レンズ、平凹レンズともに、同じ手順に従う。
「レンズユニット」は、光学ベンチ用キャリア、ロッドスタンド、ロッド、レンズホルダ、レンズから成る。
可視光をガイドビームに用いる。予め、ガイドビームを光学ベンチに平行に通しておく。
(a) 光学ベンチに「虹彩絞りユニット」と「レンズユニット」を置く。レンズの曲面をガイド光源側に向ける。「虹彩絞りユニット」をガイド光源側に置く。「レンズユニット」と「虹彩絞りユニット」の間隔を、レンズ焦点距離程度にする。虹彩絞りを閉じる。
(b) 二つのスポットが虹彩絞り周辺に現れる。一つのスポットは大きく、他方は小さい。虹彩絞り表面における二つのスポットの高さが同じになるように、レンズ高さを調節する。
(c) ロッドを軸としてレンズホルダを回転させて、虹彩絞り表面の二つのスポットを一致させる。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
光は直進する。時に我々は、光路を曲げたい場合がある。そのような場合に、ミラーは大変に便利である。
材料加工用のレーザービームは、高出力である。誘電体多層膜ミラーが、高出力ビームには適している。ビーム波長に対応した、適切なミラーを選ぶ。
主要な誘電体ミラーは、45°の入射角に対応するもので、光路を直角に曲げる。s-偏光とp-偏光の反射特性は異なる。入射角が45°であり、ミラーが良く設計された45°ミラーであるならば、s-偏光とp-偏光の反射特性は殆ど同じになるように設計されている。入射角度の許容値は、数度である。入射角の誤差が許容値を超えてしまうと、s-偏光とp-偏光のミラーの反射特性の差は無視できなくなる。若し、ビームの偏光特性を保持したいのであれば、ミラーへの入射角に注意を払え。
ミラーの反射率は、決して100%に達することはない。透過ビームに注意せよ。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
光学素子表面で反射されたビームは、光路の設定やアライメントに便利に利用される。日本人には、生真面目な人が多い。多くの日本人技術者は、反射ビームが入射ビームに完全に重なるまでアライメントを行なってしまう。その結果、反射ビームがレーザー光源の出力窓に戻ってしまう場合が生じ、その場合はレーザーの発振に影響が生じることがある。反射ビームが、レーザー光源の出力窓に戻ってきていないか確認する。
レンズは二つの焦点を持つ。一つは前側焦点であり、他方は後側焦点である。レンズを通過したビームは、後側焦点で高強度の集光スポットを形成する。レンズ表面で反射されたビームは、前側焦点で弱い強度の集光スポットを形成する。ビームが材料加工用であり、前側焦点の近傍に光学素子が置かれている場合、反射光ビームの集光スポットによって損傷が生じる可能性がある。焦点の近傍に光学素子を置いてはならない。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
一般に、光路設定やアライメントは、安全な環境で行われる。特に、レーザー光源からの出力は、必要最小限の値に制限される。
低出力ビームを用いて得られた最適アライメントと、高出力ビームに対する最適アライメントは異なる。従って、低出力ビームを用いて得られた最適アライメントを、実際の加工と同じ運転状態にあるレーザー光源からの出力ビームを用いて、微調整する。
この最終微調整は重要である。もし、加工用のレーザー光源の運転条件を変えたならば、その都度、この微調整が必要である。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
微細加工において重要なパラメータの一つは、位置精度である。一般に、精度が保証された機械モジュールを用いることで、十数ミクロンの位置精度が得られる。数ミクロンの位置精度は、高い精度の機械モジュールを、温度制御された環境下で用いることで得られる。
レーザー微細加工では、高い位置精度を得るために、良好なポインチング・スタビリティのレーザー光源を用いる。
一般に、環境温度とは、機器が設置された部屋の温度を意味する。環境温度を、レーザー光源の筐体の温度であると解釈すると、レーザー光源の安定化の観点で、良い結果が得られる。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
加工機温度が変化すると、加工点はドリフトする。加工点のドリフトを防ぐためには、加工機温度の制御が必要である。暖機運転に期待されているのは、これにより加工機温度が準平衡状態に達することである。実際の加工と同じ条件での暖機運転が、最も効果的である。
暖機運転の間、加工点出力はモニターされる。加工点出力が安定に達したならば、暖機運転を終えてよい。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
もっとも重要なパラメータは、集光スポットにおける照射エネルギー密度である。我々はそれをパルスフルエンスと呼ぶ。パルスフルエンスは、集光スポット直径とパルスエネルギーの二つの計測値から算出される。
集光スポット直径は、重要なパラメータの一つである。加工機の光学系に変更を加えたり、光路のアライメントに手を加えたならば、集光スポット直径を再評価するのが良い。
集光スポット直径の計測のもっとも適切な方法は、ビームプロファイラを用いる。
若し、ビームプロファイラがないのであれば、次善の策を用いる。次善の策は、集光スポット直径を、集光レンズ位置でのビーム直径と集光レンズの焦点距離から計算される。集光レンズ位置におけるビーム直径の評価については、「塾-48」を参照せよ。またビーム直径と焦点距離を用いた集光スポット直径の算出については、「塾-89」を参照せよ。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
最も重要なパラメータは、集光スポットにおけるパルスフルエンスである。パルスフルエンスの値を知らずに加工を実施することは、闇夜に鉄砲を撃つようなものである。
ビームを安定に保つために、レーザー光源は定格で運転するのが良い。加工点でのパルスエネルギーは、レーザー光源の外側でビーム減衰器を用いて調節する。
パルスフルエンスは、集光スポット直径とパルスエネルギーから算出される。「塾-94」を参照せよ。若し、加工機の光路を変えたり、アライメントを変えたりしたならば、集光スポット直径を再評価するのが良い。加えて、焦点におけるパルスフルエンスも再評価することを、強く推奨する。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
実際の加工において、観察カメラは必須アイテムである。
ホルダからワークを外すことなく加工結果を観察できることは重要である。しばしば、加工後に、不具合の修正のために再加工が必要になる。そのような場合、いったんワークを外してしまうと、ワークを元通りの場所に戻すのは難しい。
観察カメラは、加工の前にワーク上の位置を確認するのにも便利である。焦点高さ合せも、位置確認に含まれる。加工装置が、機械ステージとガルバノスキャナから構成されている場合、観察カメラはスケールの校正に役に立つ。
観察のサイズに合わせて、適した観察カメラのレンズの倍率を選択することは大切である。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
加工位置と加工寸法に関する精度は、機械ステージの定期的な校正によって確保される。
マスタスケールは、半導体マスクの技術を用い、ガラス基板上のグリッド線として準備される。観察カメラは、機械ステージのスケールを用いて、グリッド線の位置を読み取るのに便利である。自動機械ステージの制御ソフトに、補正テーブルを与えると、機械ステージのスケールは自動的に補正される。
機械ステージの原点と、焦点の間のオフセット値を、毎朝計測する。これで、目的とする場所に必要とする精度で、レーザー微細加工を実施できる。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
歪補正をしていないガルバノスキャナは、形状を正しく描くことができない。歪補正は、補正テーブルをガルバノスキャナの制御ソフトに与えることで行われる。ガルバノスキャナを用いてグリッドパターンを描き、交点を計測する。描画のためにガルバノスキャナに与えたデータと、実際に描画したパタンの実測データとの差が、補正テーブルに書込まれる数値になる。
しばしば、大きな面積の加工が要求される。「ステップ&リピート」は、広い面積の加工に適した手法の一つである。ガルバノスキャナのスケールと機械ステージのスケールが一致していないと、 「ステップ&リピート」は上手くいかない。加工領域の境界と、隣接領域の境界が、一致しない。この問題を避けるには、機械ステージのスケールを用いて、歪補正の計測を行う。これが、両方のスケールを一致させる、最も容易な方法である。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
あなたの加工機がレーザー微細加工機であるならば、ガルバノスキャナのスケール精度を維持することは重要である。
光学配置を変えたり、アライメントを修正した場合、ガルバノスキャナへのビームの入力の状態も変化する。ガルバノスキャナへの入力ビームの状態は、変化する前の状態に、二度と戻すことはできない。従って、ガルバノスキャナのスケールの校正が必要になる。
ガルバノスキャナのスケールを校正する、楽な方法は存在しない。機械ステージのスケールを用いた、ガルバノスキャナの歪補正が、最良の方法である。この校正において手抜きをすると、あなたの加工機の精度は低下するだろう。
Copyright© 2018 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
一般に、全ての機械加工において、加工中だけでなく、加工前も加工後も、材料表面は清浄に保つべきである。
加工の再現性を高めるには、加工前の材料表面は清浄であるべきである。最も少ない労力で、全てのワークの表面の状態をほぼ同じする手段は、材料表面を適切に洗うことである。
加工中も、材料表面は清浄に保たれるべきである。良く考えて欲しい。レーザー加工は非接触加工である。加工の様子は、ワーク表面に堆積するデブリスの量によって変わる。ワーク上のデブリスの堆積状態をいつも同じに維持することは難しい。加工中もワーク表面を清浄に保つ方が容易である。
他の主な機械加工は、接触加工である。材料表面にデブリスが堆積していても、それを押し退けて、工具刃を材料表面に接触させることができる。レーザー加工では、材料表面にデブリスが堆積しているとビームを直接に材料表面に照射できない。加工中もワーク表面を清浄に保つことは、レーザー微細加工において特に重要である。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
レーザーマクロ加工に対して、エアジェットの吹き付けは効果的である。
レーザーマクロ加工は、寸法が mm 或は sub-mm の加工である。切断や穴あけ、溝堀りなどのレーザーマクロ加工は、熱現象に基いている。レーザー熱加工において、加工点から融液を取り除くことは重要である。融液の除去効率は、加工効率に強く影響する。
融液の蒸発は、遅い過程であり、気化熱を必要とする。一方で、エアジェットは、融液を簡単に素早く取り除くことができる。従って、エアジェットの吹き付けは、レーザー熱加工において一般的に用いられている。
レーザー集光ビームとエアジェットの同軸配置が、最も一般的な配置である。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
レーザー加工に熱過程を用いる場合、加工点から融液の液滴を除去することは重要である。アブレーション過程を用いる場合、加工点には融液の液滴は存在しない。そこにあるのは、デブリスである大量の微粉末である。加工点からデブリスを取り除くこともまた重要である。
多くの場合、レーザー微細加工を用いてワークピースの表面に微細構造が作られる。ワークピース表面に吹き付けられるエアジェットは、乱流を作る。乱流は、ワークピース表面の微細構造にあるデブリスを取り除くことができない。アブレーション過程を用いたレーザー微細加工においては、加工点からデブリスを取り除くために層流を用いる。
レーザー微細加工おいて、エアジェットの吹き付けは、決して用いてはならない。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
一般に、光学ミラーは、汚れた環境を嫌う。空気中の塵は、ミラーの表面に付着する。また、塵の付着したミラーの反射率は低下する。さらに、表面の汚れたミラーは、しばしば、レーザー損傷が生じる。
多くのレーザー微細加工は、除去加工である。加工チャンバ内には、ワークピース表面から除去された材料の、大量の粉末状のデブリスがある。もし加工機内で、加工する場所と、ビームを引き回す場所の間に、物理的な仕切りが無いならば、そのような状況は、光学素子に適していない。
もし、加工機が大量生産用のものでありならば、加工機は長時間にわたって安定に稼働しなければならない。安定な稼働のためには、全ての光学素子を、清浄な空間に設置することが大切である。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
科学や技術に関する議論において、観察は重要である。レーザー微細加工において、加工中の観察も加工後の観察も、どちらも重要である。加工後の観察は、問題が発生した場合に、それを知らせてくれる。加工中の観察は、発生した問題を解決するための有用な情報をもたらしてくれる。
しかしながら、安全のために、目視によるレーザー加工中の直接観察は、避けねばならない。これを理由に多くの人々は、加工中の観察を諦めてしまっている。
目視による直接観察の代わりに、我々はカメラを用いることができる。レーザーの散乱光が、カメラに入射しないように工夫を凝らせ。ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタなどを利用できる。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
万能のレーザー発振器やレーザー加工機は存在しない。目的とする加工の種類ごとに、適切なレーザー発振器を選ばねばならない。しかしながら、現状では、レーザー発振器の選定は的確に行われているとは云い難い。
これから何回かに渡って、レーザー発振器の仕様書の読み方を議論したい。何がレーザー発振器の仕様として公開されており、それらが何を意味するのかが分かることを目的とする。これらの理解によって、目的とする加工に必要なレーザー発振器の特性を事前に検討できるようになるだろう。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
DPSS短パルスレーザーの主要な仕様項目のリストを示す。
メジャーなレーザーメーカーから出荷されるDPSS短パルスレーザーは、仕様を良く満足している。一方で、マイナーなレーザーメーカーが公表している仕様書の値は、しばしば、目標値になってしまっている。マイナーなメーカーから出荷されるDPSSレーザーが、彼等自身の公表している仕様を満足していないことを、割と頻繁に目撃する。全般的には、我々はDPSS短パルスレーザーの「基本波長モデル」については、良く記載された仕様書を沢山入手できる。
レーザー微細加工においては、DPSS短パルスレーザーの「高調波モデル」が主に利用される。
幾つかのレーザーメーカーでは、「高調波モデル」の仕様書が適切に準備されていない場合がある。或は、マイナーなメーカーが公表している「高調波モデル」の仕様書の幾つかの項目に、「基本波モデル」の仕様書と同じ数値が記載されている場合もある。「基本波モデル」の仕様から、「高調波モデル」の性能を評価できないことは、予めよく理解しておいた方が良い。
仕様書は、使おうと思っているモデルのものを手に入れるように努力する。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
レーザーの特徴の一つに、単色性がある。実際、縦単一モードレーザーの出力は、単色である。しかしながら、レーザー加工用のDPSSパルスレーザーの出力は、単色ではない。従って、出力光は、波長に幅を持つ。これで、何故“中心”の文字が入っているかの理由が理解できたであろう。
しばしば、出力ビームのスペクトル線幅は、”Hz”の単位で記載されている。図を見て欲しい。中心波長と中心周波数を、λ0とν0とする。また、波長の半幅と周波数の半幅を、△λと△νとする。波長と周波数、光速度の関係から、△λと△νの関係が得られる。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
熱的なレーザー加工では、照射する光の波長を材料の光吸収特性に一致させることが重要である。
レーザー微細加工における主要波長は、1064 nmと532 nm、355 nm、266 nmである。Nd3+レーザーの基本波長は、1064 nmである。この波長は近赤外領域である。材料が近赤外光を吸収すると、分子振動が励起され、材料温度が上昇する。532 nmの緑色光は、可視光領域にある。355 nmと266 nmの二つの波長は、紫外領域にある。可視あるいは紫外領域の光を材料が吸収すると、軌道電子が励起される。励起された電子が非放射緩和するならば、材料温度が上昇する。
材料と照射された光の間に相互作用が無いならば、何の変化も生じない。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
非熱的なレーザー加工では、重要な観点は、熱現象の発生を避けることである。
光吸収による電子励起を考えよう。励起された電子が電子軌道のどれかに居るならば、その励起電子は例外なしに緩和する。このことは、どのような励起によるか、例えば一光子吸収によるのか多光子吸収によるのかには依存しない。緩和が非放射緩和であるならば、加工点に熱エネルギーが現れる。非熱的なレーザー加工では、光吸収の結果としてより高いエネルギーの電子軌道への励起は避けた方が良い。
光吸収による他の励起はあるのか? 次に、光イオン化について考えよう。光イオン化は、光吸収による電子励起の一つである。一般に、光イオン化は高エネルギー光子を必要とする。光イオン化の場合、電子は真空準位にまで励起される。このことは、励起された電子は二度と元の電子軌道に戻らないことを意味する。光のエネルギーは光イオン化に消費されるので、加工点に熱エネルギーが現れることはない。光イオン化は、原子・分子などに用いられる。固体に対しては、欠陥生成の語が用いられる。
低次の多光子吸収の発生確率は高い。高次の多光子吸収の発生確率は低い。非熱的なレーザー加工では、一光子吸収で欠陥が形成できる波長が最良である。次善は、二光子吸収で欠陥形成できる波長である。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
内部加工を実施したい場合がある。内部加工とは、その表面に損傷を生じさせずに、透明な材料の内部に加工することである。
重要な「語」は、「透明」である。通常の強さの光において、材料と光との間で相互作用が生じない。若し、光と材料の間で相互作用があるならば、光は材料内部の所望の場所に届かないだろう。
内部加工に利用できる加工のメカニズムは何であろうか。一つは、非常に強い光電場によって生じる絶縁破壊である。もう一つは、多光子吸収である。どちらのメカニズムにおいても、材料中での強い集光が必要である。強い集光とは、高NAの集光を意味する。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
レーザー加工においては、2種類の「出力(パワー)」がある。一つは平均出力(アベレージ・パワー)であり、もう一つは尖頭出力(ピーク・パワー)である。
「パワー」の定義は、「単位時間当たりの、入力、出力または消費のエネルギー量」である。ピーク・パワーは、パルスエネルギーとパルス幅から算出される。平均出力は、観測された総エネルギーと観測時間から算出される。
加工においては、「平均出力」は「単位時間当たりにすることができる仕事の量」を意味する。言い換えるならば、仕様書上の「平均出力」は、このレーザーを用いて実現できる最大の仕事率を示している。
レーザー加工のビジネスにおいては、目標のスループットを明確にし、その実現に十分な平均出力のレーザーを選択することが重要である。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
パルスエネルギーとは、一つ一つのパルスが持つエネルギーである。パルスエネルギーは、微細加工において重要なパラメータの一つである。
レーザーの繰返し周波数が低い場合、個々のパルスのエネルギーは、エネルギーメーターを用いて計測ができる。エネルギーメーターの別名は、カロリーメーターである。
レーザーの繰返し周波数が高い場合、パルストレインの個々のパルスのエネルギーを計測することは困難である。そのような場合は、個々のパルスのエネルギーの代わりに、パルスエネルギーの平均値を用いる。パルスエネルギーの平均値は、平均出力の測定値と繰返し周波数から算出される。
加工に適したパルスフルエンスの値と、集光スポットのサイズが分かっていれば、加工に必要なパルスエネルギーの値を得ることができる。
スペックシートに書かれたパルスエネルギーの値を確認することは大切である。加工に十分なパルスフルエンスを実現できるパルスエネルギーのレーザーを選択しなければならない。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
繰返し周波数は、一秒間に出射されるレーザーパルスの数である。繰返し周波数は、レプ・レートとも呼ばれる。
レーザー熱加工では、レーザーパルスの1ショット毎に照射された表面は溶融する。レーザー微細加工では小さな集光スポットを用いるので、熱拡散が強く生じる。繰返し周波数が大変小さい時、溶融した表面が室温まで冷却されるに十分なほどに、レーザーパルス照射の時間間隔は長い。もし高い繰返し周波数を用いるならば、レーザーパルスの照射が続く間、照射表面は溶融状態を保持する。
耐熱性の無い材料であるか、材料の熱伝導率が低いならば、高い繰返し周波数の加工条件を用いるのは避けた方が良い。低い繰返し周波数の加工条件を用いることで、高目の照射パルスエネルギー密度(パルスフルエンス)を用いることができる。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
パルス幅は、レーザーパルスパワーの時間変化のFWHM(半値幅)で定義される。一般に、DPSSレーザーのパルス幅は固定である。ファイバーレーザーと呼ばれる新しいタイプのレーザーは、パルス幅を調整できる。
ナノ秒領域を含む長いパルス幅のレーザーパルスを用いた加工は、熱加工である。レーザーパルス照射により生成される融液の様子は、照射されるレーザーパルスのパルス幅に依存する。パルス幅が、表面張力による融液の流動が生じる程に十分長い場合は、深い溶融池が形成される。パルス幅が短い場合は、照射領域が直ぐに沸騰に達するために形成される溶融池は浅い。パルス幅の長いレーザーパルスは、深い穴の形成に適している。パルス幅の短いレーザーパルスは、薄膜の除去に適している。
ピコ秒やフェムト秒などの超短レーザーパルスは、アブレーション加工に適している。高いピークパワーのパルスは、高い時間密度の光子からなっている。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
微細加工用DPSSレーザーのビーム断面内のエネルギー分布は、主に、ガウシアンである。
ガウシアンビーム出力が一般的でなかった頃は、ビーム断面内のエネルギー分布はTEMで表現されていた。ビーム断面内のエネルギー分布は、空間モードとも横モードとも呼ばれる。ガウシアンビームは、TEM00モードの一つである。しかしながら、TEM00モードの全てがガウシアンビームであるのではない。
ガウシアンビームのビーム拡がり角は、TEM00ビームの中で最小の値である。ガウシアンビームの集光スポット直径もまた、TEM00ビームの中で最小である。ガウシアンライクなビームのビーム拡がり角は、ガウシアンビームのそれよりも大きい。ガウシアンライクなビームの集光スポット直径もまた、ガウシアンビームのそれよりも大きい。
M2は、モード因子と呼ばれる。ガウシアンライクなビームのモード因子M2がkである時、ガウシアンライクなビームの集光スポット直径およびビーム拡がり角は、ガウシアンビームのそれらのk倍である。
レーザー微細加工の分野では、モード因子M2は、集光スポット直径の推定において重要である。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
コリメートされたビームを作るのに、ビームウエスト直径とビーム拡がり角の値が必要である。
あるメーカーの仕様書ではビーム拡がり角は半角で記載されており、また別のメーカーの仕様書ではビーム拡がり角が全角で記載されている。仕様書に記載のビーム拡がり角がどちらであるかを、最初に確認することが必要である。
図は,凸レンズ集光によって得られる集光スポットを示している。この図から凸レンズを取り去ると、この図はウエスト直径がdのビームについての拡がり角を示している。
集光スポット直径に関する表式を変形して、ビームウエスト直径とビーム拡がり角の積は一定であるという結果が得られる。ビームウエスト直径をk倍に拡大するならば、拡大されたビームの拡がり角は1/kになる。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
多くの場合、仕様書にあるビーム直径の値は,ビームウエスト直径ではない。出力窓あるいは出力窓近傍での値である。従って、仕様書にあるビーム直径とビーム拡がり角の積は、定数にならない。出力ビームをコリメートする場合や拡大する場合、ビーム直径やビーム拡がり角の値は自分自身で計測するのが良い。
ビーム直径の計測に関しては、新塾-48 を参照せよ。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
ビームの断面形状を、楕円と仮定する。
長軸がWx 、短軸がWyである時、ビーム真円度はWy / Wxと定義される。
ビーム断面が真円であるならばWy / Wx = 1である。
多くの場合、レーザー微細加工では、照射スポットの形状として真円が必要とされる。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
ビーム積とは,ビームウエストとビーム拡がり角の積である。一般に,垂直方向のビーム積と水平方向のビーム積は等しくない。垂直方向のビーム積と水平方向のビーム積の差が大きい時,円形状の集光スポットは,極く狭い領域でしか得られない。若し,垂直方向のビーム積と水平方向のビーム積に差が無いならば,レーザービームの断面はどこでも円形である。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
レーザー微細加工では,多くの場合,円偏光ビームが用いられる。良好な円偏光ビームを得るには,高い偏光比の直線偏光ビームが必要である。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
平均出力の安定性は,平均出力の連続した計測値の二乗平均平方根で与えられる。
各々の平均出力の計測値は,既に平均されていることに注意せよ。短い時間領域での出力変動は,この手法では評価できない。この値は,長い時間領域での出力変動の程度を表す。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
連続出力されるレーザーパルスの一つ一つのエネルギーを計測することが重要である。レーザーパルスのエネルギーを計測する多くの手法がある。まず最初に,計測対象に対して,計測器の時定数が適切であるかをチェックする。
低繰返し周波数のパルス出力は,エネルギーメーター(カロリーメーター)で計測できる。中程度の繰返し周波数のパルス出力は,フォトダイオードを用いて計測できる。高繰返し周波数のパルス出力に対して,連続したレーザーパルスの一つ一つのエネルギーを計測できる適切な手法はあるか?
高繰返し周波数のレーザーの仕様書にパルスエネルギー安定性の数字を見つけたならば,その手法と妥当性を確認するのが良い。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
ビームの指向は,レーザー発振器からのビームの出射方向を意味する。ビーム指向安定性は,ビーム出射方向の最大変化量を,ビームの出射角度を用いて表す。従って,元々の定義では,温度変化を含んでいなかった。
最近,多くのレーザー発振器メーカーが,ビーム指向安定性の評価式に,温度変化を加えるようになった。レーザー発振器メーカーに,何の温度変化であるのか訊いてみて欲しい。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
コリメートビームが集光レンズに入射する。
ビームの伝搬軸がレンズの軸に平行であるならば,ビームのレンズへの入射位置に関わらず,ビームはレンズ焦点に収束する。一方,ビームがレンズ中心に入射する場合であっても,レンズの軸とビームの伝搬軸が平行でないならば,レンズ焦点とビームの収束点は異なる。レンズ焦点距離がF,レンズの軸とビームの伝搬軸の成す角度がθである時,焦点面上のレンズ焦点とビームの収束点の距離はF×θである。
焦点距離が100 mmの集光レンズを備えたレーザー加工機を考える。1ミクロン以内の焦点面上の位置精度を実現するためには,ポインチング安定性が10 μrad以内のレーザー光源を選択せねばならない。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
高調波出力モデルの諸仕様は,基本波出力モデルの諸仕様から推定することはできない。高調波出力モデルの諸性能は,基本波出力モデルの諸性能と大きく異なっている。高調波出力モデルの詳細を知るには,レーザー・メーカーに高調波出力モデルの仕様書を請求せよ。
Copyright© 2019 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.
レーザー発振は,常に発熱を伴う。レーザーのスイッチを入れてから,レーザー筐体の内部の温度環境が準平衡に達するまで,出力ビームは連続的に変化し続ける。レーザー光源の調整や,微細加工の実施に先立って,レーザー光源の暖機運転を完了しておくことは重要である。
Copyright© 2020 Practical Technology Lab., Inc. All rights reserved.